(写真左から)文化放送「ライオンズナイター」松島茂アナ、ニッポン放送「ショウアップナイター」師岡正雄アナ、TBSラジオ「エキサイトベースボール」新タ悦男アナ。29日の開幕戦で実況マイクを握る3人のアナウンサーに、2013年のプロ野球について熱く語っていただきました。

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3月29日(金)、セ・パ同時開幕する日本プロ野球2013。WBCで活躍した選手は? 大谷・藤浪ら注目ルーキーは? ベテラン選手の復活は? などなど注目点は満載です。そこで昨年に引き続き、誰よりも近い場所で目撃し、多彩な言葉で魅力を伝えるラジオ実況アナウンサーの座談会を実施。TBSラジオ・新タ悦男アナ、文化放送・松島茂アナ、ニッポン放送・師岡正雄アナのお三方に、今年のプロ野球の見どころと注目選手、ラジオナイターの聴きどころを語っていただきます。まずはセ・リーグ編。


【読売ジャイアンツvs広島東洋カープ @東京ドーム】
師岡 カープは宮崎では侍ジャパンを圧倒していましたが、どうですか? 打撃は栗原が戻ってくるのと、あとは、エルドラドでしたっけ?

新タ エルドレッドです。エルドラドだと黄金郷です(笑)

松島 黄金郷!(笑)

師岡 そのエルドレッド(笑)とルイス、この2人の外国人をオープン戦ではずっと起用していますよね。

新タ オープン戦の最後の方ではルイスが何度も盗塁も決めまして、足もいい!

師岡 それとあわせて、若い選手が力を付けているなという印象があります。丸佳浩や松山竜平、セカンドが東出に変わって菊池涼介。あとは堂林がどうなるのかも楽しみですよね。先発ピッチャーは……マエケン筆頭に、野村でしょ。

松島 大竹もいます。

師岡 大竹の復活っていうのも大きいですよね。あとはバリントン。いろんな投手の名前が挙がって、去年の4位から、今年はさらに期待値が高まっているなと思います。

松島 私は、WBCのメンバーにも入った今村に注目しています。ミコライオが最後を締めると思うんですけども、今村がセットアッパーとしてどれだけ奮闘するか。後ろが整備されれば、先発ピッチャーは揃ってきているので期待できますよね。

新タ 巨人は、メンバーだけみたら……ね。だって、日本代表に7人派遣しても、オープン戦優勝しちゃうんですから。層は厚いと思いますね。ピッチャーも、先発6人があっという間に決まるような。

師岡 他にも小山雄輝や笠原将生といった若いピッチャーもいるしね。

新タ そうなんです。結果をメチャクチャ出しているのに、ローテーションに入れないという。他のチームだったらもうバリバリでしょう!っていうのがたくさん。

松島 こける要素が見当たらないですよね。打線もHRは多くはないですが、ちゃんと点が取れる。

師岡 「WBC組がいない間に2WAYの巨人を作りたい」という原監督の考え方がうまくハマってますよね。坂本・長野・阿部がいない中でどんな野球をやるかとなった時に、オープン戦では「つなぐ野球」を徹底したみたいなんですよ。原監督に話を聞いたら、「この(WBC組がいない)メンバーでブンブン振ったら打てませんよ。だったら、いかにつなぐか、細かい野球ができるかだ」と。

松島 オープン戦でも、数字的に見て破壊的に打っていたわけではないのに、首位をキープしていたんですよね。

師岡 やっぱり、去年のシーズン立ち上がりに失敗した時に、バントやセーフティスクイズを絡める細かい野球がいかに大切かっていうのを学んだと思うんです。若い選手っていうのは、そういうことがしっかりできないと認められない。今年から「川相ヘッドコーチ」になったし、そういう部分がうまくハマって、ちょっと死角はないかなぁ。

松島 盤石なのに、次から次と選手が出てきます。ルーキーの菅野もいますもんね。

師岡 菅野は「大人のピッチャー」ですよね。安定感があるピッチャーだなぁと。制球力あるし、ローテーションにも入ってくるでしょう。

新タ 菅野、ホントに1年目の投手じゃないですよね。1年間実戦を離れてもあれだけ力を出せるという。当然能力もありますし、心の強さも感じます。


【東京ヤクルトスワローズ×阪神タイガース @神宮球場】
師岡 ヤクルトっていうのは去年、ここぞという場面でケガ人が続出して、でもCL圏内の3位に入った。そのチームが今年、駒は揃ってきたので、「しっかりつないで1点を取る」というヤクルト野球がよりできるのかな、と。

新タ 各チームからすると、一番嫌な野球をするのがヤクルトですよね。バレンティンがいま肉離れしちゃってますが。

師岡 小川監督も言ってますけども、バレンティン次第、というのはありますよね。

松島 畠山がオープン戦首位打者ですよね。

新タ パパになると違うんですねぇ。

師岡 ね。責任感が出てきてる。

新タ 畠山は去年、一昨年と、自分が打てない時にチームが勝てなかったという部分で、ものすごく責任感を感じていました。そこの部分は取り返したい、という思いが強いでしょうね。

師岡 ヤクルトはそれほど補強をしないチームなんですけども、今年は岩村が入ってきた。これによって、宮本の負担が減るかもしれないし、ファーストミットの準備もできているみたいなので、ファーストも畠山と岩村でできる可能性も出てきた。あとは川端が早く戻ってくれば。

新タ ルーキーの小川というピッチャーも非常にいいですからね。本当に投げ方がノーラン・ライアンそっくりなんですよ。

師岡 ピッチャーは結構充実してますよね。左ピッチャーもいるし、ハマればAクラスを狙えるんじゃないかなぁと思うんですけども。

新タ 一方の阪神は今年、面白いですよね。藤浪というルーキーも入りましたし。

松島 でも、藤川球児が抜けたのは痛いですよね。なかなか埋まる穴ではないですからね。久保康友も候補ですが、タイプは全然違いますからね。

師岡 後ろは厳しいよねぇ。久保自身、抑えの経験はロッテ時代にもないですよね。それで、甲子園のピンチの場面でマウンドに立って、平常心で投げられるのか?

新タ 彼はね、投げると思います。「投げる哲学者」ですから!

師岡 哲学者かぁ(笑)。じゃあ、大丈夫か!

松島 クレバーですよね。牽制とかマウンド裁きも素晴らしいし。あとは、福留や西岡といった戦力補強した面々がどう出るか。特に西岡がかなりリーダーシップを持ってやっている姿が伝わってきます。

師岡 あとは、1点を取る野球になった時に、このメンバーでどうかな? という心配はあります。

新タ それがずっと阪神の課題でしたからね。「ボールが変わって野球が変わったときに、一番対応が遅れた。それを変えなければ勝てない」という声は当の阪神からも聞こえてきました。でも、WBCで、追い込まれた中で鳥谷が盗塁を決めてくれたじゃないですか。鳥谷がチームリーダーとして引っ張ってくれるんじゃないんでしょうか。

師岡 鳥谷あたりが率先して動いてくれると、チームとして面白くなってきますよね。度肝を抜いたもんね、あの盗塁は。もう、アウトだと思ったもん。終わったぁって(笑)。

新タ 「バッティングには波があるけど、盗塁と守備は自分の100%を必ず出せるもの。だからそれを見せていきたい」という話をしていたんですけども、「そこで見せるか!?」ってくらいのものを見せてくれました。感動的でしたよね。

師岡 そういう、WBCの名場面もうまく取り入れながら喋っていければ、聴いている人たちの広がりという部分でもね、大きいですよね。


【中日ドラゴンズ×横浜DeNAベイスターズ @ナゴヤドーム】
松島 中日は……ここ数年の中で、一番の苦境じゃないですか?

新タ オープン戦もわずか4勝。しかもその4勝に、セ・リーグからの勝利がない。全てパ・リーグ。

松島 そして、まさかのオープン戦防御率が12球団中最下位。浅尾が開幕に間に合わず、岩瀬もピリッとせず、吉見投手もケガ明けで、コレは結構キツいんじゃないですか? 外国人も全部横浜に取られちゃいましたし。

新タ だから、開幕カードが因縁の対決ですよね。

師岡 これ、皮肉な開幕カードだよね(笑)。でも、中日は投手陣だけじゃなく、打線もちょっとキツいかな?という印象があります。底力はあるチームだけれども。

松島 例年、なんだかんだ言って必ず上位には来ていたんですが、今年に限ってはちょっと苦しいかなという……期待は、WBCでも活躍した井端ですか。

師岡 でも、井端って元々ああいうプレーをしていましたからね。本当に彼は、相手チームからしたら嫌なバッターで、ファウルで粘るのは当たり前。でも、今まで玄人受けしていた井端があれだけ脚光を浴びるのは嬉しいですよね。あとは、中日はクリーンナップをどうするのか。軸ができなかったかな、っていう感じがあるので。明るい材料は……探そう!

新タ なんだかんだ言っても、ピッチャー陣には地力はありますよね。

松島 それに、谷繁捕手がいますからね。

師岡 個人的には昌! 山本昌に期待しちゃいますね。50歳まで投げて欲しいなぁ。

新タ 希望ですよね。なんなんでしょう? 頑張って欲しいって思っちゃいますもんね。

師岡 そうそう。特に同年代、40歳以上の人間にしてみたら活力の源ですよ。

松島 私、今年41になるんですけども、小学校6年生くらいからプロで投げてましたからね。

師岡 とんでもない話だよね。プロになってから3回年男を迎えた選手ってのは初めてでしょ? 48歳といったら、息子と投げ合ってるようなもんだからね。これはもう『あぶさん』の世界ですよ。何よりも、野球に対して真摯。一生懸命やる姿っていうのは共感を呼ぶと思うし、頑張って欲しいですよね。

松島 一方の横浜は……去年までよりもいいですよね!

新タ 打ちますよ、コレ。ファウルグランドにエキサイティングシートができ、球場も狭くなってバッター有利になってますから。でも三浦投手は泣いてましたけどね。「アウト取れないよ」って。

師岡 でも、打線は楽しみですよね。ラミレスも、この時期からこんなに数字がいいのは初めてなんじゃないかな。例年、スロースターターのラミちゃんが。

新タ ラミレスが痩せているように見えるんですよ。ブランコが加入したことによる危機感みたいなものがあるんでしょうか?

松島 コーラを水に変えたらしいですね。朝からコーラだったのを、朝から水にしたとか。

師岡 もっと前からすればいいのに(笑)。でも、ブランコを見ていて、中日時代からこんなに明るい選手だったかなって。これはラミレス効果ですよね。あと、モーガンっていうのも個性的で明るいじゃないですか。だから、このトリオがうまくハマれば。

松島 荒波もオープン戦打点王ですからね。問題は……ピッチャーですかねぇ。

新タ 思いっきり声低くなりましたけど(笑)。先発が、高崎がケガで開幕には間に合わないんですが、比較的早く戻って来れるみたいですね。

師岡 ルーキーの井納が面白い存在だと評判ですよね。たぶん先発で考えていると思うんですけど、あとは同じくルーキーの三嶋が中継ぎにまわって……国吉は不調なの? ケガ?

新タ 不調です。期待大なんですけどねぇ。三浦投手と一緒にやっていた自主トレの取材にも行ったんですが、そこでは国吉投手の身体の状態は非常に良かったんです。三浦投手も「今年のやる気は違う!」と言っていたんですが、どうもフォームでいつも迷っている部分があるようで、試合になると自分と戦ってしまう時があるみたいですね。

師岡 そうかぁ、そういう悩みが。持ってるモノがいいんだけどねー。

新タ でも、ここ数年やられまくっていたベイスターズが、今年は台風の目になるんじゃないかなっていう期待はあります。

師岡 かき回して欲しいね。そうしないと、野球界が面白くないもんね。


【球場による実況の違い】
新タ 横浜と言えば、私まだ改修したハマスタに行ってないんですけど、新しい放送ブースはいかがですか?

師岡 放送ブースは最上階! 高くなりましたよー。西武ドームよりもちょっと高さを感じますよね。

新タ 京セラドームよりは?

師岡 京セラドームよりはちょっと低いかなぁという感じだけども、上から野球盤を見ているような感覚には違いない。

新タ じゃあ、夏になると、ライトスタンドの向こう側の花火は、すごくキレイに見えるんでしょうね(笑)

師岡 そう! それとね、ニッポン放送のブースからだと、ビルとビルの合間から、横浜港が若干見えるんですよ。そうすると、実況の中にも「海が見える」みたいなフレーズがね(笑)

新タ ラジオとしては、いろんなものが見えたほうが喋りやすいですよね。ドーム球場よりは屋外球場っていろいろ喋りがいがあります。

松島 地方球場とかの実況も風情があって、景色もいろんな表現ができて楽しいですよね。

師岡 野球って基本的には外でやるスポーツだから。今回ハマスタは最上階になったから、視界が広がって、ランドマークタワーってこんなに高かったんだっていうのは余計わかるし。

新タ でも、球種・コースの判断が非常に難しい。

松島 去年までの放送席はグラウンドレベルに近かったから、わかりやすい球場だったんですけどね。その代わり、守備位置の変化なんかはわかりにくかったですけど。

師岡 今年からは、横の変化はわかるけど、縦の変化は難しい。そういうのはもう、モニターでチェックするしかないですよね。あ、あとエレベーターがない! 階段で昇らないといけないから解説の方も大変だと思いますよ。

新タ 地方の球場だと、どこが好きですか?

松島 環境的には新潟(ハードオフ・エコスタジアム新潟)がいいですね。放送席とかの環境も含め、景色もいい! 楽天のKスタの景色も好きですが、秋田の球場も描写するにはいいですよね。

師岡 秋田こまちスタジアム! いいねぇ。描写するの楽しいよね。あとは福島の……

新タ あづま球場! あそこもいいですよね。東北、意外といい球場多いんですよね。

師岡 東北の球場といえば、去年のオールスター第3戦・岩手県営野球場での「ラジオ3局横並び」っていう。

新タ ありましたありました! あれ、すっごく面白かった!(笑)。ひとつの長机に、ここからここまでニッポン放送、ここまでが文化放送、ここまでがTBSっていうね。CM前とかになると、隣のアナウンサーの声が乗っちゃうんですよね。

師岡 柵もなんにも区切りがないから、ちょっと黙ると隣の声が聞こえてくるわけですよ(笑)。Twitterか何かで「TBSで師岡さんの声が聞こえます」って書かれてましたね(笑)。あれは喋りづらかったねぇ。

新タ 喋りづらかったですねぇ。大声合戦みたいになっちゃって。でも、あれも地方ならではですよね。

(パ・リーグ編へ続く)
(オグマナオト)