「ミランにはリバプールにない勢いがあった」と中村

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 23日(日本時間24日)、ミランの勝利(2−1)で決着した06−07シーズンの欧州CL決勝。2シーズン前と同カード、アテネを舞台にした決戦は、ミランが前回の借りをきっちりと返して幕を閉じた。今シーズンはカルチョ・スキャンダルの余波で一時は欧州CL出場権を剥奪されかけたミラン。序盤戦は不振にあえぎ、アンチェロッティ監督の解任も囁かれたが、シーズン後半の巻き返しから、余勢をかって欧州最大のタイトルをモノにするにいたった。

 今シーズン、セルティックの一員として、奇しくもそのミランと決勝ラウンドで対戦した中村俊輔。戦力的には劣勢ながら、第2戦の延長戦までもつれ込み、カカの一発で敗れた激戦は、記憶に新しい。その中村俊輔の目に、決勝の90分はどのように映ったのか。試合翌日、グラスゴーのセルティックパークに、彼を直撃した。 
 
――決勝は自宅で?

「家族とリラックスしながらテレビで」

――勝利にも様々な形があると思うけど、ミランが勝つべくして勝った試合だといえるのでしょうか?

「ミランペースというか、ミランの思惑どおりに進んだ試合だったんじゃないかな。まず、ちょっと勢いが違うなとは、最初から感じたね。ミランからは、決勝を戦うスピリットというか、なにがなんでも勝つというメンタリティを強く感じた。ルーズボールへの反応や、食らいつくようなスライディングひとつとっても、リバプール以上の強いハートが出ていたと思う」

――リバプール・ペースの時間帯もありました。

「チャンスそのものは何度かあった。ただ、前半にカイトがエリア内でシュートを打ったシーンでは、身体を張ったネスタに当たったり。後半にもジェラードが決定的なシーンに持ち込んだけど、インサイドで置きにいくようなシュートでヂダに防がれて。あれがふだんのジェラードなら、思い切って強いシュートを打ったんじゃないかって思ったりしたね。あれ、ちょっとリバプールおかしいなって、勢いがミランとは違うなって印象だった」

――前半終了間際、ピルロのFKから先制点。先手を取ったタイミングも抜群だったのでは?

「あれはインザーギに当たってなければ、おそらくGKに取られていたからね。ミランにとってはラッキーだし、リバプールにとっては不運。ただ、このレベルの試合になると、相手を完全に崩してゴールするのは難しい。むしろ、完全に崩していないけど、ゴールにしてしまう力というか、そういうものが求められる。あきらかにファーサイドへ流れそうなセンタリングを、強引にヘディングしてゴールへ押し込む選手とか。そういう、きれいな形ではないけど、ゴールにできてしまう選手がいるチームに、たいてい勝利は転がり込んでくる」

――2点目もインザーギ。彼らしいゴールでしたね。

「それまでもインザーギはDFライン付近でフラフラ動いていて、あのときは最初オフサイドポジションにいた。けど、カカにボールが入った瞬間、ディフェンスラインと同じ高さまですぐに戻った。相手DFは4人。けど、タイミングとコースを見極めて、誰にボールを触れさせることもなくネットを揺らした。高さも、テクニックも、フィジカルの強さも関係ない。それでも点は奪えるって見本のような一連のプレーだった。インザーギはああいうふうに、DFの裏を狙ってる選手。まったく消えちゃう試合もあるけど、オールラウンダーよりもスペシャルな能力が求められる世界だからね。日本人の感覚だと、FWには、ポストプレーができて、裏も狙って、トップに張れて、サイドにも流れてみたいに、オールラウンドな能力を求めがちだけど、ひとつスペシャルな武器があることのほうがまず大事なんだって、彼をみて思うね。それは、マンUやミランと欧州CLで対戦してみて、あらためて思った」