コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんがレポートする当シリーズ。前回のローソン「生鮮宅配」の話題に続いて、今回取り上げるのはファミリーマートが5月から試験販売を始める「ファミバーガー」について。成功するかどうかは、モノではなくコトの魅力を伝えられるかにかかっていると語る日比谷さんですが、一体どういうことでしょうか。

「ファミバーガー」5月から試験販売を開始

ファミリーマートが先日、関東地方の約50店舗で今年5月からの試験販売を発表した「ファミバーガー」。

レジで注文すると、具材や専用ソース、電子レンジで温めたバンズが提供され、客自身が具などを挟んで完成させるのが大きな特徴。具材は人気のファミチキのほか、レジ横で販売しているコロッケや白身魚のフライもバーガーにできます。

ファミチキを挟んだファミチキバーガーの値段は260円。ファミリーマートとしては、試験販売での売れ行きなどを見て、本格販売に踏み切るかどうかを判断するそうです。

自分で商品を作ることの楽しみ

今回ファミリーマートが参入理由のひとつに挙げているのが、マクドナルドの業績回復に伴って国内バーガー市場が拡大傾向にあるという点。ただ、この理由だけだと、以前に失敗した「ドーナツ」と同じことになりそうな予感もします。

とはいえ今回の取組みには、私自身少しばかり期待しています。理由としては、セルフ方式を採用することで、店舗のオペレーションコストを最小化しているところもさることながら、何といっても「モノ消費⇒コト消費」という最近の流れをつかんでいるからです。

コト消費とは、要するにお客さんが参加していろんな商品を作るということ。「ファミバーガー」は、この自分で商品を作ることの楽しさをうまく伝えることができるかどうかが、今後の課題となりそうです。

例えばチーズを挟んでみたり、ファミチキにササミパックを合わせて肉々しくしてみたり、そういうお客さんがアレンジした“新商品”がSNSやYouTubeなどで発信されていけば、もしかするとブームがやってくる可能性もあるんじゃないでしょうか。私がマーケティング担当者であれば、コンテストを開催して盛り上げていきたいですね。

そもそもコンビニでハンバーガーは売れるのか

ただ、ひとつ懸念すべき点として挙げられるのが、そもそもコンビニにハンバーガーのニーズがあるかどうかということ。

現状、大半の店舗でハンバーガーが品揃えさえしていない現状を考えれば、そのニーズは低いと考えられます。

最近の流れとしては、チルド便で送られたフレッシュな野菜にニーズが来ています。それと相反するような、温かいバンズで温かいフライドチキンを挟んだこの商品に、果たしてニーズが存在するのか。また高カロリーな商品であるということで、ここ最近の健康ブームにも乗りにくいところも、ちょっと心配です。

このようにモノ自体はトレンドに乗り切れてないところがあるだけに、やはりコトのブームを作り上げるマーケティング力が、この「ファミバーガー」が成功するかどうかのカギを握るのではないでしょうか。

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