菅田将暉さん(Getty Images)

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 俳優の菅田将暉さんが主演を務め、初の教師役に挑んだ日本テレビ系連続ドラマ「3年A組 −今から皆さんは、人質です−」が3月10日に最終回を迎えました。第4話以降、平均視聴率は一度も落ちることなく、最終回は15.4%で有終の美。全話平均でも11.5%を記録しました(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

連ドラ本来の醍醐味を示した

 同ドラマは、高校を舞台にした学園ミステリーで、全10話を通して1つのテーマを描き、一話でも見逃すと内容を十分理解できないストーリーでした。また、美術教師・柊一颯(菅田さん)が3年A組の生徒を人質に取り、自殺した生徒の死を巡って“最後の授業”を始めるという挑戦的な内容でもあり、一見、幅広い世代に受け入れられるジャンルでないように思われました。

 しかし、先の読めない展開や菅田さんら出演者の白熱した演技、心に突き刺さるせりふなどが話題になり大ヒット。テレビ解説者でコラムニストの木村隆志さんは、同ドラマの盛り上がりについて、「これが本来の連ドラの醍醐味(だいごみ)」と指摘します。

「連続性のあるストーリーで、回を重ねるごとに愛着が湧いていく作品でした。これが、本来の連ドラの醍醐味なんです。オンエア後には、『次はどうなるんだろう』と思える、正統派の連ドラでした」(木村さん)

 インターネットの普及に伴い、若年層のテレビ離れが叫ばれています。一方で、中高年をターゲットに一話完結の刑事ドラマや弁護士ドラマ、医療ドラマなどの連ドラが数多く制作されるようになりました。

「現在は『相棒』に代表されるような、見逃しても問題がなく、録画ではなくリアルタイムで見るため、安定した視聴率が望める一話完結の作品が多く作られています。しかし、それらは気軽に見られる半面、回を追うごとに盛り上がる連続性がないという欠点もあります。『どんどん好きになる』『早く次の話が見たい』と愛着が持てる作品ではないため、若い世代の人々は『3年A組』によって初めて連ドラ本来の魅力に気付いたのではないでしょうか」

 キャストは、菅田さんのほか、生徒役に永野芽郁さん、上白石萌歌さん、片寄涼太さん、川栄李奈さん、萩原利久さん、今田美桜さんら注目の若手俳優が集結し、番組公式ツイッターのフォロワー数は28万3000人を突破しました。

「教師が生徒を人質にするという強烈な設定は“出オチ”に終わることも多いのですが、全10話を3章に分ける構成でテンポがよく、新たな関心事を次々に投入することで中だるみもなく、最後まで視聴者の興味を引きつけました。評判だけでなく視聴率を獲得できたのは、若手キャストや過激なシーンの連続、『学校』という舞台など、若い世代がリアルタイムで視聴しながらSNSに投稿したくなる要素を盛り込んだからでしょう」

「もちろん、中高年層にも受け入れられました。一話完結のドラマは安定した視聴率につながりやすいものの、あまりに増えすぎたため飽きられているのも事実です。1980〜1990年代に多かった連続性のある連ドラを知っているからこそ、『やっぱりこういうドラマは良いよね』と評判でした」

「3年A組」の放送枠は、日曜日午後10時30分からの約1時間。プライムタイムの終わりであるこの時間帯も、挑戦的な作品を送り出せる理由の一つといいます。前クール、こちらも評判の高かった「今日から俺は!!」が放送されたことは記憶に新しいところです。

 木村さんは「連ドラは第1話を見てもらうことが重要であり、だからこそ『3年A組』は、主人公教師の狂ったような姿を見せたり、爆破シーンを織り込んだりするなどのインパクトを用意しました。視聴者は、実験的な作品が続くこの放送枠に期待し始めています」と指摘しています。