「昼顔」 オリジナルサウンドトラック
音楽 菅野祐悟
ポニーキャニオンから発売中

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「不倫にゴールはありません
ゴールがないということは終わらせるのも難しいということです」
by紗和(上戸彩)

だそうで、ズルズルと不適切な関係が続いていくドラマ「昼顔」(フジテレビ木曜22時〜)。
8月20放送の6話では、紗和も利佳子(吉瀬美智子)も、昼顔行為が、家族にバレそうになったり、既にバレちゃったりしたため、各々、いったん関係を終わらせようとします。

利佳子の夫・滝川(木下ほうか)の、ねちねちとした追いつめ方も楽しめました。携帯も車のキーも取り上げちゃうし、家に加藤(北村一輝)を呼びつけて、
彼の絵の感想を利佳子に求め、「迫力があって強い」と述べたら、「迫力があって強いのかこの男は」と嫌みを言います。ここ、前回の「いい、いい」に続いて、狙っているとしか思えません。

滝川のエピソードはネタとして楽しめましたが、本気で緊張感漂ったのは、紗和と利佳子と乃里子(伊藤歩)の主婦友の集まり。
乃里子が、夫に好きな人がいるらしい、でも彼は乃里子にぞっこんで、そもそも堅物だから・・・と希望をつないでいる話が出たあと、彼女の携帯に着信があって、紗和がなにげなく待ち受け画面を見て、ショックを受ける場面。
画面は、携帯を映さず、紗和の表情だけを追います。たぶん、北野(斎藤工)の着歴が出たのだろう、と想像させます。
焦った紗和は急に帰ってしまい、残された利佳子も携帯を見て、驚愕の表情。
でも、まだ携帯は映りません。そして、ようやく、携帯が映りますとーーそこには、乃里子と北野のラブラブツーショット待ち受けが!!!
知らずに友達の夫と関係していた、というのはダメージ大きいですよね。
しかも、写真の北野の笑顔がものすごくよくて、名前だけの着歴よりも、ショックはでかいです。
対象をすぐ映さず、しばらく、それを見た俳優の表情を見せるという方法が、今回、ほかにもありました(利佳子が玄関の靴を見て、加藤がいることを知るシーン)。「昼顔」の映像表現は思わせぶりです。

また、自分の知らない相手の生活にショックを覚えるというエピソードは、この回の重要な部分です。
そのあと、紗和の姑(高畑淳子)も、かつて、夫に心変わりされて傷ついたという話を告白するさい、自分には見せたことのない顔を相手の女性には見せていたことが、何よりも彼女を苦しめたというのです。
紗和は、目下、乃里子を苦しめている側ではありますが、紗和の知らない北野と乃里子の歴史や絆があって、それはやっぱり紗和を苦しめることになるのです。完全に自分のものにならない存在って、辛いものなのですねえ。

また、紗和と夫・俊介(鈴木浩介)との関係描写も切なかったです。
夜、並んで寝ていた俊介がキスしようとしたら、顔をそむける紗和。
俊介「おやすみ」
紗和「ホッとした?」
俊介「・・・・・・」
紗和「ううん、おやすみ」
俊介「あの、おれ、ママのこと大事だよ。ただ、毎日同じパジャマ着て、となりに寝てる人に、おれはその・・・。これってどこの家も同じだと思うんだよ」
紗和「うん わかったよ」
俊介「ママに愛情感じてるってことなんだよ。家族になったんだよ、おれたち。
それだけは理解してほしいと思って」
紗和「うん」

俊介久々のアプローチを、紗和がむげに拒否したかと思わせて、「ホッとした?」と言わせる脚本の運びがすごい。
紗和は俊介がしぶしぶだということに気づいていて、それを指摘された俊介は思わず本音を吐露します。
でもそれは、女としての紗和には痛い話でした。
紗和が俊介の気持ちを理解していることも、長年一緒に暮らしている家族だということなのでしょうけれど、なんだか切ないです。同じパジャマ着なきゃいいって問題じゃないのでしょうか? 

女として見てもらえないから、紗和は北野に走ったわけですが、ふと、思ったのは、紗和の趣味一貫してる? ということです。
俊介も北野も、やや受け身な草食系眼鏡キャラです。そしてふたりとも生き物好き。俊介はハムスターに夢中、北野は昆虫に夢中。
紗和は、動物好きのオタクぽい人が好きなのかもしれません。

そう思ったら、利佳子の趣味も似ていました。
夫・滝川も加藤も、どSキャラです。あと、雑誌の編集者だったり画家だったり、文化の香りのする人です。
利佳子は「見てくれのいい男は、幼稚で自分好きばっかりだった。まめに連絡をしてくれる男は誰にでも愛の言葉をささやいてうんざりした。あなた(加藤のこと)は、最低な人格だけど、誰とも似てない」から本気で好きになってしまったというのですが、旦那も最低な人格だけど、誰とも似てない気がします。

紗和も利佳子も、夫も恋人も似た感じの人を選んでしまう。なんとも皮肉なドラマであります。

6話の終わり、
「振り向いてはなりません。
振り向いたらそこは本当の地獄です」と、すっかりおなじみになったひとり語りをする紗和。どうにも、シチュエーションに酔っている感じがしてしまうのですけれど、後半戦、どうなっていくのでしょうか。

最後に、
「パートナーに対して精神的満足度の高い男性のほうが受胎率が高いっていう論文を読んだ」という乃里子の台詞を、気に留めておこうではありませんか、一応。
そして、そんな台詞を語る伊藤歩の、キャミソールとショートパンツからむき出した腕と足、後ろで無造作に結んだヘアスタイルが少女ぽくてかわいいのです。どうやら、北野先生は、紗和もそうだし、見た目が少女っぽい女性を好むようですね。(木俣冬)