落下しそうになるたび、屈強な付け人が身体を支える異様な光景が。なにをやらかそうが、サッカーファンはこのスーパースターがやはり憎めないのだ。(C)Getty Images

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 土壇場の86分にマルコス・ロホが決勝点を奪い、ナイジェリア戦で2-1の快勝を収めたアルゼンチン代表。グループ最下位から2位に急浮上し、なんとかノックアウトラウンドへの切符を手に入れた。
 
 試合中、全世界のファンに提供されたのが、ゲーム展開に一喜一憂する神の子の姿だった。ディエゴ・マラドーナそのひとである。リオネル・ネッシの先制ゴラッソに熱狂して祈りのポーズを見せれば、PKで同点に追いつかれると泣きべそをかく。そしてロホの劇的弾ではVIP席から落下しそうなほど前に飛び出して、歓喜を爆発させた。しかし──。その際のジェスチャーがよろしくなかった。野蛮にも両手で中指を立ててしまったのだ。

 
 英公共放送『BBC』でライブ中継の解説を担当した元イングランド代表のガリー・リネカーは、この振る舞いにげんなり。「酷すぎる。大会を通していろんなセレブレーション(祝福)をする彼の姿を見ているけど、かなり危険だよ。このままじゃディエゴはもの笑いに種になってしまう。それが私は心配だ」と話し、「ディエゴ、マジかよ?」とかつてワールドカップで鎬を削ったライバルに投げかけた。
 
 同じくスタジオにいた元イングランド代表のリオ・ファーディナンドも激しく同意。「プレーヤーとしては最高だったけどこれはね……。彼が自分自身を貶める姿を誰も見たくはないはずだ」と戒めた。
 
 大会序盤、マラドーナは韓国人サポーターに向かって目を吊り上げる、アジア人を侮蔑するジャスチャーを見せて物議を醸した。そして今回のあるまじきパフォーマンス。最近はFIFAアンバサダーを務めるなど問題行動がめっきり減り、穏やかな日々を送っていたが、母国代表チームの危機に瀕して“悪童くん”が復活を遂げたのかもしれない。
 
 試合後には興奮しすぎたせいか、救急隊の診断を受けた。心臓に疾患を抱えているだけに周囲は騒然となったが、どうやら大事には至らなかったようだ。
 
 それでも、やはり憎めないのがこのスーパーレジェンド。続くラウンド・オブ16、フランスvsアルゼンチン戦でもやはり、その一挙手一投足が気になってしまうのである。