盛岡冷麺や煎餅も自分で作れる! 岩手県「盛岡手づくり村」で伝統工芸三昧

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岩手県の歴史を見てみると、みちのくの英雄アテルイの昔から奥州藤原氏、南部(盛岡)藩と独自の歴史を刻み、個性豊かな文化を育んできたことが分かる。そんな南部の伝統工芸品や民芸品のすべてを「見て、触れて、創る」ことができるのが、「盛岡手づくり村」だ。

この地には縄文時代から豊かな狩猟・漁労社会があったことが知られており、その後もアテルイ(阿弖流為=平安時代初期の蝦夷の軍事指導者)の活躍や平泉の奥州藤原氏の繁栄に象徴されるように、東北地方の中心であり続けてきた。

そんな岩手の地では、人々の営みの中から多彩な工芸品や民芸品が生まれ、今日まで様々な伝統技術が伝えられている。「盛岡手づくり村」はそうした岩手の工芸品や民芸品、食べ物などを紹介する、伝統技術の体験型ミュージアムとなっている。

「ものづくりが好きで、伝統工芸品のいろはを知りたくて来館する人がほとんどですが、中にはかつてアテルイが存在した地ということで、彼のことを知りたくて歴史書を読むうちに、その世界に登場する文化などにも関心を持つようになったという人もいます」(盛岡地域地場産業振興センター・佐々木雷蔵さん)。

施設は「地場産業振興センターゾーン」「手づくり工房ゾーン」「南部曲り屋(まがりや)ゾーン」の3つに別れ、「地場産業振興センターゾーン」には何と3,000種類にも及ぶ土産品が買える「お土産館」の他、展示室や食堂がある。

「南部曲り家ゾーン」には、馬産地に古くから伝わる約200年前の南部曲がり家が移築されており、馬とともに暮らした南部の農家の人たちの生活様式を知ることができる。

ちなみに「曲り屋」とは、母屋と馬屋が一体となった、L字型に曲がった構造の住居。平安時代の終わり頃、岩手の地に配された馬政官・南部光行が、この地方の馬産に力を注(そそ)ぎ、馬にいつでも目が届くようにと、母屋と馬屋を棟続きにしたことで誕生した家である。

「手づくり工房ゾーン」は、南部鉄器や古代型染めなど14の工房が並ぶこのミュージアムの目玉だ。職人の制作の様子を見ることができるだけでなく、その手ほどきを受けて、藍染や陶器など、1作品1,000円〜2,000円程度で自分でオリジナル作品を作ることもできる(4月現在、南部鉄器体験は休止中。再開の時期についてはミュージアムに要問い合わせ)。

岩手を代表する伝統工芸品と言えば、「南部鉄器」を思い浮かべる人も多いだろう。南部鉄器は、溶解した鉄を鋳型(いがた)に流し込んで作る鋳物である。この地の鋳物の歴史は慶長年間(1596年-1615年)に始まったという。江戸時代になって南部藩主が茶道のために湯釜を作らせるようになり、その後、南部鉄瓶が制作されるようになったと伝えられている。

「手づくり工房ゾーン」には、南部鉄器の2つの工房と鉄瓶のつるを作る鍛冶工房が入っている。岩手は砂鉄の産地で、平安時代にはすでに、奥州藤原氏が近江から鋳物師を招いて土地に鋳物技術を根づかせていたとの説もある。こうした古くからの岩手の鉄の文化と技術が、「盛岡手づくり村」の工房に受け継がれているのだ。

南部藩ゆかりのもうひとつの伝統工芸に、「古代型染め」がある。藍色を基調としながら、絶妙なコントラストを醸し出している染め物で、「手づくり工房ゾーン」にはこの技法を編みだした蛭子屋三右衛門を始祖とする、蛭子屋の工房も入っている。古く使用されていた染型紙も、大切に保存されているのだ。

この他、陶芸や繭細工、藁(わら)細工、竹細工といった農村部の暮らしの中から生まれた民芸品の工房もあり、気軽に手作り体験を楽しむことができる。

陶器作りは、湯のみや小鉢などの350g程度の大きさのものであれば1,300円で体験可能(所要時間:60分)。藁細工は60分1,300円で、忍び駒を作ることができる。また、竹細工の小物入れ手作り体験は、大きさによって1,300円〜2,100円で、こちらも所要時間は60分だ。