映画「ミュータントタートルズ」が公開中。日本でもよく知られている4人のカメ。知っておくとちょっとだけ深く楽しめる前知識を5つご紹介。

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現在公開中『ミュータントタートルズ』。
監督は『トランスフォーマー』のマイケル・ベイ。「ベイ・ヘム(ベイ+破壊行為(Mayhem))」という単語があるくらい派手にぶっ壊す映像で有名な監督。今回もニューヨーク摩天楼で、雪山で、最後の最後には「お前それ壊さなくていいだろ」ってものまでぶっ壊します。
歴代でもっともフォトリアルな、カメ度高い今作。女性レポーターのエイプリルと共に、シュレッダー率いるフット軍団の野望を阻止する……というお馴染みのストーリー。

ものすごいスピードでまくしたてるセリフ。バットマンのマネなどのパロディ。かっこいいというよりヤンチャなアクション。
明るいタートルズのイメージは、今までの通り。ところがよく見ると、アニメのタートルズと世界観が全く違う。
今作の亀たちが生まれるまでの「タートルズ」の歴史を追ってみます。

●パロディマンガだったタートルズ
タートルズは1984年、ミラージュ・スタジオ出版のアメコミから誕生しました。
ケヴィン・イーストマンとピーター・レアードが「のろまなカメが素早いニンジャだったら面白いんじゃね?」というノリで発案。
このスケッチに、『X-MEN』のスピンオフ作品『ニュー・ミュータンツ』から、ティーンエージャーらしさをピックアップ。さらに『デアデビル』に登場する、悪魔ザ・ビーストに仕える忍者集団「ザ・ハンド」をもじって、タートルズの敵対組織「ザ・フット」を作ります。

ピーター・レアード「コミックブックを作ったのは、ちょっとしたお楽しみのためだった」(「ミュータントタートルズ大全」より)。
最初に印刷されたのは、コミックコンベンションで頒布された3,000部だけ。
言うなれば、一発ネタパロディ同人誌でした。
1号目は印刷するため借金をしていた二人。しかしあっという間に話題が広まり、2号で一気に15,000部発行。
初期原作のタートルズは、悪に囲まれた暗黒世界で、荒ぶる魂をもち苦悩を抱えたヒーロー(パンフレットより)、というキャラ付けでした。

●アニメ版タートルズ
瞬く間に人気を博したタートルズは、すぐにアニメ化されます。
その中から特に有名なものを比較してみます。

1987年アニメ版
通称「旧亀」。日本では1993年に放送された、最も有名なタートルズ。
真面目なリーダー・レオナルド、お調子者のミケランジェロ、天才発明家ドナテロ……とこの3人は現在とあまり変わりません。ラファエロだけ「クールでドジ(歌詞より)」な性格で、今と違います。
ネズミの忍術家スプリンターはもともと人間。同じ門下生のシュレッダーと悶着あり、シュレッダーは異次元生物クランゲと手を組んでいます。

日本放映版の脚本・演出は『X-MEN』『ビーストウォーズ』の岩浪美和で、吹き替えはアドリブだらけ。
特に人気だったのは、敵のシュレッダー。本名はサワキ・オロク。家族に弟カズオと母ミヨコがいる、シリーズ史上最も庶民派で、ちょっといいやつ。
テレビ東京放送版だと、異次元生物クランゲからは「サワキチャン(オネエ口調)」と呼ばれ、シュレッダーもクランゲを「たこ焼き」「脳みそ」と呼ぶ漫才を毎回披露。タートルズにも「鉄板頭」と呼ばれ散々です。
さらに日本語吹き替え声優がアドリブを連発。逃げ去る際に「これから八代亜紀のコンサートがあるからな!」「サヨナラ、サヨナラ(淀川長治)」と言い放つ有り様。

2003年アニメ版
通称「新亀」。こちらは日本で2007年に放送。デザインは原作寄せ。
「旧亀」と違って、ラファエロが短気な熱血漢になり、スプリンターは原作通りネズミが変化した設定に。
天敵シュレッダーは、何度も復活するシリーズ史上最も残虐な敵「ユートロム・シュレッダー」になりました。
忍術の使い手カライが、彼の養女として初登場。
協力者の女性エイプリルはレポーターではなく、科学者になっています。

2012年アニメ版
フルCGアニメ化され、デザインはコミカルなものに一新。スプリンターは旧亀同様、人間が変化したものです。
エイプリルがティーンエージャーの女の子として登場しているのが最大の特徴。
スプリンターから修行をうけてくのいちになっています。しかもドナテロとなんかいい仲に。

●平行世界のタートルズ
各種アニメ版のタートルズが「別人」であるのを表現したのが、2009年映画『Turtles Forever』。
旧亀と新亀が、それぞれの世界観からやってきて共闘するスピンオフ作品です。日本では未公開。

マーベルコミックスやDCコミックスと違って、他の作品とコラボする機会があまりない。
そこで、アニメ版タートルズ同士でコラボしちゃいました。
他にも日本OVA版や原作コミック版まで登場。平行世界の亀たち大集合。
ちなみにタートルズとクロスオーバーした作品は、アメコミの「兎用心棒」くらい。
 
●映画版タートルズとヒップホップ
タートルズは「ティーンエージャー」というのがウリの一つ。考え方が幼くて、いたずら好きで、好奇心旺盛。
彼らが好むポップカルチャーの代表がヒップホップ。

スティーブ・バロン監督版の実写映画『ミュータントニンジャタートルズ』三部作からタートルズに欠かせない要素になっていきます。
1990年の劇場版1作目では、M.C.ハマーがテーマソング「This Is What We Do」を担当。また代表曲「Turtle POWER」を歌うのはヒップホップグループのパートナーズ・イン・クライム。
1991年の2作目ではヴァニラ・アイスが「Ninja RAP」を披露。日本の戦国時代に行っちゃう1993年の3作目では、サイケデリック・ダスト&ルース・ブルースが「Turtle Jam」を曲提供。

以降、タートルズといえばヒップホップ、というイメージが定着。特にお調子者のミケランジェロはブレイクダンスを披露し、「MCマイキー」を自称しています。
3DCG化された2007年の『TMNT』ではジム・クラス・ヒーローズが、シリアスなストーリーにあわせた、ハードラップなテーマソング「Shell Shock」を公開。
今回の映画では、イメージソング「Shell Shocked」が著名ラッパーたちによって作られます。
タートルズがエレベーターの中でボイスパーカッションをするシーンも特徴的。日本では作中のシーンにあわせてラップバトルするイベントを行い、RIP SLYMEともコラボ。ヒップホップ文化はタートルズと切り離せないものになりました。
 
 
今回のタートルズは、性格は新亀寄り、映画全体の明るさとエイプリルの設定は旧亀寄り、ヒップホップ文化は映画版寄りの、リブート版です。
2016年6月に、続編を公開予定という発表もすでにでています。
ちょっとだけ出ていたカライは? 重要キャラのクランゲは?
もういっそ、別世界から新生タートルズに、旧亀のサワキチャンとタコ、出てくださいな。

(たまごまご)