■ 第18節

J1の第18節。4勝4敗2分けで12位の鹿島アントラーズが、ホームで川崎フロンターレと対戦。川崎Fは7勝3敗2分けで3位。最近の7試合では「5勝2分け」と調子を挙げてきている。

ホームの鹿島は「4-2-2-2」。GK曽ヶ端。DF西、岩政、中田浩、新井場。MF伊野波、増田、野沢、遠藤。FW興梠、田代。日本代表のMF伊野波がボランチでスタメン。MF小笠原はベンチスタート。U-22日本代表から戻ってきたFW大迫がベンチ入り。

対するアウェーの川崎Fは「4-2-2-2」。GK相澤。DF田中裕、横山、菊地、小宮山。MF稲本、柴崎、中村憲、山瀬功。FWジュニーニョ、矢島。17節でレッドカードを受けたDF井川が出場停止。6ゴールを挙げているFW小林はベンチスタートとなった。

■ ロスタイムに同点劇

前半は鹿島ペースで進む。鹿島も2連勝中で、ようやく調子が上がってきているが、この日も、立ち上がりからアグレッシブに戦って、川崎Fゴールに迫っていく。鹿島ペースで進む中で、前半22分に川崎FのDF横山が負傷するアクシデントが発生。DF薗田が起用されるが、この交代が試合の行方を大きく左右する。

何度かチャンスを作りながらも決めきれていなかった鹿島だったが、前半31分に待望の先制ゴールを奪う。ロングボールをFW田代とDF薗田が競り合うが、FW田代がうまいボールコントロールでトラップして、DF薗田を外してシュートチャンスを作り、落ち着いて右足で決めて先制に成功する。FW田代は3試合連続ゴールで、リーグ戦3ゴール目。

さらに、前半終了間際にも鹿島は右サイドでセットプレーを獲得すると、相手のクリアボールをDF中田浩がダイレクトボレーで決めて貴重な2点目を奪う。DF中田浩は今シーズン初ゴール。前半は鹿島が2対0でリードし取り返す。

後半も鹿島ペースで進む。前半14分には、鹿島が高い位置でボールを奪って、絶好のチャンスを作ると、たまらず、ゴール前に抜け出そうとした選手をDF薗田が倒してしまって2枚目のイエローカードでDF薗田が退場。川崎Fは10人になってしまう。

絶体絶命のピンチになった川崎Fだったが、ここから猛反撃を開始する。まず、後半25分にMF稲本がドリブルで運んでから、右サイドにスルーパスを出すと、これを巧みなコントロールから前を向いたDF田中裕が決めて1点差に迫る。DF田中裕はリーグ戦で2ゴール目。さらに、終了間際にも、途中出場のMF小笠原からボールを奪ってカウンターを開始。MF稲本のヘディングシュートはクロスバー直撃となるが、混戦からFW矢島が押し込んで同点ゴール!!!と思われたが、オフサイドでノーゴールとなる。

惜しいチャンスを逃して、もはやこれまでかと思われたラストプレーで、川崎Fは左コーナーキックを獲得。MF中村憲のボールをゴール前でフリーのFW小林がヘディングシュートを放つと、最初のシュートは防がれるが、こぼれ球を自ら押し込んでゴール。土壇場で2対2の同点に追いつく。FW小林は2試合連続ゴール。結局、試合は2対2で終了。川崎Fにとっては、勝ちにも等しいドローとなった。

■ 切り札のFW小林悠

調子の上がってきたチーム同士の対戦は、期待以上の熱戦となったが、2対0で鹿島がリードを奪って、さらに、川崎Fに退場者が出た時点で、「これで、鹿島の勝利は間違いない。」と思ったが、川崎Fが驚異的な粘りを見せて、2対2のドローに持ち込んだ。これで、川崎Fは8試合負けなしで、過酷な5連戦も、3勝2分けで乗り切った。

殊勲はロスタイムに同点ゴールを決めたFW小林悠で、今シーズンは、早くも7ゴール目。7ゴールのうちの、実に5ゴールが途中出場でのゴールで、途中出場に限定すると4戦連発。わずかな出場時間であるが、決定的な仕事を連発しており、まさに、ラッキーボーイとなっている。最後のシーンも、なぜか、ゴール前でフリーになっていて、神がかっているとしか表現できないほど、凄まじいペースでゴールを重ねている。

絶好調のFW小林をベンチに温存しておくことができるのも、川崎Fの強みで、FWジュニーニョはまだ本調子ではないが、MF山瀬功もコンスタントにゴールを決めていて、FW矢島も人が変わったかのようなプレーを続けている。攻撃陣は、開幕当初は噛み合っていなかったが、リーグ戦は、13試合で26ゴールと川崎Fらしさを取り戻している。

■ ハイレベルなプレーを見せるMF稲本潤一

追撃のゴールを決めたDF田中裕や、同点ゴールを決めたFW小林の活躍も見事だったが、この試合を語る上で、MF稲本の働きを無視するわけにはいかない。Jリーグに復帰してから2シーズン目となったが、これだけ、90分間にわたって、ハイレベルのプレーを見せるMF稲本というのは記憶にないくらいで、攻守両面で、他のどの選手よりも、ワンランク上のプレーを続けた。

DF田中裕のゴールをアシストしたプレーは、彼らしい強引なドリブルがスタートになっていて、うまく相手を外した後、素晴らしいタイミングでスルーパスを送ってゴールをお膳立てしたが、DF田中裕に出した柔らかいスルーパスも質が高くて、パーフェクトなスルーパスだった。

昨シーズンは、「タイトル獲得の切り札」とされながらも、スタミナ面で不安を残し、90分間持たないことが多く、チームを劇的に変えることができなかったが、この日のプレーは圧巻で、健在ぶりを示した。

■ 散々だったDF薗田

一方で、ロンドン五輪代表候補のDF薗田にとっては、つらい一日となってしまった。前半の途中から出場したが、FW田代にマークを外されて先制ゴールを許し、後半14分に2枚目のイエローカードを受けて退場。難しいシチュエーションでの起用だったので、気の毒に感じるところもあるが、FW田代とのマッチアップは、ほとんどの場面で負けていて、散々な出来だった。

DF薗田は、昨年11月のアジア大会ではレギュラーとして金メダルに貢献しており、ロンドン五輪代表でもCBのレギュラー候補の一人であるが、今シーズンは、怪我もあって、ロンドン五輪代表からも外れている。

川崎Fには、DF菊地、DF井川、DF横山というCBのライバルがいるので、DF横山の負傷で巡ってきたチャンスを生かしたかったところであるが、全くアピールできなかった。その上、退場したDF薗田の穴埋めでCBで起用された新人のDF實藤のプレーが悪くなかったので、さらに、厳しい立場になってしまった。

■ 2点リードを守りきれず

対する鹿島は、2点リードを奪って、さらに数的優位な状況で、絶対に逃げ切らないといけない試合だったが、まさかの2失点でドローに持ち込まれてしまった。勝っていれば「3連勝」となって、勢いに乗れそうだったので、痛恨のドローとなった。

結果論になってしまうが、オリベイラ監督の選手交代もポイントになった。後半27分に、FW田代とMF遠藤を下げて、MF本山とMF小笠原を投入し、ベテランコンビで逃げ切りを図ったが、この交代が、うまくいっていたリズムを壊す要因になった印象で、怪我等の他の理由があったのであれば仕方がないが、キープ力もあって、相手からすると、やっかいな存在になっていたFW田代とMF遠藤を下げたことで、川崎Fの攻撃の機会が増えて、ゴールに迫るようになった。

■ 世代交代のむずかしさ

鹿島は、黄金世代と言われるDF中田浩、MF小笠原、MF本山、DF新井場、GK曽ヶ端の5人が30歳をオーバーし、プレーヤーとして下り坂に入ってきている。

昨シーズンまでは、ほとんどスタメンを外れることが無かったMF小笠原やDF新井場らが、ターンオーバーという名目で、ベンチスタートになることも出てきたが、今後、彼らをどのように扱っていけばいいのか、オリベイラ監督も悩むところである。

特に、MF小笠原は、ここ数年、大黒柱としてチームを支えてきたが、昨シーズンの終盤から精彩を欠く試合が増えている。脇役タイプの選手ではないので、中途半端な起用もできないが、かといって、MF小笠原を軸に据えたままで、シーズンを戦っていくのは、タイトルを狙うには、かなり厳しい。

同年代の選手では、清水エスパルスのFW高原が今シーズンは好調を維持しており、川崎FのMF稲本もいい状態になってきている。黄金世代も、まだ老け込むような年ではないので、MF小笠原にも、巻き返しを期待したいところであるが、現状は、あまりいい状態とはいえず、この日は、らしさが見られなかった。


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