原稿執筆時にAmazonでまさかの品切れ発生! いろんな意味で注目の「ReLIFE」

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10万部ごえですってよ、奥さん!

出版不況と呼ばれて久しい昨今。10万部どころか1万部すら届かない書籍がゴロゴロしているのはご承知の通り。コミックでも今や、実績がなければ初版部数が1万部以下というのが普通じゃないでしょうか・・・。そんな中、いきなりどーんと10万部というのに、目を奪われました。

「ReLIFE(リライフ)」です。以前レビューしたスマホ向けマンガサイト「comico」で一番人気の作品で、単行本で出版されるとまさかのブレイク。そりゃ「ワンピース」73巻の200万部に比べると桁が違いますが、オリジナル作品にしてはスマッシュヒットではないでしょうか。

主人公は27歳、独身、仕事なし、彼女なしのバイト生活で、友人から飲み会に誘われるとスーツを着用し、正社員のふりをして参加しちゃうようなダメ人間の海崎新太。ある日、夜明了と名乗る人物に「ある実験」への協力を依頼され、服用すると外見が10歳若返る薬を手渡されます。実験の目的は1年間、17歳の外見のまま高校生活を送ること。久しぶりの高校生活はアクシデントの連続で・・・という青春コメディです。

設定だけ聞くと「これなんてギャルゲ?」という感じですが、今のところ恋愛要素はかなーり薄味な感じ。それよりも「周りが女子高生だらけでドキドキ」「鞄の中に筆記用具が入ってなかった」「間違えて教室にタバコを持ち込んでしまった」「担任の女教師が自分より年下」などの、「体は高校生でも心は社会人な主人公のギャップネタ」が散りばめられていて、あるあるーって感じで読めちゃいます。

また、さすがに10歳ぶんだけ大人ですから、周りの学友すなわち高校生たちの恋や友情の悩みなどが幼く感じちゃうんですよね。本人の中二病的な正義感も相まって、知らず知らずのうちに周囲の人間関係にコミットしていくわけですが、これが全部自分自身にブーメランのように返ってくるという流れなんですよ。他人にアドバイスする自分こそ宙ぶらりんな存在。この辺の構成の上手さが良いですね。

自分も高校に通い、主人公を影でサポートすると言いながら、からかっているようにしか見えない夜明了との「漫才」も魅力の一つ。主人公を囲む仲良しグループも良い味出しています。第一巻では優等生だけどコミュ力が絶望的な女子高生、日代千鶴が登場し、天然っぷりを遺憾なく発揮。LINEで業務連絡のようなメールを送った後、かわいいスタンプを送るギャップなど、良い味出してますね-。

第一巻は18話+特典エピソードの合計19話が収録されています。一方、ウェブ版の連載は毎週土曜日更新で、現在は40話以上が配信済み。第二巻の出版も12月に決定されています。両方を読み比べてもらえるとわかるんですが、縦にスクロールしながら読み進めていくウェブ版が、みごとに両開きのコミックになっていることわかります。コマ割りなどもマンガの文法そのままで、編集プロダクションさん、良い仕事をされていますね。

とはいえ、やっぱりこのマンガのポイントはウェブ版「comico」の事業戦略なしに語れません。ウェブで無料配信して宣伝し、コミック版をファンに購入してもらう、いわゆるF2P(基本プレイ無料のアイテム課金)モデルです。スマホ向けのアプリ版comicoは400万ダウンロードを記録とのことで、およそ2.5%のユーザーが単行本を購入した計算です。アプリをダウンロードしたユーザーが全員、本作のファンというわけではないので、実際の課金率がどれくらいかは不明ですが、これからのマネタイズ方法でしょう。

ウェブ版「comico」もアイドルユニットの