「オリンピックに向けて、日本酒の良さを広めたい」と店主は語る。

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最近、居酒屋日本酒飲み放題というコースが増えている。確かにそんなに量が飲めるものではないが高い日本酒を飲み放題にして、店的には採算が取れているのか非常に疑問に思った。私が知る限り、日本酒飲み放題ブームの先駆けは新宿の「さけくらべ」だったな、と思いだしたので店主にそのあたりを聞いてみた。

―――いきなりですが、日本酒を飲み放題にして、採算って取れてるんですか?
「採算は取れないねー! せいぜいトントンになる程度。ふつうはツマミで採算を取るようにしていると思うけど、うちは他の店と違ってツマミの持ち込みをOKにしているから全く取れない。家賃・光熱費・人件費なしにして自分が働くようにしても足が出るほどだね」

―――え? ツマミ持ち込みOKなんですか! いったいどういう理由で店をはじめたのですか?
「うちの店をはじめたのは、私も呑兵衛だったから。呑兵衛はツマミなんてどうでもいい。お酒に集中したいんですよ。うちの基本は利き酒会を356日やっているようなものです。年に一回1日しかない利き酒会というイベントを毎日やりたかったんです」

―――なるほど。日本酒が大好きなんですね。
「だいたいにして日本酒自体があまりにもビジネス的になりすぎていて、そうじゃない本当の日本酒を紹介したいというのが店のコンセプト。名前の知られていない酒にも旨いものがあることを知らせたい」

―――他のお店も採算が取れてないでしょうか?
「料理を込みでコースにしている店なら採算は取れているはず。飲み放題といっても大したことない日本酒しか並んでない。みんながよく知っている幻の酒とかあるでしょ。でもその割にはどこでも飲めたりするでしょ?業界でアイドル的な酒を作り上げているだけ。アイドルでいえばジャニーズやAKB的なものが人気になるのはわかるけど、歌が上手いとかそういうわけじゃないのと同じ。日本酒業界がビジネスに走りすぎているね」

―――たしかに幻の酒のくせにあちこちにありますね。ところでこんな経営状態で店は大丈夫なんですか?
「ああ、うちはもともと別の魚系居酒屋を経営しているからやっていける。刺身とか寿司を食べて飲むのは、みんなビールやチューハイか、ハイボール。日本酒が合うのに日本酒をみんななかなか飲んでくれないって、ずっと20年間悩んでいた。うちは本当に日本酒が好きな人しか来られない店。もっと日本酒にスポットライトを当てたいんだよ。もっと本質的なものに目を向けてもらいたい。お店がリスクを持たないといい酒は提供できないんだよ」

―――どういう日本酒がおすすめなのでしょう?
「家族2〜3人でやっている酒蔵の酒だね。他の店では置きたがらないし、なかなか手に入らない。真面目にやって金もうけでないやつだね。酒蔵で寝る間を削って作る匠の芸術ともいえる味を味わってもらいたい。うちで10種類のブラインドテイスティングをやっている。その中には有名銘柄から無名までそろえてある。名前でなく舌だけで日本酒を味わってもらいたい」

日本酒愛にあふれた店主の林さんの話はアツかった! 
ぜひ訪れて飲めばわかるという本当の日本酒をぜひ味わってみたいですね!
(カシハラ@姐御)