8月30日から31日にかけて放送される「24時間テレビ」……の裏番組、「エロは地球を救う」の恒例企画「おっぱい募金」。初日は人が殺到し1時間で整理券配布終了となった。「おっぱい募金」に対して、どうしても素直にはしゃいでばかりではいられない。

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8月30日から31日にかけて放送される、毎年恒例のチャリティー番組「24時間テレビ」──の裏で、伝説の募金企画がすさまじく盛り上がっていた。スカパー!のチャリティー番組「エロは地球を救う」内の企画、「おっぱい募金」。新宿歌舞伎町に総勢9名の〈おっぱい募金ガール〉がやってきた。
「おっぱい募金」は、「エロは地球を救う」が開始した2003年から今に至るまでずっと続いている人気企画。募金をした参加者がAV女優の胸を直接揉む(さわる)ことができる。募金額は定められてはいないが、公式サイトで「1000円以上で」という呼びかけ&お願いがされている。
今回、「エロは地球を救う」の主催はパラダイスチャンネルからスカパーJSATに移ったが、「おっぱい募金」は今年も変わらず行われた。募金を受け付けている日時は8月30日の20時〜26時、8月31日の10時〜19時半までだ。
募金には公的な写真付き身分証が必要(ちなみに18歳未満は募金はできない)。去年は身分証がなかったので、行きたくても行けなかった。「女なら自分の胸でも揉んでおけ」と言われてしまいそうだが、やっぱり人のおっぱいにはロマンがある!
今年、とうとう写真付き身分証をゲット。今年こそ……! 新宿歌舞伎町に向かった。

結果。
揉めませんでした。
受付、終了してました。

どうやら、受付が開始される20時あたりから、会場周辺に人が殺到。会場に人が入れる数が少なく、また整列や整理券の案内もなかったため、現場は大混乱。整理券が配布されるものの、あまりの混雑に警察の指導が入り、受付開始から1時間(つまり、21時くらいの段階)で、今日の受付をすべて終了してしまったのだという。
ま、マジかー。
会場に向かうまでのあいだ、明らかに同じ目的だろうという男性の集団が後ろにいた。彼らは「いやー、ドキドキしてきたね」「会場、そろそろ着くんじゃない?」と楽しげに語り合っていた。私だってウキウキしていた。それなのに……無慈悲すぎる!
整理券は、約1500枚ほど配布されたもよう。会場の外には人だかりができていたが、おそらく整理券を持って待っている人たちと、それから募金をしにやってきたのに終了していて「マジで!?」状態になっている人たちが、だいたい半々くらい(ちなみに、ほぼ全員が男性)。
うーん、揉みたかった!

……と、悔しく思う一方で、正直ちょっとほっとする気持ちがあった。
「おっぱい募金」に対して、「おっぱい! おっぱい!」とウキウキワクワクする自分がいる一方で、どこか引っ掛かりを覚えている自分もいる。

おっぱい募金の主旨は、「STOP!AIDS」。エイズに対する啓蒙や啓発のためのチャリティー企画だ。ここで「どうしてエイズの啓発をするのに、おっぱいが揉まれているんだろう?」という気持ちになってしまう。
また、「1000円」という募金額についても気になる。金額的なハードルが低く、しかも基準の金額が設定されているので、気軽に募金ができるのは素晴らしい。でも、「初対面の女性のおっぱいを揉む」行為が1000円で扱われるのだと考えると、値段をつけてはならないものに値段をつけているような、軽く扱ってはならないものを軽く扱っているような抵抗がある。
もちろん、募金額は上限が定められてはいないので、おっぱいを揉んで募金するのに高いお金を出そうと思えばいくらでも出せる。ただ、2012年の結果を見ると、4000人が募金して総募金額は420万円。ほとんどの人が、1000円しか出していない。
素直にはしゃぎたい。しかし、「これを当たり前に受け止めてしまうのはダメなんじゃないか?」と思ってしまうのだ。

こういう気持ちを漏らすと、「じゃあおっぱいじゃなくてちんちん募金があればいいってこと?」と言ってくる人がいる。そしてこう続ける。「それは需要がない。チャリティー番組なのだから、人が集まる企画にするのは当たり前」。また、こう言う人もいた。「やらない善よりやる偽善。お金が集まっているならそれは正義」。
本当にそうなのだろうか?

まず、後者に対して。最近話題になっている「アイス・バケツ・チャレンジ」がある。難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)への募金キャンペーンで、氷水を頭からかぶるか募金するか、バトンのように指名がつながっていくものだ。もともとは海外で盛り上がっていたが、日本でも芸能人や著名人を中心に広まっている。
このキャンペーンには否定的な意見も多い。「不幸の手紙」的性質を持っていること、募金やALSの周知よりも自分のアピール合戦になってしまっていること……妊婦が氷水をかぶって猛批判を浴びたこともあった。
この「アイス・バケツ・チャレンジ」の一連の流れを見ると、「お金が集まっている(話題になっている)ならそれでOK」とはとても言えない。

そして、前者に対して。「女性には需要があるが、男性に需要はない」というのは大きな間違いだ。
たとえば、女性向けの動画サイト「GIRL'S CH」(リンク先年齢確認あり)には「男子のくすぐりガマン顔いただきます」という人気シリーズがある。これは、さまざまな男子を綿棒や黒い羽、筆などでくすぐり、くすぐったいのを我慢するさまを撮るというすさまじいフェチ動画だ(上半身裸にはなるが、下半身の露出はない)。
もっと過激なものだと、「東京オナニースタイル」というシリーズも。これはそのまま、男子に1人で致してもらうというもので、女性とのカラミはない。ちなみにこれ、それぞれ意外とスタイルに個性が出ていてびっくりする(右腕を腕立て伏せで疲弊させてから事に挑む男性など、つわもの多し)。
男子へ向けられる欲望も、男子への需要も、確かにある。
そもそも、おっぱいや女性の裸が価値を持ち始めたのは「隠されるようになった」明治以降から。江戸時代は今ほどありがたがられていなかったのだという。そうなると、男子の裸に対する評価や価値も、今後どんどん上がっていくかもしれない。

ただ、何を言ったところで、「おっぱい募金」が多くのお金を集め、歌舞伎町に1500人を殺到させたのは揺るがない。私自身、「おっぱい募金」の響きにはしゃいでしまうのも止められないし、「くすぐり募金」の実現はまだまだ遠そうだ。
たぶん複雑な気持ちを抱えたまま、31日は新宿歌舞伎町に向かってしまうのだろう。10時から始まるおっぱい募金、せめてもの言い訳で、1000円以上募金しようと考えながら。
(青柳美帆子)