第5話より。金春智子お気に入りの日の出を見るシーン。
テレビアニメ「アオハライド」TOKYO MX:7月7日(月)より毎週月曜 深夜0:00〜、MBS:7月7日(月)より毎週月曜 深夜2:35〜、BS11:7月8日(火)より毎週火曜 深夜0:30〜、GyaO!:7月8日(火)より毎週火曜 深夜1:00〜 ※放送・配信日時は変更になる場合があります
(C)2014 咲坂伊緒/集英社・「アオハライド」製作委員会

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アオハライド」の脚本・金春智子のインタビュー後編です。(前編はこちら)

甲乙つけがたい、「アオハライド」お気に入りシーン

───1話、1胸キュンということで、洸と双葉のキュンとするやりとり等、エピソードで好きなシーンありますか?
金春 すごくいっぱいあるので、決めるのが難しいです(笑)。「unwritten」のドロケーで2人きりになるところや雨宿りのところとかから、もうすでにキュンですから。
───いっぱいあって、甲乙つけがたいんですよね。
金春 はい、本当に。エピソードではないんですが、全体的にセリフの言葉づかいも好きなんです。たとえば、ドロケーのシーンに洸の「結構 だいぶ 嬉しかった」っていうセリフがあって。「結構」と「だいぶ」って矛盾しているみたいだけど、そういう曖昧な言い回しのセリフが、この時の洸の気持ちを絶妙に表しているなと思うんです。他にもそういうセリフがたくさんあって…。原作のコミックス第10巻に同梱されたドラマCDでオリジナルストーリーを書いたんですが、原作のセリフをすごく研究して口調とか言い回しとか、少しでも近くなるようにがんばりました。
───お気に入りのキュンとするシーン(主人公以外でも)をあげるとしたら?
金春 リーダース研修のときにみんなで日の出を見るシーンがすごく好きなんですよ。あとは、悠里と双葉、修子の友情のシーンは全部好きですね。

たずさわってきた少女漫画作品での共通点

───いままで携わった少女漫画モノ、「君に届け」「NANA」などがありますが、「アオハライド」でそれらの経験が生きた、もしくはあえてそれらの作品とはここを変えた、とかありますか?
金春 同じ少女漫画といっても作品によってそれぞれ違うし、登場人物の気持ちも違うし、まったく別ものなので、いつも新しい気持ちで書くようにしています。ただ、あえていうならひとつ経験が生きたことがあります。「君に届け」に、トイレで主人公の爽子に友達ができるシーンがあるのですが、そこまでを原作より早くしようという話になって、いくつかのエピソードを外したんですよ。今回もリーダース研修までを早めようということになって、本当に外しちゃうのが惜しいシーンがいっぱいで、うまくまとめられるか不安だったんですけど、「君に届け」の時にもできたんだから、今回もきっとできる!って自分に言い聞かせていました(笑)。エピソードを組み替えても、みんなの気持ちが繋がるように、とても気をつけました。
───「NANA」では何かありましたか?
金春 「NANA」は、原作がハチとナナの別々のお話から入っているんです。でも、アニメの最初のエピソードでハチとナナが出会わないと、「NANA」という作品がわかってもらいにくいということで、入れ替えをしてプロローグみたいな回を作りました。「アオハライド」の「unwritten」の扱いと少し似ているかもしれませんね。

アニメの脚本家を目指すにいたるまで

───ちなみに金春さんの高校時代で、キュンとしたエピソードなんてありますか?
金春 小さいキュンで、何があったわけでもないんですけど(笑)。ちょっと憧れていた男子がいて、ある日私が夕方ひとりで帰ろうとしていたら、校門の近くですれちがって、「さよなら」って言われたんです。そのときの光景を今も一枚の絵のように覚えています。
───高校時代からアニメの脚本家を目指していたんでしょうか?
金春 私、漫画とかアニメとかは普通に子供のころからみていて、高校生ぐらいになっても見つづけていました。でも、その頃はイギリスやアメリカの児童文学が好きで、大学では児童文学を専門に勉強したいと思っていました。
───それが上智大学の外国語学部という…!
金春あ、違います。思ってはいたものの、児童文学を専攻するような学部は見つからなくて、それで英語で書かれた児童文学の勉強がしたいんだからと、英語を専攻することにしたんです。英語自体も好きだったので。でも、大学で見たアニメの上映会をきっかけに、アニメの作り手を意識するようになったんです。友人たちとアニメを評論したり、作品紹介をしたりするような同人誌を作り始めて、同時に自分もアニメ制作にかかわりたいと思うようになりました。でも、絵は描けないんで、シナリオを書きたいなって思って、シナリオの教室に通い始めたんです。だから英語も児童文学も全然関係なくなったみたいな(笑)。
───大学在学中に通われたんでしょうか?
金春 はい。週に2回、夜2時間ずつ通いました。日本放送作家組合(現在は日本脚本家連盟)がやっていた教室で、私が通ったのはシナリオではなくて、漫画の原作教室でした。私が尊敬していた辻真先先生が教室長で。先生は当時、アニメのシナリオや漫画の原作をいっぱい書かれていたんです。最初の半年は教室形式で基本的なことを習って、そこから研修科に進みました。研修科は何人かのグループで、各人が脚本の習作を書いて指導を受けるみたいな感じでした。
───そこからアニメの脚本家にはどのように?
金春 習作は、辻先生が書かれていた作品の中から1つ選んで、そのシナリオを書く形で、先生の指導で何度も何度も直しを入れました。あるレベルをクリアできたらプロデューサーに見せましょうということになっていて、その結果、番組に採用されたんです。辻先生と出会えたことは、本当に幸運だったと思います。

アニメが好きで、アニメにかかわれることが喜び

───脚本家になって良かったことを聞かせてください。
金春 良かったことは、すごくアニメが好きなのでそれにかかわれること。いろんな作品に出会えましたし、ずっと憧れていた監督さんともお仕事ができました。お仕事をいただいて読んだときに、すごく好きになれるような原作が多くて、それもありがたいです。
───辛いことはありますか?
金春 もともと趣味だったものが仕事になってしまって、単純に楽しめなくなってしまったことですね。たとえば映画とかみても、ここがおかしいな、とか勝手に考えてしまうんです。後は、締め切りがつらいです(笑)。夏休みが終わるのにまだ宿題ができていないみたいな状態が、ずっと続いています。
───「アオハライド」はすべて作業を終えられているんでしょうか?
金春 そうですね、シナリオは、私以外に平見瞠さんと山田由香さんにも書いていただいたんですが、だいぶ前に最終話まで上がりました。今はアフレコに立ち合っています。
───アオハライドを見てくれる方へのメッセージを。
金春 みんなが体験したことがある学校時代のイベントやできごとを背景に、誰も手に入れたことがないような青春が描かれているのが、「アオハライド」の魅力だと思うんです。今、学校に通っている人はもちろん、もう高校時代はずっと昔という人にも、きっと共感できる作品です。性別や年齢をも問わず、いろんな世代の人に見ていただきたいですね。
(小林美姫)