男性が多く、女性が少ないオタクサークル。女性はみんなにもてはやされる。これを「オタサーの姫」と呼ぶ……『姫と呼ばないで』はオタサーの姫前園美也子が、二人目の新規参入部員にその座を脅かされるマンガ。それにしてもオタサーの姫って本当にいるのか?

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ぼくはオタサーの姫を見たことが無い。
「オタサーの姫」とは「圧倒的に男子が多いオタクサークルでちやほやされる女子」のこと。
サークルをクラッシュさせるのが目的ではなく、むしろ「幸せにうまくやる」ための生存戦略らしい。

話題ではよく聞くものの、ほんとに実在するの? UMAなんじゃないの?
エキレビ編集に愚痴ったところ、「女子はみんなみたことありますよ。私ですらみたことあるよ」と言われ、衝撃。
「あるっていうか、気づいていないだけなんじゃないの?」。
ぼくの目は節穴なのか……?

「オタサーの姫」を描いたマンガ『姫と呼ばないで』。
地味女子の前園美也子は、特撮同好会の紅一点。部室にいけば、男子3人が優しく接してくれる。幸せ。
ところがこのサークルに、新居屋つづらという、ぶりっ子系のぽっちゃり女子が入部。
オタサーの姫は一人じゃないと成立しない。
前園美也子と新居屋つづらの、水面下のバトルが始まります。

彼女たちの牽制の様子は、Twitterの「エアリプ」がうまく表現しています。
エアリプとは、Twitterで「@」をつけずに、まわりにツイートすること。

このマンガでは、美也子がエアリプを飛ばします。サークルメンバーに「かまってほしい」というのろし。
「ぽてりか食べたすぎてぽてりかになりたい」という、どうでもいい内容のジョークツイートを送信。
このツイートを見たサークルメンバー(男子)が「今度はぽてりかかw」とリプライを飛ばして来て、やっと彼女は安堵できます。

ところがサークルメンバー、入ってきたばかりの新居屋つづらののエアリプにも反応している。
般若の面が心に浮かぶも「サークルに二人だけの女子だもんね」とフォローボタンを押す。
しかし、新居屋つづらからはフォロー返しはありません。

現実のネット上で使われる「オタサーの姫」という、悪意強めのスラング。
姫そのものだけではなく、「女子部員を担ぎ上げる男たち」への苦言として使われることが多いです。

もてあそばれる可能性のある男性側は、2ちゃんやTwitterで「オタサーの姫」をネットで叩いては盛り上がります。
嬉々として「オタサーの姫見つけたw」とTwitterに挙がっている画像を見たら、単なるロリータ系ファッションモデルの写真だった、なんてことも。
とにかくネタにしたくて仕方ない、話題投下したら広がりやすい、そんな単語。
一方で女性は、さらに冷たい視線を浴びせていることが下記の記事からわかります。
「すっごいブス」と呼ばれても、オタクサークルで「姫」のようにチヤホヤされる「オタサーの姫」の実態 - エキレビ!

最近は「オタサーの姫」という言葉、すっかりメタなネタになっています。
怪獣大図解みたいに「これがオタサーの姫だ!」という解説画像が次々にアップされました。矢印解説画像は『姫と呼ばないで』の表紙でも再現しています。
また「オタサーの姫のコスプレ」「オタサーの姫芸を演じる女性」もネット上には多数見かけます。
「オタサーの姫を応援したいと思っている男性の皆さん!」というお店の宣伝の肯定感とか、なかなかシャレてるんじゃないですかね。

「オタサーの姫」に対する視点には、男女差があるように感じます。
たとえば男側の場合、単にサークルにいる女の子に優しくすることは、まあ多いよ。
わざわざ、相手がいわゆる「姫」なのかそうでないのか、分類しながらわざわざ話しかけたりはしない。
特にヨイショしているつもりはない。下心の有無はしらん。
ぼくのような「姫の存在に気づけない男」はここに属している気がします。
本人たちはそう思ってなくても、他人から見たら、まるで一人を持ち上げているかのように見えるはず。

どんなにオタサーの姫頂上決戦をして奪い取っても、そのトップの座は大学時代だけのもの。
ぶっちゃけサークルなんて失ってもいいんですよ。ちっぽけなもんです。
卒業したら、たいていは「痛い思い出だったね」で済んじゃうんだよ。性的な問題が絡まなければ、だけど。
先に軽い心の骨折程度の怪我を経て、「そんな時代もあったねと」いつか笑って話せたらいいもんです。

……って言おうと思ったけど。
メンバーの女性問題で、所属していたバンドが解散してしまった経験がぼくの大きな心の傷になっているので、大変神経逆なでされるマンガなのでした。
ぼくはバカか! ちくしょう!

(たまごまご)