自作のデジタル時計を「爆弾だ」と誤解され警察に逮捕された高校生がオバマ大統領からホワイトハウスへ招待されるというニュースが話題になり、ついにオバマ大統領との面会が実現しました。ホワイトハウスで開かれたイベントに参加する形で面会が実現したのですが、その後アメリカでの生活を続けるのではなく進学のためにカタールへ移住することを発表しています

‘Clock kid’ Ahmed Mohamed and his family will move to Qatar - The Washington Post

https://www.washingtonpost.com/lifestyle/style/clock-kid-ahmed-mohamed-and-his-family-will-move-to-qatar/2015/10/20/a95ed296-7762-11e5-b9c1-f03c48c96ac2_story.html?tid=sm_tw

US 'clock boy' Ahmed Mohamed to move to Qatar - BBC News

http://www.bbc.com/news/world-us-canada-34587285

アメリカ・テキサス州に住む14歳の高校生、アーメド・モハメドさんは発明が大好きな少年。自作したデジタル時計をある日学校に持ち込んで数名の教師に見せたところ、爆弾を持ち込んだと勘違いされて警察に逮捕されるという出来事が起こりました。



モハメドさんが逮捕された時の様子はこんな感じ。手錠を後ろ手にかけられ警官に囲まれる様子が写ったツイートが世間の反響を呼び、Twitterではハッシュタグ#istandwithahmedでモハメドさんと家族を支持する動きが巻き起こりました。その後、爆弾の疑いが晴れたモハメドさんは無事に無罪放免となっています。

I expect they will have more to say tomorrow, but Ahmed's sister asked me to share this photo. A NASA shirt! pic.twitter.com/nR4gt992gB— Anil Dash (@anildash) 2015, 9月 16

この件には著名人からもモハメドさんを支持する声が集まり、特に話題になったのがオバマ大統領によるツイートでした。「それをホワイトハウスに持ってくる気はある?私たちは、君のように科学に興味のある子どもをもっと増やさないといけない。それがアメリカを素晴らしいものにするのだから」と呼びかけるツイートは、現職の大統領が14歳の高校生をホワイトハウスに招いたことで反響を呼びました。

Cool clock, Ahmed. Want to bring it to the White House? We should inspire more kids like you to like science. It's what makes America great.— President Obama (@POTUS) 2015, 9月 16

そして2015年10月19日、ついにモハメドさんにチャンスが訪れます。ホワイトハウスで開催された「Astronomy Night(天文学ナイト)」の300名の招待客の一人として招かれ、ホワイトハウスでオバマ大統領と面会することになりました。



実際に面会してハグする様子が自身のTwitterでつぶやかれています。

IT WAS AMAZING, AND A HONOR MEETING #PRESIDENT #OBAMA!!! #YOY #THEWHITEHOUSE pic.twitter.com/OIuXjFVLZe— Ahmed Mohamed (@IStandWithAhmed) 2015, 10月 20

ついに大統領に会うチャンスを手にしたモハメドさんでしたが、その後の進路は別の方向に狙いを定めていたようです。

逮捕劇のあと、モハメドさんのもとにはアメリカの国内外から奨学金つきの大学への進学や、多くの企業からの仕事へのオファーが舞い込んできたそうです。そんな中からモハメドさんが最終的に選択したのが、中東の国・カタールにあるカタール財団のオファーでした。カタール財団はモハメドさんに大学卒業までの学費を全額奨学金で提供することをオファーしており、モハメドさんは「Young Innovators Program」に参加して教育を受けることになるとのこと。カタール財団のウェブサイトでは、モハメドさんのオファー受諾を発表するリリースが掲載されています。

Qatar Foundation | Ahmed Mohamed Accepts Scholarship to Qatar Foundation



オバマ大統領による招待に象徴される寛大な対応にもかかわらずカタールへの移住を決めたように見える一連の出来事ですが、その背後ではさまざまな出来事が起こっていたようです。モハメドさんの姉であるエイマンさんが電話インタビューで語ったところによると、モハメドさんには良いモチベーションを与える期待が集まっていた一方で、14歳の少年には抱えきれないさまざまな出来事が起こっていたのも事実であるとのこと。

特に、一連の逮捕劇について「注目を浴びるために仕組まれたものである」とする陰謀論がネットを中心にささやかれていることが大きなきっかけになっている模様。さらにその矛先はモハメドさんの父親で、かつてはスーダン大統領の座を争ったこともあるモハメド・エルハッサン氏(写真右)にも向けられています。エルハッサン氏はまた、アメリカ人牧師のテリー・ジョーンズ氏が2011年に実行した国際クルアーン焼却日でイスラム教の聖典・コーランを燃やした件にも関与がささやかれていることもあり、これらの背景が積み重なったこともあってモハメドさんはアメリカの学校への進学に気が乗らなかったとも考えられています。



モハメドさんはカタールへの移住についてコメントを発表しており、その中では「僕は近代的なドーハの都市が気に入っています。ドーハには素晴らしい学校がいくつもあり、アメリカの有名な大学と連携している学校もあります。先生も素晴らしい人が揃っています。ここでは多くを学び、楽しむことができそうです」と語っています。また、姉のエイマンさんは中東の雰囲気はアメリカとあまり変わらない点に触れ、「カタールはアラブ諸国の中にありますが、同時にテキサスのような雰囲気があります。まるで、『カタールの中のテキサス』のような場所です」と話しています。