東京メトロ半蔵門線で大手町まで約8分の好立地にも、平日朝ラッシュ時に始発電車のある駅が存在する(撮影:梅谷秀司)

首都圏の鉄道における朝のラッシュは考えるだけで気が重くなる。とくに便利な都心部に住もうと思うと、職場や学校まで僅かな距離とはいえ、乗りこむのが大変な満員電車を利用しなければならない。

そんなとき、ほぼ座れる電車があればいいのにとは誰もが思うこと。夢みたいな話だが、最寄り駅が始発となる電車があれば、それも可能だ。調べてみると、意外な駅が該当する。春を迎え、新しい職場や学校へ通うために住まいをどこにするか思案している人には、こうした駅の近くも選択肢となるのではないかと思い、リストアップしてみた。


2路線とも始発がある「穴場」
1)清澄白河駅(東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄大江戸線)

大手町まで東京メトロ半蔵門線で平均所要時間8分という好立地の清澄白河駅(江東区)。実は、朝ラッシュ時にこの駅始発の電車があるのだ。

半蔵門線は、渋谷付近と押上付近では利用者数の差が大きいため、電車の本数調整をするために清澄白河駅で渋谷方面に折り返す電車が設定されている。このため、この駅の利用者は、はからずも楽に座れる始発電車の恩恵を受けられるわけである。朝の7時台に3本、8時台に4本の渋谷方面行き始発があり、大手町あたりに9時までに到着したいなら利用価値は高い。


清澄白河は大江戸線も始発電車がある



清澄白河駅は半蔵門線・大江戸線ともに当駅始発の電車がある(筆者撮影)

清澄白河駅は都営地下鉄大江戸線が交差しているが、大江戸線は近隣の木場公園地下に車両基地があるため、こちらもその入出庫を兼ねた清澄白河発着の電車が設定されている。7時台に8本、8時台に2本の勝どき・汐留方面行き始発電車があるが、通勤時間帯を考えると8時台にもっと欲しいところだ。

いずれにせよ、乗り入れる2路線ともに始発電車がある駅は、都心では珍しいといえるだろう。

最近、ブルーボトルコーヒーなど洒落たカフェが増え、マンションも多数あるので、これから都心の便利な場所に住もうと考えている人には、候補地のひとつとしてよいかもしれない。また駅に隣接してホテルもあり、東京出張のときの穴場ともいえる。


実は便利な3両編成の支線
2)中野富士見町駅(東京メトロ丸ノ内線 方南町支線)

丸ノ内線の支線にある中野富士見町駅は、朝ラッシュ時に新宿・銀座方面への直通始発電車が数多く設定されている(筆者撮影)

東京メトロ丸ノ内線の新宿駅から荻窪方面へ2つ目、中野坂上駅から分岐する方南町支線。今のところ、昼間は支線内折り返し運転の3両編成が走るローカル線のような路線だが、中野富士見町駅(中野区)近くに丸ノ内線の車両基地があるため、朝夕を中心に同駅が始発・終点となる本線直通の電車が設定されている。

とくに朝は、7時台に11本、8時台に7本もの新宿、銀座方面への始発電車があるのが魅力的だ。新宿まで平均所要時間8分、霞ケ関まで22分、大手町まで29分と乗り換えなしで行けるのがいい。方南町駅のホーム延伸工事が完成すれば、昼間も本線直通電車が走り始めるので、このあたりは、住むのにますます便利なエリアとなりそうである。


3)石神井公園駅(西武池袋線)

池袋から急行で一駅の石神井公園駅(練馬区)は、地下鉄副都心線との相互直通運転にともなう高架複々線工事の完成で近代的な駅に生まれ変わるとともに、折り返しの始発電車が設定され利便性が向上した。それまで暫定的に走っていた練馬高野台駅折り返し電車が石神井公園駅まで延伸された形だが、池袋線の池袋行き各駅停車、練馬から地下にもぐって西武有楽町線、東京メトロ副都心線を経由し、遠くみなとみらい線の元町・中華街へ向かう電車など、多様な始発電車が設定されている。

同駅始発の上り電車は、7時台が6本(うち西武線池袋行き3本、地下鉄直通3本)、8時台は3本(地下鉄直通2本)で、地下鉄直通は副都心線経由と有楽町線経由に分かれるのが複雑だ。残念ながら、石神井公園駅始発の電車はすべて各駅停車なので、急ぐ人には不向きかもしれない。


1本おきに始発電車がある駅も!


4)富士見ヶ丘駅(京王電鉄井の頭線)

吉祥寺駅と渋谷駅を結ぶ京王井の頭線は、朝のラッシュ時を過ぎると急行と各駅停車が交互に運転され、基本的に途中駅発着の区間運転はない。だが、朝は車両基地の最寄り駅となる富士見ヶ丘駅(杉並区)始発の電車が、渋谷に向けて多数運転される。とくに8時台は壮観で、05分から47分まで1本おき、ほぼ5分に1本始発電車があり、渋谷方面へ向かう人にとってはありがたいことだ。この時間帯は全列車が各駅停車なので、永福町駅での急行待避はない。渋谷まで約22分間座って行けるのは楽である。


5)蒲田駅(JR京浜東北線

首都圏のJR各線は、都区内にあるターミナル以外の駅で折り返す列車はほとんどないけれど、例外的なのが南北に走る京浜東北線である。赤羽、東十条(ともに北区)、蒲田(大田区)の各駅が始発となる電車が設定されている。

その中で、比較的本数があってラッシュ時に使えそうなのが、蒲田駅であろう。朝の北行(大宮方面)は、蒲田始発が7時台に6本、8時台に4本ある。乗り換えなしで新橋までの平均所要時間は18分、東京駅まで22分だから、便利な駅と言えるだろう。


板橋区内、2つの便利な駅
6)成増駅(東武東上線)

東武東上線の成増駅もラッシュ時に当駅始発の電車がある(筆者撮影)

埼玉県内から都心に向かう東武東上線は混雑することで知られているが、同線では都区内の端となる成増駅(板橋区)折り返しの電車が設定されている。各駅停車のみで7時台は5本、8時台は3本ある。もっとも、場合によっては途中駅で準急や急行に2回抜かれるので、所要時間は21〜27分かかる。余談だが、1本だけ上板橋始発の池袋行きという各駅停車があるのは興味深い。


7)高島平駅(都営地下鉄三田線)

三田線の終点は西高島平駅だが、その2つ都心寄りが高島平駅(板橋区)である。巨大な高島平団地の中心となる駅で、乗降客数は新高島平駅、西高島平駅に比べると格段の差がある。従って、高島平駅で折り返す電車があっても不思議ではない。車両基地である志村車両検修場の出入りの関係もあって、7時台に6本、8時台に3本の始発電車の設定があるのは通勤客には好都合だ。乗り換えなしで大手町までの平均所要時間は31分、三田までは40分である。


昼間は始発電車が多いものの…


8)竹ノ塚駅(東武伊勢崎線)

最近では東武スカイツリーラインと呼ばれる伊勢崎線は、複々線が延々と続く。同線では足立区の北端となる竹ノ塚駅折り返しの電車が1日を通して多数設定されているが、ラッシュ時に関しては7時台が4本、8時台は2本と意外に少ない。7時台の3本は地下鉄日比谷線直通だが、その後は浅草行きが2本、そしてなぜか北千住止まりと続く。都心部に向かう場合には乗り換えが必要になり、ラクラク通勤とは言い難い。


都外・23区外の「意外な穴場」
9)妙典駅(東京メトロ東西線・千葉県市川市)

妙典駅は2000年開業。朝7〜8時台に11本の始発電車がある(筆者撮影)

この先は、23区内からは外れるけれど気になる駅を挙げておこう。まずは、混雑の激しさで有名な東京メトロ東西線。千葉方面から都心へ向かう電車は、西船橋やそれ以遠の東葉高速鉄道、JR総武線からの直通ばかりで、途中駅から乗るのは至難の業となる。

その中で、西船橋から都心寄りに2つ目の妙典駅は、車両基地が隣接していることもあって、朝は7時台に6本、8時台に5本の始発電車があり、日本橋や大手町まで30分ほどで行ける。2000年に開業した比較的新しい駅で、住所は千葉県市川市。意外な穴場かもしれない。


10)つつじヶ丘駅(京王線・調布市)

かつては、つつじヶ丘駅で折り返す電車が多数設定されていたものの、沿線の開発が進み多摩ニュータウンからの乗客増もあって、つつじヶ丘駅折り返しは激減した。かろうじて7時台に3本の上り各駅停車が始発電車として残っており、途中の八幡山駅で優等列車の待避があるものの約30分で新宿に到着する。駅が位置する調布市内や、ちょっと離れるが世田谷区の京王線沿線で住まいを探すなら狙い目の駅かもしれない。

以上、首都圏の都心寄りのエリアで「当駅始発」の電車がある10駅を選んでみた。都心で暮らしたいけれど、満員電車は極力避けたいという人には有益な情報であろう。


著者
野田 隆 :旅行作家

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