織田信長が言ったから? 滋賀県のこんにゃくはただ赤いだけじゃない!

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日本の他、韓国、中国、ミャンマーなどでも食べられている「こんにゃく」。特に日本では、食用として1,000年を越える歴史があると言われている。ところでこのこんにゃく、普通は白や少し黒っぽいねずみ色をしているが、滋賀県の近江八幡付近には赤い色をしたこんにゃくが存在するのだ!

その名もズバリ「赤こんにゃく」! 誕生には諸説あり、派手好きな織田信長がこんにゃくまで赤く染めさせたとか、織田信長の赤い陣羽織にあやかったとか。あるいは、近江商人が全国を行脚している際にアイディアを思いついたなどとも言われるが、はっきりしたことは不明だという。

この赤色はどのようにして付けられているのだろうか。それについて近江八幡観光物産協会に聞いたころ、「唐辛子で染めていると誤解されがちですが、三二酸化鉄という鉄分で染められています」と説明してくれた。三二酸化鉄は酸化した鉄なので、身体に必要な鉄分まで吸収できる健康的にも優れた食品なのだ。

実はこの赤こんにゃく、つい最近まで地元の人しか食べていなかった。地元では昔からこんにゃくは赤色が定番で、冠婚葬祭の食事や学校給食にも登場していた。

近江八幡観光物産協会によると約30〜40年前まで、地元のこんにゃく屋や小さな個人商店では、グレーや白のこんにゃくは売っていなかったという。そのため、60代以上の世代の人の中には、赤以外のこんにゃくがあることはつい最近まで知らなかったという人もいるのだとか。

また、現在でも販売点数においては赤色のものの方が優勢だそうで、地元の居酒屋や小料理屋では、おでんや煮物に入ったこんにゃくも赤いのだというから驚きだ。

いつからこの赤こんにゃくの存在が他県でも知られるようになったかというと、「秘密のケンミンSHOW」などのTVで紹介されてからなんだとか。他のこんにゃくとは一味違う食感や見た目のインパクトなどから注目を集め、今や滋賀県の名物のひとつにまでなっている。

更に最近では、隣の京都でも「おばんざい」の食材として使う店も増えているようだ。先日、女優の松下奈緒さんがTV番組「笑っていいとも」に出演時に、「京都で撮影中に出合った赤こんにゃくにはまっています」とも告白していた。

市内には、100年以上も前から赤こんにゃくを製造している「乃利松食品吉井商店」や、戦後から続く「森商店」などの老舗があるので、食べ比べてそれぞれの店の個性を楽しむのもオツだ。

赤こんにゃくがあると食卓が華やかになるばかりか、様々なおいしい食べ方があるので重宝する。おすすめの調理法は「赤こんにゃくの煮付け」だ。作り方はとっても簡単。まず、ゆでた赤こんにゃくを適当な大きさに切って、だし昆布を下に敷いた鍋に入れて煮る。煮上がったらしょうゆと砂糖を入れてまた煮て、最後に七味唐辛子を入れるだけ。

また、「赤こんにゃくと海藻のサラダ」は、軽くゆでた赤こんにゃくと海藻をあえるだけの簡単レシピ。ふだん料理をしない人でも手軽に作れるし、赤と緑のコントラストが目にも鮮やかなイチオシ料理だ。さらに、どちらも栄養があるので、これから暑くなっていく季節でも、サッパリ食べられて夏バテ解消にも役立つ。

ところで、赤こんにゃく発祥の地である近江八幡市は、滋賀県の中程、琵琶湖東岸に位置する。豊臣秀次が築いた城下町として誕生し、その後、近江商人が活躍する商業都市として発展した。町にはそうした歴史を感じさせる施設が今も各所に点在していて、滋賀県でも有数の人気観光地になっている。

近世に建てられた住宅が残されている「新町通り」や「永原町通り」、かつての城下町の風情がしのばれる「八幡堀沿いの町並み」などは、「近江八幡市八幡伝統的建造物群保存地区」として国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている。加えて、周辺にはヴォーリズ関連の建物なども多く残されている。

また、市内唯一の酒蔵「西勝酒造」が運営する憩いの場「酒游舘」でも、酒の肴(さかな)として赤こんにゃくをつまめる。ちなみに同館では、近江の食材を使った料理や手作りのケーキを楽しめる他、酒造りの歴史が分かる記録ビデオまで観賞できるのだ。

美しい町並みが楽しめる近江八幡市を散歩しながら、インパクト大なおいしい赤こんにゃくを味わってみてはいかがだろうか。