こちらは往年の名画「昼顔」
カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン・ソレル /ルイス・ブニュエル監督
紀伊國屋書店

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「エロ教師」「エロパート、エロ主婦」「むっつり眼鏡」
いや、もう、最高ですね。この呼び方。
美しい画面や音楽で素敵に、夫以外の男性との恋を演出している「昼顔〜平日午後3時の恋人たち」(フジテレビ、木曜22時〜)ですが、それを一枚めくったら、エロ主婦、エロ教師、エロ画家たちのお話なのだと、脚本家・井上由美子は割り切って書いているのかもしれません。

7月31日放送の第3話における、「エロパート」の場面は最高に面白かったです。

上戸彩(演じる昼顔妻予備軍・笹本紗和)が、ちょっと気になる理科教師・北野(斎藤工)を追いかけていったかと思うと、いきなり「やらしい、今度はそっちからしようと思ってるんでしょ」などと言い出す。

「そっちから? なにを?」と聞かれ、「キスに決まってるじゃないですか」なんてぶっちゃけ過ぎ。
そこから、「エロ教師」「エロ・パート、エロ主婦」「むっつり眼鏡」と子供の喧嘩のようになり、
「喧嘩でもなんでもいい。優しい言葉なんかいらない。ただこの人と少しでも長くいたい」と、ひとり語り。

冒頭で、上戸彩の「久しぶりに男のひととふたりきりになって舞い上がってしまったのかもしれません」のナレーションが入っていて、そんな舞い上がり主婦の描写が徹底しています。3話では、演出が、ベテラン西谷弘から女性の高(正式にははしごだか)野舞に変わり、文学的エロスを残しつつ、コミカルな部分が加わりました。

上戸彩演じる主婦は、昼顔妻ビギナーなので、まだ初々しく、理科教師とのやりとりがぎこちないのです。
一方、ベテラン昼顔妻・吉瀬美智子演じる滝川利佳子は、虎視眈々と、貧乏画家・加藤(北村一輝)を追いつめていき、あっという間に、カラダの関係に持ち込みます。

そのとき、チラ見えした北村一輝の胸筋のボリュームに、吉瀬さんの胸映しちゃった? と目を疑うほどでした。男も胸、大事だわーと再認識した瞬間です。
で、吉瀬さんは、画を描くための大きな机の上に仰向けに横たわるという、憧れのシチュエーションプレーが展開しました。

そこに至るまでに、セレブ妻は、まず辛抱強く相手を褒め続けます。
夫に内緒で、自分のアトリエに来て、それを画家が言いつけたらどうする?と聞かれると「あなたは卑怯なことをしない」と、あなたを信じてます攻撃。
「胃袋をつかんで男を喜ばせようなんて安っぽい」と否定されても、気にせず、美味しそうな食べ物を差し入れ。なんだかんだ言って結局ガツガツ食べてしまう北村一輝の野良猫っぽさがかわいい。

「私こう見えて、自分から男に迫らないの。男の楽しみを奪いたくないから」というセレブ妻。
積極的にアトリエを訪ね、褒めたり差し入れたり、じっと見つめたりすることは迫るうちには入らないのか! とツッコミたいところですが、最後の攻めは、
男にイニシアチブをとらせるということですね。メモメモ。

吉瀬演じるセレブ妻の立派なところは、かなり奔放に見えながら、実のところ男の人を立てているところです。
「おれが妻子を養ってやってるんだと思いたがるでしょう」と考え「がんばってもらうためにも働かない」と徹底しています。
外に出て働くほうが楽、と考えるセレブ妻。自分は、我慢して、家庭を守っていると思っているようです。
それを「見た目だけのきれいな家で、上辺だけの亭主と暮らしている」と貧乏画家に指摘されてしまうのですが・・・。
セレブ妻、働きたくない、男と遊びたい、それだけなんじゃないか? とも思わなくもありませんしね。

ところで、貧乏画家のわりに、アトリエが広くてかっこいいんですけど、どうなってるんでしょうか。

さて、セレブ妻、うまくやってると思っていますが、売れてる雑誌の編集長である夫(木下ほうか)は、妻と画家の関係をなんとなく感じ取って、画家をクビにしてしまうのです。ドロドロ展開がはじまる予感〜?

「道ならぬ恋をしてかけおちするのが夢」だというセレブ妻・利佳子。
「花子とアン」の蓮子さまの生き方に憧れているのでしょうか。利佳子が、朝ご飯の支度しながら、朝ドラ見てる描写あったら面白いのに。ふふ。

そんなセレブ妻には名台詞がいっぱいです。
「恋愛って前の経験はほとんど役にたたないのよねえ。いつもゼロからやり直し」
「わたしのことを見てくれてる人がいなきゃ。なんのために生きてるかわからないもの」
「出会いは思わせぶりに。別れは残酷に。女の鉄則」
などなど、それはまるで、今日も39℃超えましたという猛暑のようで、一般人が受け入れるには、難易度高いほど。
上戸彩演じるビギナー昼顔妻が、だんだん、こっちに染まってしまうのか気になります。
ビギナーちゃんにもいい台詞あります。「好きじゃないからなんでも言えるんじゃん」。夫(鈴木浩介)となんでも言えちゃうから、仲良し友達夫婦になってしまったわけですね。メモメモ。

ベテラン昼顔、ビギナー昼顔、ふたりは「共犯者」として、いいコンビになってきました。
「あまちゃん」のアキとユイにはじまって、「花子とアン」のはなと蓮子さん、「アナと雪の女王」のアナとエルサ、「思い出のマーニー」の杏奈とマーニー、と時代は女子バディものですから。
「昼顔」も上戸彩と吉瀬美智子のバディものとして楽しめます。

と思ったら、そこに、もうひとり。むっつり眼鏡・理科教師の妻・乃里子(伊藤歩)が登場。セレブとビギナーと3人で七夕のお食事会で、いきなり、各々の秘密を告白大会。いやもう、ほんとうに楽しいドラマです。

乃里子は仕事のデキる女で、准教授に昇進し、職場では旧姓を名乗っています。
理科教師は、一見、がんばってる彼女を応援しているようですが、内心、しょんぼりしてるのはありあり(切ねえー)。だから、上戸彩演じるビギナー昼顔に接近してしまうんですかね。

バリキャリ(死語?)の乃里子は、「ふたりの人間が出会う確立は180億分の1。とんでもなく奇跡的」「出会いは奇跡、大事にしたほうがいいですよ」と言います。
夫との出会いも奇跡なのに、とんでもない奇跡は、その分、大切にしないと、あっという間に消えてしまうようです。短い間のものだからこそ奇跡なのかもしれません。メモメモ。
そういう意味では、むっつり理科教師と、セレブ妻の元カレ・智也(淵上泰史)が、ひょんなことから飲んだり、腕相撲したりする関係になっている奇跡が萌えであります。
1話でいきなり振られた智也ですが、いい人(「花子とアン」における伝助的ポジション)で、視聴者的にはダークホースなんですけどね。
(木俣冬)