大宮U18のCB市原。圧倒的な空中戦の強さと出足の鋭さを持つ。写真:安藤隆人

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「アルディージャは在籍9年目。ジュニア、ジュニアユース、ユースとずっと過ごしてきて、本当に選手を大事にしてくれるクラブ。感謝しかないし、その感謝はプレーでしか返せないと思っているので、結果で恩返しをしたい」

 7月9日に行なわれたプレミアリーグEAST第11節、アウェーの流経大柏戦の試合後、大宮U18のCB市原吏音はこう話していた。

 この試合で4バックの右CBとして出場した市原は、圧倒的な空中戦の強さと出足の鋭さ、球際の強さを見せる一方で、こまめにラインをコントロールしながら、マイボールにしたら攻撃のスイッチを入れるミドル、ロングパスを供給。攻守において絶大な存在感を放ち、2−1の勝利に貢献をしていた。

 そして、そのわずか3日後と1週間後に早くも冒頭の言葉を有言実行した。

 トップチームに2種登録されている市原は、12日の天皇杯3回戦、アウェーのセレッソ大阪戦の先発に名を連ね、クラブ史上最年少となる18歳と5日でのトップデビュー果たした。この試合は1−3で敗れたが、16日のJ2第26節・栃木SC戦にスタメン出場し、Jデビューを飾ると、3バックの左として持ち前の高さと粘り強い守備を披露。0−0のドロー決着に貢献した。

 18歳とは思えない落ち着いたプレーは、クラブの将来において大きな期待を抱かせるものであった。
 
 プレミアEASTの流経大柏戦を取材した時、市原の成長ぶりにかなりの衝撃を受けた。前述した通り、この試合で間違いなく一番存在感を放っていた。前回見た時よりもヘディングの質はかなり向上し、何より守備時の身体の向きやステップワークが、常に変化する状況に瞬時に対応できる仕様になっていたのが驚きだった。

 以前の市原は守備時にステップを踏んだり、身体の向きを変えたりせずに、ボールが入ってから動き出すというイメージだった。しかし、流経大柏戦ではこまめに身体の向きを変えたり、両足でステップを踏みながら、ボールの動きに合わせて動いたりしていた。

 この変化について本人に聞くと、「今年の春先までの自分は突っ立っているというか、今思うと本当に準備不足でした。プレーをしていても『これで背後に来たら対応できるの?』と自分でも疑問を抱くくらいでした」と語ったように、自らの課題として把握はしていた。
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 では、何がきっかけでこの成長に繋がったのか。市原にとって大きな転機となったのは、今年6月のモーリスレベロトーナメント(旧トゥーロン国際大会)の出場だった。U-19日本代表としてグループリーグ初戦のモロッコ戦、第3戦のコートジボワール戦にスタメンフル出場。そして3戦目では、コートジボワールの圧倒的な身体能力に対して大きな衝撃を受けた。

「一歩が速いというか、少しこぼれたボールをいつもだったらマイボールにできるのに、足をぐんと伸ばされて、身体を当てられて、ボールをキープされてしまう。アバウトにボールを蹴ってくるのに、フォワードがゴリゴリと身体を使ってキープをされてしまう。自分が身体負けをするシーンが多いし、ヘッドで勝てるシーンもあったのですが、弾いたと思ったらすぐに拾われてピンチを招いてしまう。

 中途半端に弾いたら、あっという間に裏のスペースを突かれてしまうし、日本じゃ考えられないプレーが次々と出てきて、適応には戸惑いました。あの試合で価値観がすごく変わりました」

 この衝撃を絶対に忘れてはいけないと、帰国後、もう一度自分のプレーを見直した。ヘディングの打点をもっと上げないといけないし、競り合う前に優位なポジションをとっておかないと一瞬にしてバランスを崩されてしまう。

 それは守備の時も同じで、相手が予想外のプレーをしてきた時にいつでも対応できるよう、前だけではなく、360度の方向にアジリティを持って動き出せる準備が必要となる。これから自分が上で戦っていくためには何が必要か明白になった。
 
「僕がもっと上のレベルでプレーするためには、フィードを磨くなど長所を生かすことはもちろんですが、筋力、スピード、アジリティ、予測の質を上げていかないといけないと強く思ったんです」

 U-19日本代表でも大宮でも、トレーナーに身体の使い方や初速の出し方などを細かく聞いて、実際にトレーニングに取り入れた。こうした意識変化が市原を飛躍的に伸ばしたのだった。

「今、ユースにはジュニア組が僕を含めて4人しかいません。その選手たち中心にユースを引っ張っていかないといけないと思っています。これから僕がやるべきことは、結果で恩返しをしていくことしかないと思っているので、まずは今月のクラブユース選手権は是が非でも取りたいと思っています」

 こう語っていた市原は、今やトップチームにとっても戦力として必要な存在となっている。U18でも、トップでも恩返しをしていく気持ちは変わらない。クラブを愛し、クラブから愛される存在になるために、彼はそのキャリアを着実に歩み始めている。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)