ライブドア(LD)事件で証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)の罪に問われた元社長、堀江貴文被告の第20回公判が30日、東京地裁(小坂敏幸裁判長)で開かれた。弁護側証人として出廷した金融機関「クレディ・スイス」元行員、小谷彰彦氏は、自社株売却益の還流の際に同行から堀江被告がローンを借り入れ、リスクを負担していた実体を明らかにした上で、一連の取引について同被告は宮内亮治被告=分離公判中=らの説明を受けていないとの見方を示した。

 小谷氏はクレディ・スイスのプライベートバンク部門と日本の顧客との橋渡し役。この日の公判では、LDが出会い系サイト運営会社「キューズ・ネット」と消費者金融「ロイヤル信販」買収の際に、介在させた投資ファンド「JMAMサルベージ1号投資事業組合」に割り当てたLD株1260万株について証言した。

 証言によると、「JMAMサルベージ」が保有するLD株1260万株は、堀江被告がクレディから融資を受けて2005年3月、一旦買い取ることになった。当時、ニッポン放送株の大量取得でLDの株価は低迷していたが、堀江被告はクレディから88億円の融資を受け、当時の株価のほぼ2倍に当たる1株700円でLD株を購入。小谷氏は「大胆な取引だ。JMAMサルベージで売れなかったLD株を堀江被告に押し付けている。オーナーは大変だ」と思ったという。

 契約書の署名の際には、小谷氏も同席。契約書は英語で書かれていた上、相当な量があったが、堀江被告はサインの際、「英語だっけ? 日本語だっけ?」と周囲に尋ねた。その際、宮内被告らは内容について説明をしなかった。

 堀江被告が時価の倍額でLD株を購入したため、ライブドア・ファイナンス(LDF)には約20億円の利益が入った。堀江被告は一時多額のローンを抱えたが、05年12月にLD株が700円を超えたため売却、ローンを清算した。

 堀江被告のローンが無くなったことに、宮内被告らはとても喜び、特に中村長也被告=分離公判中=は「ほっとした」と連発している様子を小谷氏は見たという。さらに中村被告は「このことを知っているのは、僕ら3人だけなんだよ」と小谷氏に語った。宮内・中村両被告と経理担当の女性のことだといい、宮内被告らが一連の取引について、堀江被告の事前の説明や承認を得ていないと小谷氏は確信したという。

久野被告「堀江さんから質問なかった」

 また、午後の公判には、LDの04年9月期決算を担当した公認会計士、久野太辰被告=分離公判中=が弁護側証人として出廷した。

 検察側はLDの決算について、企業買収に利用したファンドはダミーであり、自社株売却益も資本勘定に入れるところを損益勘定に入れたと主張している。

 公判の中で久野被告は、ファンドが連結対象であるか否かは「会計士であっても、判断が分かれる」とし、自社株の取引についても「短期的な取引の場合、損益勘定に入れてもよい」との考えを示した。

 また、小谷氏が言及したクレディとの取引などについて、堀江被告から特に質問されたことがなかったことも明らかにした。

 検察による取り調べについては、久野氏は「大声を出されたし、言い違いを一つ一つ取り上げられ『お前はなめているのか。すべてを公開して、責任を取ってもらうぞ』と言われた」と証言。検事の言う通りに供述調書にサインしたら、起訴されないのではないかという期待もあったことも明かした。

 久野被告は今年3月、港陽監査法人(6月末に解散)の小林元・元代表社員とともに在宅起訴された。当初は起訴事実を認めていたが、公判では否認、無罪を訴えている。

 次回公判は11月7日。堀江被告本人への被告人質問が行われる予定。【了】

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