誰もが横一線のオシム日本<br>【photo by Kiminori SAWADA】

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ベトナムを破り、見事グループリーグを突破した日本。試合後、中村俊輔は現在の日本代表と3年前の中国大会での代表とを比較して、次のように語った。

「環境で言えば、今回のベトナムのほうが、中国大会よりも気候面など厳しいと思う。しかし、試合内容という意味で言えば、中国大会の方が厳しいものがあった。前の代表は、選手のタイプにあわせたシステムで戦っていたから、誰かがビックプレーをするとか、ヒーローが出ないと勝てないような状態だった。セットプレー頼みというのは変だけど、セットプレーで得点するとかね。でも今の代表はボールがキープでき、パスも出せ、そのうえ走れるという選手が揃っている。選手それぞれが走って、連動して、ボールをゴール前に運んでいく。だから、誰か一人がビックプレーをする必要がない。選手それぞれの力を合わせて戦っていくという感じなんです」

 より全員サッカーとして戦っているのがオシムジャパンというわけだ。「できるだけシンプルにパスを廻して、相手を崩しながら、どこかで個人の技術で突破していけばいい」と話す中村。ベトナム戦の巻の1点目は、パスを受けた中村が一旦ボールをキープし、相手を交わしてからクロスボールを上げることで生まれた。シンプルなパス廻しで相手を揺さぶり、最後はテクニックで翻弄することで、見事なアシストとなったのだ。

 予選リーグ3戦を終えた高原は「3試合すべてで、自分たちのミスから失点している。予選リーグだったからよかったけれど、決勝トーナメントでは、絶対に良くない。予選リーグの失点を教訓にして、しっかり気持ちを引き締めていきたい」と話した。高原のいうミスとは、別にディフェンダーだけの問題ではない。ベトナムの先制点となったCKからのゴールに絡んだ鈴木はこう話している。

「今日の失点シーンは、相手のボールが自分の足に当たって入ってしまった。確かに僕のミスということもあるのかもしれないが、ボールの奪われ方が悪くて、そこから相手の攻撃を許し、失点するということもある。ミスが無いほうがいいとは思うけれど、ミスが生じることはある。大事なのはそのミスをカバーする動きを誰かができるということ。そういう余裕がないと、ミスがミスを生んで、悪い連鎖が起きてしまう。予選リーグの失点はそういういろんなミスが重なっておきていた」

 それでも、試合を重ねることで、チームの結束は高まっている。中村は言う。「試合後のロッカールームでは、本当に細かいことを選手同士で話し合っているよ。『俺はこうしたかった』とか、『こうしたほうがいいんじゃないか』とかね。そういう空気は、前の代表ではあまりなかった」
 
 鈴木も言う。「試合に出ている選手だけでなくて、外から見ている選手もいろんな意見を話してくれる。そういう中で修正を繰り返し、進化していけると思う」

 ひとつの目標であった、予選リーグ1位突破を達成した。決勝トーナメント1回戦まで、4日間ある。その期間で、フィジカルコンディションを整えなおし、対戦相手となるオーストラリアに対しての対策をしっかりと立てることが重要な鍵となる。

―― text by Noriko TERANO from Vietnam ――

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