おおたさんの著書「女子校という選択」(日経プレミアシリーズ)。「男子校という選択」「中学受験という選択」と合わせて読むと中等教育が立体的に見えてくる。

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「日本で女子校が多く創立された時期は三つあります。それは明治維新後、第一次世界大戦後、関東大震災後といずれも大変革期です」と近著「女子校という選択」が評判の育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんはいう。

しかし変革期に女子校が増えてきたのには理由があるのだろうか。

「世の中を本当に変えるにはリーダーを変えるだけでなく、草の根から変わっていかないと駄目なんです。でも男性はボス猿を変えるだけのタテ型の組織を作るのが得意で根本的な変革を起こすのは苦手です」

「それに対して女性は横のネットワークを作っていく共感力に長けているので、草の根から抜本的に社会が変わらなければいけない時に力を発揮することが多いんです」

男性向けに制度設計されてきた日本の一般的な教育と異なり、女性の特性を生かしながら社会で活躍できるよう工夫が施されている女子校の存在感も自然高まるという。

「辛酸なめ子さんは著書の『女子校育ち』の中で、女子校出身者には共通の特徴があるといっていますが、日本未来の党の党首の嘉田由紀子さん(埼玉県立熊谷女子高卒)はいかにも女子校出身の『臭い』がします。今回の選挙で嘉田さんが注目を集めたのも時代に求められたからかも知れません」

ところが1970年以降、女子校の数は減る一方にあるという。その背景には少子化による 志願者数の減少を食い止めるためという経営上の理由の他、1999年に施行された男女共同参画社会基本法の影響も大きいと言われるが、おおたさんはその傾向に強い警鐘を鳴らす。

「『学校は社会の縮図であるべきだから』という単純な理由で共学校化を進める風潮には危険性を感じます。共学校の方が男女別学よりも『ジェンダー・バイアス』がかかって、却って男女の役割を固定化してしまうことさえあります」

「ジェンダー・バイアス」は「男の子はより男の子らしく、女の子はより女の子らしくあれ」という暗黙のプレッシャーだ。共学校では「女の子だから理数系は苦手」というような不要な先入印象が植え付けられてしまう傾向が強いという調査結果もあるという。では女の子は女子校に通った方がいいのだろうか。

「必ずしもそうとは言えません。お子さんは一人ひとり個性がありますから向き不向きがあります。そこを見極めるのが大切ですね」

「教育は一つの正解をめざすものではありません。お子さんに多様な個性があるのですから、学校にも多様な選択肢があってしかるべきです。先行き不透明な現在、女子校は教育の多様性に欠かせない重要な選択肢であると思います」

でも先行き不透明な中、「箱入りのお嬢様」に育てあげるのは却ってリスクになるのでは?

「女子校の先生方と話をしていると、皆さん折り目正しく、服装も言葉遣いもきちんとされていて、本当に上品なんですけれども、皆一皮剥けば『肝っ玉母さん』が出てきそうな雰囲気があるんです。そういう腹の坐っている部分も生徒たちにきちんと伝播されていくので大丈夫です」

おおたさんの著書『女子校という選択』には、女子校の歴史や共学校との違いの他、実際に30校以上の女子校を取材した個別のリポートや有名女子校の卒業生である著名人のインタビューも掲載されているので、これから娘の教育や進学について真剣に考えたいという人は是非参考にしてみては。
(鶴賀太郎)