TOKYO IDOL FESTIVAL2014のオープニングを飾ったスマイレージ。ハロー!プロジェクトのグループがTIFに登場したのはおそらく初めて。MCの菊地亜美が「これは事件です」と紹介していたのもそのため。(2014年8月2日撮影)

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レポート1日目から続く
TOKYO IDOL FESTIVAL2日目は、フジテレビ湾岸スタジオ前の「SMILE GARDEN」での「Radio Gymnastics!!!」から始まった。要はラジオ体操をアイドルと一緒にするというプログラムなのだが、これが思いのほか盛り上がる。SMILE GARDENの周辺にいる大勢の人たちが一斉に体操をするさまに、MCの河村唯(アイドリング!!!)はじめステージ上のアイドルたちは感動していた。そもそもその場で飛び跳ねる体操なんかは、ライブ時のファンのジャンプと同じだしね。

さて、私はこの日、会場内の各ステージをまわるためじつに10回以上も移動した。きのうは正味3回だったから3倍以上だ。この日も気温は上昇し、いったい何本、ペットボトルを空けたかわからない。

午前中は、「HOT STAGE」でのしず風&絆〜KIZUNA〜、湾岸スタジオ内の「ENJOY STADIUM」の大森靖子のステージを観に行く。いずれも生で観るのは初めて。しず風&絆は、ロック調の楽曲をガンガン歌って踊る。脚立に乗って、観客に向かってコール&レスポンスをするのもかっこいい。大森靖子は、この夏にフジロックやロックインジャパンといったロックフェスにも出演した、ボーダーレスな存在だ。TIFでも、登場するやステージの前方に突っ伏したり、歌いながら組まれたセットによじ登ったりと、異彩を放っていた。このときは15分ほどの出演だったが、一幕物の芝居を観たような気分になった。

ふたたびHOT STAGEに戻り、昨日予選の行なわれた「めざせHOT STAGE!! 全国TIF盛り上げ女王決定戦」で、観客投票により選ばれたおやゆびプリンセスとGALETTeのステージを観る。北の石川のおやゆびプリンセスは白い衣装、南の福岡のGALETTeはきのうと同じく真っ赤なドレスと対照的だ。両グループとも、メンバーがこのステージに立てたことの感激をあらわにしていた。

続いて単独でライブを行なったNegiccoとDorothy Little Happyも、それぞれ新潟と仙台を拠点に活躍するご当地アイドルだ。いずれも以前から評価の高いグループだが、恥ずかしながら私が観たのはこれが初めて。ドロシーには、その清楚なルックスと激しいダンスとのギャップにすっかり魅せられてしまう。曲終わりで、背中を向けてスカートをひらりとさせるところなど、計算したかのように決まっていた。

NegiccoはMCでの「新潟から車で命がけで来ています」という言葉が印象に残った。先のしず風&絆にしてもそうだが、TIFに参加しているアイドルには、各地を移動しながらライブを続けているグループが目立つ。とりわけキャリア10年以上、しかもメンバーは結成当時のままというNegiccoは、そうした営業によって鍛えられたところが大きいはずだ。

■元モー娘。田中れいなの笑顔からアイドルの真髄に気づく
それにしても、そもそもアイドルって何だろう? きのうからたくさんのアイドルを見てきて、ふと、そんな根本的な疑問が頭をもたげる。しかしこの日の午後、思いがけず一つの答えを見つけた。

それは、LoVendoR(ラベンダー。Rは正確には鏡文字)というグループのステージを観ていたときだった。このグループはロックバンドの形をとり、4人のメンバーのうち2人がギターを、2人がボーカルを務める(ドラムとベースはサポートメンバーが担当)。このボーカルの一人が元モーニング娘。の田中れいなだ。ライブ中、観客から手を振られるたびに、笑顔で振りかえしていた田中。そのリアクションにアイドルらしさを感じた。

そこで私が気づいたのは、アイドルとはやはり「笑顔を見せる仕事」なのではないか、ということだ(いかにも陳腐な答えで恐縮だが)。ロックバンドという形態をとろうと、曲がロックやヒップホップであろうと、笑顔を絶やさないかぎりアイドルはアイドルなのではないか。もちろん、古くはWinkのように、笑顔を見せないアイドルもいないわけではない。しかしそういう存在が出てくるのも、アイドルとは笑顔を見せるものだという前提があってこそだろう。そして、その前提に疑問を抱く人は少ないはずだ。

かつてロックは怒りの音楽であったはずだが、いまやそんな大前提をかざす人はごく少数だと思う。そう考えると、何十年も前提を覆さずにいるアイドルというジャンルの強さを感じずにはいられない。

■でんぱ組.inc、TIF2日目を席巻
SMILE GARDENの進行が予定より10分ほど遅れていたため、次に観ようとしていたHOT STAGEでのでんぱ組.incのステージは途中からしか観られず。会場はおおいに盛り上がっていただけに、私のなかでは乗り遅れた感が残った。そこで、このあと同じ会場でLinQを観てから、でんぱ組が次に出るフジテレビ社屋前のマイナビステージに足を延ばす。

でんぱ組はTIFには一日かぎりの出演だったが、この日の主役とも言いたくなるくらい観客が集まっていた。とくに若いファンが目につく。じつはでんぱ組は昨年のTIFには参加しておらず、今回が2年ぶりの出演だった。この間、CMに出演したり、「AERA」のような一般誌で大きくとりあげられたりと、一般にも知名度は急上昇しつつある。それだけにライブにも勢いを感じた。最後の曲「ノットボッチ…夏」は、ラストに花火の効果音が入り、メンバーたちが空を見上げて締めくくられた。場所がお台場だけに、本当に花火が打ち上がっているのではないかと思わせる、粋な演出だった。

先のHOT STAGEでのでんぱ組とLinQの出番の幕間には、LinQのメンバーとでんぱ組プロデューサーであるもふくちゃんこと福嶋麻衣子が登場し、LinQの9月発売のニューシングルをもふくちゃんがプロデュース、制作にはでんぱ組のメンバーも参加することが発表された。出演するだけでなく、つくり手にも回るアイドルというのが、いかにもいまっぽい。

LinQは今後も特命プロデュースとして、さまざまな人を起用していく方向のようだ。こうしたゆるやかなアイドルのつながり(まさにLinQ=リンク)が生まれつつある背景には、TIFも一役買っているような気がする。

■活動休止を控えていても湿っぽさは一切なく
日没も迫り、そろそろ今年のTIFも終盤に入ったところで、今度は湾岸スタジオの「Girls Factory」に向かう。きのうは長蛇の列だっただけに覚悟して行ったものの、案外すんなり入れた。目当ては、AeLL.のTIFのラストステージだ。AeLL.は来月9月にも活動休止が決まっているので、私にはこれがたぶん見納め。それでも湿っぽいところは一切なく、メンバーたちは終始明るかった。しかし篠崎愛の歌声を聴けなくなるのは残念。

そのあと、AeLL.も出るというので、HOT STAGEでのグランドフィナーレに急ぐ。すでに時間は19時半近く、すっかり辺りは暗くなっていた。ステージにはアイドルが続々登場し、コラボしていた。ひと段落したのちステージ狭しと、この時間まで残ったアイドルが勢ぞろいする。そのなかに、やけに派手な格好をしてる子がいるなと思ったら、吉川友だった。グラビアでも活躍したいという吉川は、グラビアアイドルでもある篠崎愛に宣戦を布告、場は大いに盛り上がる。

TIFというと、主催者にフジテレビが入っているだけに、同局発のグループ・アイドリング!!!の出番が毎年目立つ。今年はほかのグループ10組とコラボ企画を行なっている。グランドフィナーレでももちろん、中心はアイドリング!!!だった。そのメンバーの一人、菊地亜美が、この日のHOT STAGEでのライブ(でんぱ組とLinQが出たあとのステージ)で11月に卒業すると発表したというので驚いた。初期アイドリング!!!のファンだった私は、2期生として入った菊地や河村唯がいまグループの中心になっているのを見て頼もしく思っていたのだが、卒業とは感慨深い。

グランドフィナーレのラストも、アイドリング!!!の曲から「職業:アイドル。」を出演者全員で歌うことに。「アイドルになってみたけど 体を張った仕事ばっかり」という歌詞が、はたしてほかのアイドルに当てはまるかどうかはわからないけれども。最後は、マイクを通さず、全員が生声で「ありがとうございました」で締めくくった。

もっとも、グランドフィナーレのあとも、まだまだSMILE GARDENで「Idol Summer Jamboree:Encore」という後夜祭的ステージがあるので、そちらへすぐに移動。そんな私たちの横を、「受け取ってねー」と言って走っていく女の子たちがいた。何かと思ったら、ライブ告知のチラシを配り出す。青山ハチャメチャハイスクールというグループのメンバーらしい。最後の最後まで自分たちをアピールしようという熱意に、おじさん、ちょっと心を打たれた。

朝9時すぎからほぼぶっ通しでアイドルを見続け、疲れはピークに達しており、ほとんど気力だけで最後の会場にまでたどり着く。ここでもアイドリング!!!メンバーを中心に、アイドルたちが「LOVEマシーン」「睡蓮花」などを披露。会場には、それまで各所に分散していた観客が一挙に集まったのかと思うくらい、まだたくさんの人が残っていた。熱気に包まれたまま、TOKYO IDOL FESTIVAL2014は21時頃、幕を閉じた。

あらためて振り返ると、ああ、アイドルってすばらしい、フェスっていいなと心の底から思える2日間であった。だが会場内を頻繁に移動し、ライブもほとんど立ちっぱなしで観ていたせいで、最後は足が棒になるなど、肉体的にはすっかりクタクタに。来年はもう少しペース配分を考えて回らないとなあ、としみじみ思う37歳の夏だった。
(近藤正高)