産学共同研究で新法人、研究・教育で教員分業へ
政府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI、議長=安倍晋三首相)は、大学や国立研究開発法人が産学共同研究の新法人を設立する新制度の方針を正式発表した。これを含め政府全体で研究力強化を推し進める「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」(仮称)を2019年内に策定。大学教員の研究職と教育職への分業化、研究事務の原則外部委託化などの項目を詰める。
総合パッケージは、研究者の研究時間確保や若手割合の引き上げに向けた方策を、総合・俯瞰(ふかん)的に構築する。大学組織の慣行や人事異動と切り離した産学共同研究の法人の内閣府プランや、文部科学省の「研究力向上改革2019」など活用しつつ、縦割り施策の問題を解消。経済産業省も加わり、政府が産業界と連携し策定する。
また全国各地にイノベーション創出の仕組みを構築するため、地域と国公私立の大学特性を関連付けた大学ビジョンを19年度内に作成する。地方大都市圏や小都市などのデータを使い、地場産業や医療行政と関わる大学の人材育成・研究で複数のモデルを提示。これを国からの提案とし、大学・地域関係者による改革につなげる。
また野心的な目標で取り組む「ムーンショット型研究開発制度」では、関係府省に加え企業経営者やベンチャーキャピタルが入る「アクセラレーター協議会」(仮称)を設置。ここで事業化やベンチャー起業などの社会実装を加速する議論や支援を手がける。
日刊工業新聞2019年5月14日
<関連記事>
[https://www.nikkan.co.jp/jm/nagaokaut{国立大が生き残っていくための「卓越」という選択}]
新制度は2021年施行が視野 出典:日刊工業新聞2019年3月26日
政府は、大学や国立研究開発法人(国研)が大型の産学共同研究を手がける子会社を新設するための新制度導入の検討に入った。子会社は、クロスアポイントメント(複数組織との雇用契約)により研究者を雇用し、共同研究の成果による収益を寄付として大学や国研に還元する仕組みで、大学・国研の自主財源増大に結びつける。政府が6月にまとめる「統合イノベーション戦略」に盛り込む方針。2020年の法改正、21年の施行を視野に入れる。
国立大や国研はベンチャー企業への投資や技術移転を目的とする会社は設立できるが、共同研究のための会社は設立できなかった。
大学・国研の外部に設置する子会社(民間会社)「共同研究等実施法人」(仮称)は、大学が1企業と組む「競争領域」(目的を実際の製品などにどう活用するかという領域)での応用研究の受け皿を担う。新会社への出資は大学・国研1機関にとどまらず、地域や特定領域の複数機関でも可能とする。
大学内の産学連携部局は、研究者の人件費や施設・設備の使用対価を連携企業から徴収できていなかった。新会社がビジネスとして適切に算定すれば、共同研究費の大幅な引き上げが期待される。産学連携に携わる教員は新会社の給与で優遇し、合わせて運営費交付金による大学の人件費負担も減らせる。大学・国研が受け取る収益は年度や使用目的の制限がない新財源となる。
新制度発足に向け、国立大学・国研による子会社への出資認可や、公私立大学も含む研究開発税制の優遇などの後押しも期待される。内閣府が主体となり文部科学省、経済産業省などと議論を進めている。科学技術・イノベーション活性化法や国立大学法人法の改正を20年の通常国会で成立させ、21年に施行するというのが実現に向けた最速の日程となる。
総合パッケージは、研究者の研究時間確保や若手割合の引き上げに向けた方策を、総合・俯瞰(ふかん)的に構築する。大学組織の慣行や人事異動と切り離した産学共同研究の法人の内閣府プランや、文部科学省の「研究力向上改革2019」など活用しつつ、縦割り施策の問題を解消。経済産業省も加わり、政府が産業界と連携し策定する。
また野心的な目標で取り組む「ムーンショット型研究開発制度」では、関係府省に加え企業経営者やベンチャーキャピタルが入る「アクセラレーター協議会」(仮称)を設置。ここで事業化やベンチャー起業などの社会実装を加速する議論や支援を手がける。
日刊工業新聞2019年5月14日
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新制度は2021年施行が視野 出典:日刊工業新聞2019年3月26日
政府は、大学や国立研究開発法人(国研)が大型の産学共同研究を手がける子会社を新設するための新制度導入の検討に入った。子会社は、クロスアポイントメント(複数組織との雇用契約)により研究者を雇用し、共同研究の成果による収益を寄付として大学や国研に還元する仕組みで、大学・国研の自主財源増大に結びつける。政府が6月にまとめる「統合イノベーション戦略」に盛り込む方針。2020年の法改正、21年の施行を視野に入れる。
国立大や国研はベンチャー企業への投資や技術移転を目的とする会社は設立できるが、共同研究のための会社は設立できなかった。
大学・国研の外部に設置する子会社(民間会社)「共同研究等実施法人」(仮称)は、大学が1企業と組む「競争領域」(目的を実際の製品などにどう活用するかという領域)での応用研究の受け皿を担う。新会社への出資は大学・国研1機関にとどまらず、地域や特定領域の複数機関でも可能とする。
大学内の産学連携部局は、研究者の人件費や施設・設備の使用対価を連携企業から徴収できていなかった。新会社がビジネスとして適切に算定すれば、共同研究費の大幅な引き上げが期待される。産学連携に携わる教員は新会社の給与で優遇し、合わせて運営費交付金による大学の人件費負担も減らせる。大学・国研が受け取る収益は年度や使用目的の制限がない新財源となる。
新制度発足に向け、国立大学・国研による子会社への出資認可や、公私立大学も含む研究開発税制の優遇などの後押しも期待される。内閣府が主体となり文部科学省、経済産業省などと議論を進めている。科学技術・イノベーション活性化法や国立大学法人法の改正を20年の通常国会で成立させ、21年に施行するというのが実現に向けた最速の日程となる。