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唐突ですが、かつて務めていた会社の後輩との会食の席で、こんな質問をされた。あまりに唐突だったので、後輩に、なぜこのような質問をするのかと軽く背景を聞いた。すると、新しく職場で上司になった人が、いわゆる「体育会系」の人だという。(この後輩は、私が思うにいわゆる「文化系」である)

○「お世辞」を言わないと不機嫌になる上司

いままで上司のゴキゲンをとるような態度や、お世辞などを言った経験は、この後輩は一度も(入社後10年弱くらいだろうか?)なかったという。

ところが、この新しい上司というのは、どうにもこうにも「ゴキゲン」をとったり、「お世辞」を言わないと不機嫌になるという。

他の社員はどうしているの? と私が聞くと、他の社員はそこそこ「世辞」「ゴキゲン取り」にも慣れているようで、「まあ、皆さんはうまく扱っています」とのこと。「じゃあ、自分もそこそこうまく扱えばいいじゃない!」と私は言ってみたが、この後輩は「自分にはどうしても、そういうの(ゴキゲン取り)ができない性格なのだという。

で、タイトルにある彼の質問に戻る。

会社で出世するためには、イヤな上司にも「お世辞」の一つくらいは言う必要がありますか?

○わざとらしいお世辞でも喜ぶ人がいる

ここまで背景がわかると、私もアドバイス(というか、ほとんどグチの相談だが)のしようがある。私の答えは「世辞」や「ゴキゲン取り」くらい、安いものだから、とりあえずやっとけ! 以上である。

もっとも、私もどちらかというと、「世辞」や「ゴキゲン取り」は苦手である。「どちらかというと」ではなく、「完全に苦手」である。

幸い、「完全に苦手」なので、たまに、「世辞」や「ゴキゲン取り」をしてみると、誰からみてもわかるくらいに非常にわざとらしくなる。「わざと」やってるのだからしょうがない。

ところがである。そういう、明らかにわざとらしい私の世辞やゴキゲン取りであっても喜ぶ人が、世の中には一定数いるのだ。

幸い、私の直接の上司や先輩などには、これまでいなかった。むしろ、そのような(せいぜい酒の席の酌くらいだが…)ことを、たまにしようとするものなら、「面倒くさいからやめてくれ!」というような方たちが多かった。

今、思うとこれには2通りのタイプがある。

1つは極端に「せっかち」な人。メディア業界に多い。「酒を飲みたければ自分で頼むし、自分で注ぐし」だから、面倒だから気にしないでくれというタイプ。非常にわかりやすい(手のかからない)上司でありがたい。もっとも、私自身もこの手のタイプだ。話は変わるが、たまにタクシーの迎車サービスを利用すると、予約時間にドライバーさんが、所定場所で立って待っていてくれたりする。そして自動ドアなのに、わざわざ外から手で開けてくれたりする。ああいうのは本当に面倒なので、ぜひやめてほしいと思っている。指定場所で車内で普通に待っていてくれて、自動ドアを開けてくれた方が、車番は分かっているので、こちらにも面倒がないと思うのだが。

もう1つのタイプは、気を遣われると、かえって気を遣うタイプの上司だ。こういう上司は自分が酌をされると、相手にも酌を返さないといけなくなると思うのだろう。そういう儀礼的なのはお互いヤボだから、やめましょうや。という発想をする。こちらのタイプの発想も、私にはよく分かる。「せっかち」なのではなく、自分自身が人一倍気をつかう性格だから、「自分が気をつかわれる」という状況に対して自ら気をつかってしまうのである。「偉そうに思われないだろうか?」などと、周囲を気にするタイプである。

○喜ぶ人に対してはやっといて損はない

いずれにしろ、気をつかわれれたり、世辞を言われたりすることを嫌うタイプの人もいれば、反対に、そういうことをされるのが「大好き」なタイプの人もいる。タクシーの迎車サービスも、ドライバーさんが車から降りて、まるでタクシーなのにハイヤーのようなサービスをしないと納得しない人、あるいはそのサービスを心から喜ぶ人が一定数いるから行っているのだろう。

「喜ぶ人に対しては、その程度のこと、とりあえずはやっておけ。やっておいて出世に損はない」「ただし、その程度でみんなが喜ぶとは思うなよ! それだけで出世はできんぞ!」という、私の後輩へのアドバイス(グチの相談)であった。

※写真は本文とは関係ありません

<著者プロフィール>片岡英彦1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。