中国共産党機関紙の人民日報系のニュースサイト「人民網」は軍事カテゴリーのトップページで6月から、日本は戦闘機装備の更新で失敗したと主張する記事を掲載しつづけている。同記事は、航空自衛隊の「F−15」は就役後30年の旧式機と強調している。(イメージ写真提供:(C)vdwolf/123RF.COM)

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 中国共産党機関紙の人民日報系のニュースサイト「人民網」は軍事カテゴリーのトップページで6月から、日本は戦闘機装備の更新で失敗したと主張する記事を掲載しつづけている。同記事は、航空自衛隊の「F-15」は就役後30年の旧式機と強調している。

 記事は、日本のこれまでの戦闘機の機種更新を「青黄不接(青と黄がつながらない)」と表現した。「黄色の穀物は食べ尽くしたのに、緑の畑は収穫期がまだ」の意で、必要不可欠な物を途絶えさせることなどをあらわす。

 記事は、中国の爆撃機が5月21日に宮古海峡を通過して西太平洋に出た際に、自衛隊のF-15が緊急発進をして警戒したことを紹介。「『慣例』により出てこねばならず、ひと回りした」と、揶揄(やゆ)する書き方をした。

 記事は、中国人軍事評論家の宋心栄氏の談話を紹介。宋氏は「日本には目下、戦備となりパトロールや他国機の阻止に使える航空機がF-15しかない」、「就役後30年が経過したのに、まだ使い続けている。『後継ぎ』がいないからだ」と主張した。

 宋氏は日本が保有するF-15Jは200機以上で、作戦範囲が「わが国の釣魚島(尖閣諸島の中国側通称)や台湾東部にも及ぶと指摘した上で「タイミングよく後継機を開発していない。日本の航空科学技術は開発力に問題があることを示している」と主張した。

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◆解説◆
 実際には、航空自衛隊は2000年に「F-2」の運用も始めており、1981年にF-15Jの運用を始めて以来、後継機がまったく存在しなかったわけではない。

 ただし、ロシア機の無断コピーまでして目まぐるしく新型機の開発を行っている中国に比べれば、日本の動きが「ゆるやかなテンポ」だったことは事実と言ってよいだろう。

 日本が新たな戦闘機の導入をしなかったのは宋氏の主張する「技術力の欠如」ではなく、「予算を投入しなかった」、つまり「国家としての意志がなかった」結果と考えるべきだ。日本は平和主義国家として、軍事力の拡充に「禁欲的な姿勢」を保とうとしてきた。

 昨今になり航空機、ヘリコプター護衛艦、潜水艦など、さまざまな兵器開発の話題が相次いだことで中国は神経質になっているが、原因は日本の内部事情というよりも、外交における中国の強硬姿勢や急ピッチの軍拡が続いていることなどで、日本国内で「戦備の充実を求める世論」が高まった結果とみなすべきだ。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:(C)vdwolf/123RF.COM)