日本維新の会(以下、維新)の支持率が下落し続けている。共同通信が6月1日・2日に行なった全国電話世論調査では、民主・公明より下の4位に転落。夏の参院選に向け、維新は大きな危機を迎えている。

しかし、維新の“崩壊”は今に始まったことではない。昨年の衆院選前、一刻も早く国政政党の要件を満たしたかった維新は、焦って無名の上に政策も違う現職国会議員を合流させようとした。そして野合との批判をかわすべく、事実上の公開面接という触れ込みで討論会を生中継。その模様に日本中が注目したが、内容はグダグダで、自らネガティブキャンペーンを打ったようなものだった。

当時の様子を、『維新漂流 中田宏は何を見たのか』(集英社インターナショナル)の著者である田崎健太氏が振り返る。

「公開討論会に参加した中田宏(現衆院議員)さんは、当日になっても討論会の段取りなどの詳細を維新側から聞かされていませんでした。山田宏さんなど、ほかの参加者にも同じ対応でした。それでは準備ができないし、出たとこ勝負になって、議論が深まらない。維新はとにかく仕切りが悪い。選挙戦もそうでした。中田さんは応援弁士として各地を回る役割でしたが、どの選挙区に何時に入るかなどという段取りを、維新の選対本部はほとんどできなかった」

そうした状況は選挙期間中も続いたと田崎氏は言う。

「選挙期間に入っても中田さんのスケジュールは決まらず、数日後の演説日程を候補者と直接やりとりして決めていました。当然、新人候補が短時間で有権者を動員できるはずもなく、中田さんが演説しても聴衆が数人だけなんてこともありましたね」

政党における選挙の最高責任者は幹事長。つまり松井一郎氏だ。しかし、彼の評判はすこぶる悪い。前回の衆院選で維新から立候補して落選したA氏が明かす。

「彼は幹事長が持つ権限をむやみに振り回し、候補者たちの人生をメチャクチャにしたA級戦犯ですよ。例えばいったん候補者に与えた選挙区を急に変更し、それまでの選挙活動や事務所費や印刷代などをムダにさせたことも。でもこんなのはまだ序の口です」

A氏は続ける。

「キックバックなどの利権があったかどうかはわかりませんが、新聞折り込み用チラシの印刷を大阪の本部で一括すると急に言い出した。各地元の印刷業者に注文してお金を落とすことも選挙戦の一部なのに。しかも納期を守らないことも多く、ひどいケースでは印刷部数を少なめに間違えて、新聞に折り込むことさえできなかった候補者もいた。それでも印刷代は返さないし謝罪もなかった。さらに、松井さんの意向を無視して独自に印刷物を手配した候補者にはイヤがらせも行なった。みんなの党の候補者とバッティングしない選挙区については両党が互いに推薦し合う協定を結んでいたのに、松井さんが推薦の申請をせず、その候補者の票を意図的に数万票も減らしたんです」

そんな松井氏は選挙後、落選者たちを大阪まで呼びつけたものの、落選に対する謝罪の言葉もなかったという。A氏ははっきりと、「松井さんは維新のがんだし、みんなが恨んでいますよ」と言い切る。

昨年の衆院選前から崩壊が始まっていた維新。支持率も下落し、このまま消えていくのだろうか?

「維新は公務員改革や地方分権、既得権益集団の打破など、大阪では確かな実績を残しているし支持も集めた。今こそ得意分野に特化した政党へと原点回帰すべきです。今の流れで自民党が参院選で勝利して独裁状態になれば、財政問題も社会保障問題も良くなるはずがない。そこで維新が存在価値を発揮できる余地が生まれるのではないかと期待しています」(前出・田崎氏)

いま一度、大阪の市政に集中することしか、維新復活の道はないのかもしれない。

(取材・文/本誌政治局)