農水省は1日、重要病害虫のテンサイシストセンチュウを、国内で初めて、長野県原村で確認したと発表した。海外では、アブラナ属の作物などに大きな影響を及ぼしている。同省は長野県と連携し、まん延を防ぐため発生地域の農家に土壌を移動しないよう呼び掛ける他、発生地域の圃場(ほじょう)の土壌消毒を進める。同害虫が付着した作物を食べても人の健康に影響はない。

 同村でアブラナ属の野菜を栽培する農家が、生育不良の株について、専門家に調査を依頼。同省名古屋植物防疫所が1日に確認した。

 同害虫は欧州諸国で被害が多く、テンサイでは防除していない場合、収量が25%減少したという。症状として生育の遅れや黄化、しおれ、枯死がある。地下茎部はひげ根が異常に増えて奇形になる。

 国内の一部地域で発生が確認されているジャガイモシストセンチュウと同様に、土壌を介して広がる。侵入経路は確認できていないが、同省植物防疫課は「海外から輸入した資材に付いていた可能性もある」と話す。

 海外ではセンチュウの密度を減らす対抗植物を使った対策も取られている。日本でも同様の効果を得られるか検討する。同省は調査結果を基に、来週にも有識者らで対策検討会議を開く。

 発生を受けて長野県は1日、病害虫発生予察特殊報を発表し、生産者に警戒を呼び掛けた。発生地域の土壌の移動を制限する他、使用した農機具や車両の洗浄の徹底、栽培残さの圃場外への搬出を避けるよう求めた。他の圃場の土を持ち込まないよう徹底する。

 県は「国の専門家の指示の下、JAなどと連携しまん延防止に全力を挙げる」(農業技術課)とし、週明けにもJAや地元行政と防除対策や発生状況の確認について会議を開く予定だ。 

<ことば> テンサイシストセンチュウ

 アブラナ属のキャベツやブロッコリーなど、フダンソウ属のテンサイなどに寄生して病害を引き起こす。根に寄生した雌は卵を内包して直径0・6〜0・9ミリほどのシスト(包のう)になる。シストは乾燥や低温に強く、長期間土壌に生存できる。アジアや欧州など世界中に分布する。