奈良市の職員が不正に給与を受け取っていたことが明らかになったのは2006年のことだが、同じ奈良県内で、今度はごみ焼却施設に勤務していた男性職員が、年間に1600時間を超える異常な時間外手当を受け取っていたことが問題化している。市議会では調査を担当する「百条委員会」がつくられ、勤務時間中に職場を抜ける「中抜け」などのずさんな勤務実態が明らかにされている。ところが、本人は「(時間外労働は)当たり前の勤務」と主張している。

勤務時間中にパチンコに出かける「中抜け」

   問題が取りざたされているのは、奈良県中西部にある葛城市の清掃工場「新庄クリーンセンター」に勤務していた男性職員(38)=現在は他の職場に異動=。市民からの情報公開請求に対して市が公開したデータと、市が市議会に提出していたデータに矛盾があったことをきっかけに、この職員に対して06年度の1年間に約1600時間分もの時間外勤務手当が支払われていたことが発覚した。

   08年8月、この問題が市議会で取り上げられ、市は「男性職員は炉の清掃を担当していて、炉を燃やしていない土日の出勤が多かったり、もう1人いた担当者が辞めたりしたため、この職員に仕事が集中してしまった。労務管理が出来ていなかったことを反省しているが、不正受給ではない」などと答弁。なお、1月あたりの残業時間が80時間(年960時間)を超えると、過労死の「危険ライン」に達するとされているが、07年度についても、約1300時間分の時間外手当を支給していたことも明らかになっている。

   議員側は答弁に納得せず、08年9月には、地方自治法100条に定められた、調査権がある「百条委員会」と呼ばれる特別委員会を設置。これまでに13回の会合が開かれた。

   この会合で、ずさんな勤務実態が続々に明らかになっているのだ。

   例えば、09年4月30日の会合には、芳野隆一センター長が参考人として呼ばれ、問題の職員が、業務委託先の社員に実態と異なる時刻でタイムカードを打刻させる「代押し」や、勤務時間中にパチンコに出かける「中抜け」があったことを明らかにした。さらに、職員の友人の塗装業者が持ち込んだ、産業廃棄物にあたる塗料缶600缶を違法に焼却していたことも判明した。

「職場は昔から長時間勤務で、当たり前の勤務」?

   5月19日の会合でも、杉村宏・前センター長が、やはり「代押し」と「中抜け」を裏付ける証言をし、「管理責任を感じる」と述べた。

   ところが、問題の職員本人が登場した7月6日の会合は、予想外の展開となった。吉川義彦・前市長=問題発覚後の08年10月の市長選で落選=が「責任者として反省している」と述べる一方、職員本人の証言は、これまでの市側の証言とは食い違うものとなった。

   塗料缶の焼却については「断れなかった」と認める一方、超過勤務については

「職場は昔から長時間勤務で、当たり前の勤務」

と正当化。勤務については「つらくなかった」とも述べた。一方、「中抜け」してパチンコなどに出かけていたと指摘されていることについては、

「休憩時間をずらして行ったことがある」

などと述べた。

   百条委員会の委員長は、今後の調査の見通しなどについては「電話では取材は受けられない」と明らかにしなかったが、同委員会では、9月の市議会までに、これまでの資料や証言などをもとに、最終報告をまとめるものとみられる。

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