テレビアニメ「アオハライド」TOKYO MX:7月7日(月)より毎週月曜 深夜0:00〜、MBS:7月7日(月)より毎週月曜 深夜2:35〜、BS11:7月8日(火)より毎週火曜 深夜0:30〜、GyaO!:7月8日(火)より毎週火曜 深夜1:00〜 ※放送・配信日時は変更になる場合があります
(C)2014 咲坂伊緒/集英社・「アオハライド」製作委員会

写真拡大 (全4枚)

大好評放送中のテレビアニメ「アオハライド」のスタッフへインタビュー第3回目は脚本・金春智子をお届けします。

「アオハライド」はいろんなタイプの青春群像劇

───「アオハライド」アニメ化のお話を聞いたのはいつ頃ですか?
金春 打診だけ先にいただいていて、正式には1年くらい前でしょうか。お話がきたときに、純粋な少女漫画だったんですごく嬉しかったです。小さな心の揺れなどを丁寧に描けるところが、好きなんです。たとえば同じ別冊マーガレットの作品で、「君に届け」も書いていてすごく楽しかったです。
───少女漫画がお好きでいらっしゃるとか?
金春 昔は、本当にいっぱい読んでいました。最近は残念ながらあまり読めていませんが、全体的に漫画は好きです。
───原作はご存知でしたか?
金春 タイトルは知っていて読んでみたいなとは思っていたんですけど、実際には読んでいなかったですね。
───お仕事をすることになって読んでみての感想はいかがですか?
金春 すごく人気があるのがわかるなっていう感じで。キュンキュンする洸と双葉の話以外にも、友情とか兄弟とかいろんなタイプの青春群像劇があっていいなあって思いました。
───原作者の咲坂先生とはどんなことを話されましたか?
金春 アニメのスタッフの打ち合わせが始まった後で、お食事会というか顔合わせ会があったんです。そこで先生とは「お肉、おいしいですね!」ってお肉のお話で盛り上がって(笑)。それまでにもう、シリーズ構成案やプロット、脚本などで、編集の方を通してだいぶやりとりをしていたので、顔合わせの時には脚本面での共通認識はある程度できていた感じだと思います。
───金春さんから先生に聞かれたことはありますか?
金春 顔合わせの時には楽しく雑談ばかりしていた気がしますが、脚本を進めていく間にいろんな質問をしました。例えば、田中先生の料理の腕はどうなのかとか、洸の両親の離婚の理由はなんだったのかとか。
───吉村監督がおっしゃっていましたが(吉村監督インタビュー参照)原作に忠実につくるというスタンスだったそうですね。
金春 はい。とはいっても、漫画と映像との媒体の違いっていうのがあるので、漫画に本当に忠実に作ると、逆に見た人が忠実だという印象をうけないと思うんです。時間が流れていく映像と、文字と絵が一体になって紙の上に描かれている漫画とでは違いますから。

1話に1胸キュンを入れていく

───吉村監督とはどんなことを話されましたか?
金春 打ち合わせの場でお会いして、プロデューサーのみなさんもと一緒にどうアニメ化していくかという、雑談的な話から入ったんですけど、わりと最初のうちに目指しているところは同じだな、と感じました。1話に1胸キュン入れようって監督がおっしゃっていて、それはすごくいいなあって思いました。
───原作に忠実に作るとはいいつつも、アニメにするにあたり、どのようなアレンジを加えたのでしょうか。
金春 全体的な構成のことでいうと、ふたつあります。まず、リーダース研修の前に5人が揃うところを、原作よりも早めようという話になりました。5人が揃って初めて群像劇がスタートするので、それより前の原作を少し削ったんです。削るといっても乱暴に切ってしまうのではなく、シーンやセリフを削っても登場人物の気持ちは繋がっていて、見た人の印象がなるべく同じになるように、ということです。これは私だけの意見ではなく、全員一致でしたね。プロデューサーの武井さんが一番おっしゃっていたかもしれません。
───もうひとつは?
金春 原作には双葉と洸の中学時代のお話、「unwritten」(コミック1巻では1話の前に収録された序章的なお話)があって、読者の方にとってはそれを読んだ上で高校時代がスタートする形になっているんですけど、アニメの第1話を「unwritten」にすると、初めて見る人が中学生の話だと勘違いしかねないと思ったんです。でも「unwritten」の内容を最初の方に知ってもらわないと、あとのキュンがこないんですよね。なので、3話くらいまでの間にちょっとずつ分割して入れているんですよ。分割といっても、ただ分けただけではなく、第3話だったら「視線」をキーワードにするとか、工夫をしました。
───原作では1話の1ページ目に、高校生になった双葉の心の声として振り返りがありましたね。
金春 アニメでは冒頭の「unwritten」の部分を回想として分かるように入れたいなとって思いました。それで「忘れられない時間がある」っていうモノローグから入ったんです。そうすれば、回想だって分かるし、イメージ的にキレイなシーンで思い出の中にあるものとして入れられるなって思って。
───アニメのキャッチとして使われている言葉ですね。
金春 はい。キャッチに使っていいただいて、すごく嬉しかったです。この1行目はシリーズ構成案の時点で書いていたのですが、シンプルなわりに思いつくまでが結構大変だったんですよ(笑)。監督がこの部分の背景を水彩画風になさっていて、すばらしいなと思いました。

少女漫画をアニメにするときの工夫

───原作での「心の声」みたいなものを、あえてキャラクターのセリフにすることもありますよね。
金春 監督がモノローグの多用を避けたいという意見だったんです。シナリオでは原作通りモノローグで書いていても、打ち合わせの時にそこはオンのセリフにしましょうという修正がよく出ましたね。
───監督は心の声は客観的に芝居や状況で見せたいとおっしゃっていました。(インタビュー参照)
金春 監督さんによって、そのあたりの見せ方の違いはありますね。吉村監督とは今回初めてご一緒したのですが、打ち合わせを繰り返すうちに、だんだんやり方がわかってきました。アオハライドの持っている雰囲気を映像でどうやれば表現できるのか、ということをものすごく意識されているなって思いました。
───漫画だとモノローグがいろんなところに飛んでいたりしますよね。
金春 他の作品でもそうですけど、漫画だとページがわかれても一続きのモノローグとして成り立つんですよね。漫画は読者の人が自分のリズムで読めるし、ページを戻ることもできますから。でも、アニメは映像がどんどん流れていくので、必要であれば原作とは位置を変えたりアレンジを入れたりしています。耳で聞いた時にわかりやすくするというのも心掛けています。
───少女漫画は特に心の声が多い、ということもあります。
金春 しかも、心の声がナレーションなのかモノローグなのか分からないこともあるんですよね。アニメの動きや効果音などで補えるものは削ることが多いですが、内容が詩的で言葉自体が心地よいような部分は、長くてもそのまま残すようにしました。そのあたりはシナリオを書くときにひとつひとつ考えて、さらに打ち合わせの席でもみなさんで吟味し直しました。
───金春さんの中でコンテのようなものをイメージしながら書くのでしょうか?
金春 絵コンテほどは細かくないですが、いつも映像とか音の感じとかはイメージしながら書きます。これは他の作品を書くときでも同じですね。原作ものの場合は、とにかく原作を読みこむところからスタートです。
(小林美姫)

後編へ