パ・リーグを制した楽天は、盗塁数もリーグ最少なら『犠打』も最少の109犠打。
対してリーグ最多の142犠打をマークした日ハムは最下位である。
この傾向はセ・リーグも似通っていて、優勝した巨人の犠打数はリーグ5位、犠打数2位と3位のヤクルトとDeNAが6位、5位に甘んじている。

しかし日ハムはリーグ制覇した昨年もリーグ最多の犠打数をマークしており、「犠打を多用すればチームが低迷する」というわけではない。
犠打はチームの総得点を下げるデメリットを持つ反面、得点の平準化という効用を発揮する。
要するにチームの平均得点を4点から3点に下げてしまうかもしれないが、より確実に3点近く獲れるため、3点以内で抑える投手陣を持っていれば、好投した投手を拙攻で見殺しにする確率が下がり、勝率アップに貢献するということである。

日ハムの低迷は、昨年リーグ2位だった防御率(2.89)がリーグ5位(3.72)に下がっていながら、昨年と同じ戦法を採ってしまったことにある。
それでも我慢していればAクラスに残れたかもしれないが、失点の多さを打撃でカバーしようと、守備軽視のオーダーを組んだため、昨年リーグ最少(72)だった失策数までがリーグ最多(85)になり低迷に拍車をかけてしまった。

今年の楽天はリーグ2位の防御率ながら、田中(1.27)だけが突出している状況で、もしも送りバントを多用していたら、これほど楽な形で優勝することはできなかっただろう。
乱用すると得点力を下げてしまう送りバントだが、場面を限定して使用すると効果的に得点をあげることができる。

◇1点勝負の終盤
接戦の終盤は送りバントの巧拙で勝負が決まることも多く、非常に効果的な作戦である。

◇無死一二塁の場面
同時にふたりの走者を進塁させることができるうえ、併殺のリスクを下げ、犠飛や内野ゴロはおろか暴投やボークでも得点できる状況を作ることができる。まさに値千金の送りバントである。

◇2点以内で抑えそうな投手が先発
田中のような投手に5点は要らない。
運の要素をできるだけ排し、確実に2点以上獲るためには初回からでも送りバントをやるべき。

◇打力が期待できない
投手や打力を度外視して起用されている選手、あるいは不振の打者などはアウトひとつを犠牲にしても採算が合う。
ただし一死一塁で低打率の捕手に送りバントをさせても、次が投手の打順であるような場合はその限りではない。

最近はFOXスポーツのBASEBALL CENTERなどで、詳しく戦術の解説をするようになっているので、投げてみなけりゃ判らない投手を先発させておきながら、初回から送りバントをするような野球音痴の監督は淘汰されていくだろう。