石川遼の世界ランクの急上昇ぶりがあまりにもすごいので、米PGAツアーのオフィシャルは石川の動向をどう見ているのかが気になり、探ってみた。現場で話した2人のメディアオフィシャルは、どちらも石川の名前を知らず、「えっ?誰?」。ちょっと説明してみたら、「ああ、ハイスクールボーイで日本で優勝したっていう子のこと?」。とりあえず、高校生プロで日本で優勝したという事実だけは知っていた。

そのハイスクールボーイの世界ランクが、すでに62位まで上昇し、今田竜二を抜いてしまったと話すと、「ありえない。そんなはずがない。リュウジは米ツアー1勝だし、トップ30に入ってツアー選手権にも出た選手だぞ。そのリュウジを日本で1勝しただけの新人が上回るなんて、おかしいだろう?」。まるで信じないので、その場で世界ランクの表を出して見せると、「どうしてだ?(今田の)米ツアー1勝の評価があまりにも低いってことになってしまうじゃないか……」と大慌て。彼らは、すぐさま方々へ電話をかけ始め、世界ランクのシステムを詳細に調べ始めた。

その結果、彼らの説明の中で興味深かったのは2つ。1つはディバイダーの話だ。世界ランクを決する平均ポイントというものは、それぞれの選手が稼いだトータルポイントをディバイダーと呼ばれる試合数で割って算出するのだが、そのディバイダーは「ミニマム40」と規定されている。まだ出場試合数が合計で40に満たない石川の場合、ディバイダーは40。他の選手はというと、たとえば今田は59。そして、分母が小さいほうが答えは大きくなるわけだ。もちろん、出場した試合数が少ないということは、ポイントを稼ぐ機会も少なかったことになり、その中で効率的にポイントを稼いできたのは石川の実力だ。しかし、仮に稼いだトータルポイントが同点だったら、やっぱりディバイダーが小さいほうが有利なのは確かだ。

石川の昨シーズン終了時点の世界ランクは434位だった。これが、この1年で62位までジャンプアップした。ちなみに、現在の世界ランク70位ぐらいまでで大きなジャンプアップを果たした他の選手を探してみると、アイルランドのローリー・マックロイが232位から50位へ、台湾のリン・ウエン・タンが171位から51位へ、アメリカのダッドリー・ハートが448位から53位へ急上昇。そして、石川を含めたこれら急上昇選手の全員が「ディバイダー40」だ。

興味深かったもう1つは「3年目」の話。米PGAツアーのオフィシャルいわく、「世界ランクには3年目がシビアになる仕掛けがあって、少し成績が下がったりしたら3年目の選手の世界ランクは、びっくりするほど急降下する。だから、リョウ・イシカワの正念場は世界ランクのポイントを稼ぎ始めてから3年目に当たるときだ」

つまり、来季後半から2010年にかけて、石川は世界ランクの上での正念場を迎えることになる。となれば、世界ランク50位以内の資格でマスターズ出場を狙うには、今のところは09年の出場が一番近道と思われる。キーになるのは、これからマスターズ前週までのスケジュールの組み方。果たして、石川選手のスケジュールは、いかに?(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)