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海外ドラマを1話だけ観て、続きを観たくなるかどうかシビアに判定していく「海外ドラマはこれを観ろ」シリーズ。
『オーファン・ブラック 〜暴走遺伝子』を紹介して、だいぶ間が空いてしまったがさぼっていたわけじゃない。
第1話だけは、数十本観たんである。
観てもいいなと思って続きを観たものも数本あった。
でもなー、三話ぐらいまで観ると、うーん、もういいかなぁという感じ。
だったのですが、ようやく「これぞ!」って作品に出会えた。

海外ドラマ『ハンニバル』である。
世界的に有名なシリアルキラー、ハンニバル・レクター博士。
映画『羊たちの沈黙』では牢獄に入っているが、それ以前、逮捕される前の若き精神科医であるレクター博士を描いたのがドラマ『ハンニバル』だ。
傑作!
オープニングの映像だけで、傑作とわかってしまうタイプのドラマがあるが、ドラマ『ハンニバル』はまさにそうだ。

多くの警官が移動している。
部屋、血。
死体。
男が立っている。
目を閉じる。
警官が消える。
血が消える。
死体が消える。
時間が反転したように、後ろ向きに動く。
飛び散って付着した血が剥がれ戻っていく。
家から出る。
立ち止まる。
再生。
出てきた部屋めがけて猛然と走る。
ドアをけやぶる。
階段から降りてくる男を撃つ。撃つ。
「2発の銃弾でトーマス・マーロウの頸静脈と頸動脈を狙い撃つ。
 彼は遠のく意識の中、こちらを見て息絶える。ぼくの見立てだ」
男は、ウィル・グレアム。
高い共感能力を使って、犯罪現場の様子や犯罪者の心理を再現する。

もうひとりの主人公は、もちろんハンニバル・レクター博士。
天才精神科医であり同時に人肉を食べるシリアルキラーだ。
ウィル・グレアムと一緒に連続殺人事件の捜査に協力する。

ハンニバル・レクターを演じるのはマッツ・ミケルセン。
『007 カジノ・ロワイヤル』の悪役で強烈な印象を残し、『偽りなき者』で第65回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞。
ウィル・グレアムを演じるのは、『ジェイン・オースティンの読書会』『ヒステリア』などのヒュー・ダンシー。
FBI捜査官ジャック・クロフォードは、『マン・オブ・スティール』『CSI』のローレンス・フィッシュバーン。
最近の海外ドラマは、へたな映画以上の予算で豪華キャスティング。『ハンニバル』も鉄壁な布陣。

完璧な紳士然として振舞うハンニバル・レクターの正体は、ドラマのなかでは気づかれていない。
気づいているのは、視聴者だけだ。
そのレクターが、じわじわとウィル・グレアムに迫り、支配下に置いて操ろうとする。
事態がどんどん深刻な方向に突き進んでいく。
観ている側は気づいていても、どうしようもない。
「テーブルの下の爆弾を観客は知っているが登場人物は知らない。そのときサスペンスが成立する」
ヒッチコックが得意としていたサスペンス手法が、ダークな人間心理の駆け引きとして持続する。
スリリングで冷酷な展開を、観客は手に汗握りながら見続けるしかないのだ。

無理を承知で盛り上げるドンデン返しではなく、じわじわと迫ってくる大人向けの上質なストーリーテリング。
それを支えるのは、光と影のコントロールされた緻密な映像だ。
凶悪なシーンや、恐怖を盛り上げるシーンの演出も凄いが、ふっと挟まれる静かなシーンが印象に残る。
たとえば、第一話の車から見かけた走る犬に声をかけるシーンや、鹿を正面からとらえたショット。
儀式に使う絵画を思わせる精緻な美が、意識の昏いところを照らす。
そして、倫理観を揺さぶるハードな描写。
残酷シーンは容赦なし。
米ユタ州のテレビ局では、苦情が殺到して放映を中止したほどだ。
鹿の角に刺された全裸美女の死体、追い詰められた犯人が娘の首をかっ斬るシーン。
第一話だけでも、思わず目を塞いでしまう場面が何度もあった。
常識と倫理が屈曲していく映像と展開は、観る者をどこに連れて行くのか。
スカパー!のスターチャンネル(BS10ch)にてシーズン2が、スターチャンネルで2月22日(日)よる9:00から日本初独占放送スタート。
シーズン1が、2/7(土)&2/8(日)全13話を一挙無料放送
海外ドラマを観てみたいと思ってる人、ダークな世界観のドラマが好きな人、大人向けのドラマを観たい人、『羊たちの沈黙』すごかったって人、サスペンスが好きな人、覚悟を決めて観るがよろしい。
(米光一成)

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