DeNAから自由契約となったアーロム・バルディリス【写真:編集部】

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広島が獲得に動くと報じられたルナは「まだやる。どこかが獲ったほうがいい」

 今オフもNPBの各球団が新外国人獲得に動いている。阪神はパイレーツやブルージェイズでプレーしたマット・ヘイグ内野手と契約。正三塁手候補として期待されている。広島はジェイソン・プライディ外野手、中日はメジャーでの実績も十分なダヤン・ビシエド外野手、DeNAはジェイミー・ロマック内野手を獲得。さらに、巨人がメジャー通算122本塁打のギャレット・ジョーンズ外野手との契約に動いているとも一部で報じられており、セ・リーグではここまで野手の補強が目立つ。

 ただ、メジャーでの実績があっても、日本の野球に適応できるかは未知数。それならば、すでにNPBでの実績がある選手を獲得する方が、球団としては戦力の上積みを確実に計算できる。今オフ、各球団から自由契約となった外国人選手の中で、「まだ日本で使える」野手がいないか、ヤクルト、日本ハム、阪神、DeNAの4球団で捕手として活躍した野球解説者の野口寿浩氏に分析してもらった。

 まずは、すでに広島が獲得に動くとの報道も出ているエクトル・ルナ内野手。2013年に85試合出場で打率3割5分、14年は127試合で打率3割1分7厘とハイレベルな活躍を見せてきた。今季も134試合で打率2割9分2厘と極端に成績が落ちたわけではなかったが、シーズン終了後に中日から自由契約となった。

ルナは行きどころがあるでしょうね。むしろ、どこかが獲った方がいい。中日、広島のつながりがあるので、広島でいいんじゃないでしょうか。(アレックス・)オチョアみたいに。故障だけ気をつけてくれれば、まだやりますよ」

 野口氏はこう予想。三塁、一塁の守備も悪くないだけに、広島にフィットする戦力だという。

「今の広島ならば、サードにはまると思いますけど、はめてしまうことによって堂林の成長が遅れてしまうかもしれない。今年の中日のように、三塁と一塁を両方やってもらう形になるのではないでしょうか。新井が今年のような活躍を出来ればいいですけど、そうでなければルナをファーストにしてもいい」

 同じ内野手では、DeNAから自由契約となったアーロム・バルディリスの去就も気になるところ。今季は打撃面で好不調の波が激しかった。守備力は確かなだけに、手を挙げる球団があってもおかしくないが……。

「良くも悪くも打撃成績はあんな感じで、しっかり守ってくれればよしと思っている球団ならば、(獲りに)いってもいいかもしれないですね。ただ、順番としてはルナのほうが上でしょう。(バルディリスは)シーズンが開幕してから途中でどこかが獲得して、NPBに戻ってくるという可能性もある選手ではないでしょうか。育成契約上がりなので、あの時の気持ちを思い出してやってほしいですね」

もう日本での活躍が期待できない選手も…

 外国人に最も求められる長打力を兼ね備えたタイプで自由契約となった選手もいる。3年ぶりにオリックスに復帰し、チームが絶望的な状況だった前半戦に気を吐いたフランシスコ・カラバイヨも、バルディリスと同じように「シーズン途中に戻ってくるタイプになるのでは」と野口氏は見ている。

 ただ、代打要員としてならば、セ・リーグ覇者が獲得に動いても面白いという。

「右の代打要員でいいならヤクルトですよね。レギュラー陣はいい(選手ばかり)ですけど、(代打は)ようやく鵜久森を獲ってきて何とかなるかなという感じでなので。(今年怪我で長期離脱した)バレンティンもコンデイション的に怪しい部分がある。そうなったら、カラバイヨがレフトでもいい。外国人枠が許されるなら、ということになりますね。オンドルセク、バレンティン、ミレッジといて、ロマンも再契約するかもしれない。ただ、ミレッジとカラバイヨを比べたら、カラバイヨの方がいいかなという気はします」

 一方で、楽天に鳴り物入りで加入したギャビー・サンチェスは、バリバリのメジャーリーガーとしての実力を見せられず。野口氏は「あの姿を見たら、ちょっと日本では厳しいですね」と指摘した。同じ楽天では、日本3球団目となったウィリー・モー・ペーニャ外野手も、オリックスに所属した昨年から本塁打(32→17)、打点(90→40)を大きく落とした。「そろそろかな、という感じがします」と、野口氏は日本でプレー続けるのは厳しいと見る。

 広島に途中加入したシアーホルツも実力の片鱗を見せながら自由契約となったが、「アメリカに帰ってしまうのかなと。彼もバリバリのメジャーリーガーでしたし、向こうでも契約があると思うので。マイナー契約から招待選手でキャンプに行って、メジャー契約を取れる選手だと思います」と分析。MLBでのプレー経験がある選手たちが来季、どんな環境で野球をやることになるのだろうか。

 また、オリックスを自由契約となったエステバン・ヘルマンも今季は怪我や不調に苦しみ、西武時代のような活躍は見せられず。外国人としては長打力に欠けることもあり、野口氏は「ああいうタイプの選手が欲しくて狙っているならいいと思います。でも、あのタイプだったら日本人の方がいい。年俸1億であれでは、獲り手はないかなと思います」と厳しく評価した。

マートンは西武、ホークスにハマる? 「パで獲り手があってもおかしくない」

 一方で、野口氏が将来性に期待するのはミッチ・デニング外野手だ。今季途中にBCリーグ新潟からヤクルトに加入し、64試合に出場して打率2割2分2厘、4本塁打、22打点。自由契約となったが、「もう少しどこかで修行を積んで戻ってきてください、という感じがしました」と指摘する。

「まだちょっと荒いし、それこそBCリーグでもいいから、もうちょっと技術を磨いて、腕を磨いて戻ってきたら、その時にはすごく面白い存在になっているような気がしますよね。育成契約にして独立リーグに派遣するという手もありだと思います。2軍で試合に出していてもいいですけどね。

 ちゃんとした指導を受ければ、とにかく2、3年後が楽しみな感じがします。1年間トータルでホームラン15本くらいだけど、3割ちょっと打てて、打点が欲しい時にはしっかり稼いでくる。そんな感じの選手になれるのではないかと思います」

 今季の年俸は360万円(推定)と破格だけに、手を挙げる球団もあるかもしれない。

 そして、自由契約となった外国人野手で去就に最も注目が集まっているのが、元阪神のマット・マートン外野手だろう。来日1年目の2010年に日本記録(当時)のシーズン214安打を放つなど、実績は抜群。今季は打率2割7分6厘だったものの、6シーズンの通算打率は3割1分とハイレベルだ。阪神ファンからは絶大な人気を誇った。

「給料をもっと少なくしてもやるのなら、パ・リーグで獲り手があってもおかしくない。『好きなようにやれ』と言って、その代わりに悪くなった時に見てくれる(阪神打撃コーチ補佐の)オマリーのような人がいれば、復活するような気がするんですよね。ものすごく頭のいい選手なので」

 DH制のあるパ・リーグなら、まだまだ需要はあると野口氏は見ている。では、具体的にフィットするチームはあるのか。

「森が捕手として守るようになったら、西武は面白いのではないでしょうか。DHが空くので。炭谷がそのまま正捕手になったとしても、森がライトを守るとなれば、マートンをDHで獲ってもいいと思います。ソフトバンクもいいかもしれませんね。(メジャー挑戦を目指して自由契約となった)李大浩が抜けたらDHに入れる」

 その実力は確かなだけに、NPB球団が獲得に動く可能性は十分にあるだろう。

 まだまだオフは長いだけに、各球団がどんな動きを見せるのか、目が離せない。