大分が押し込まれている試合でよく見られるのが、カウンターが成功する可能性が低いときに、上手くボールを運んでキープする時間をつくるシーンだ。キープすべき場面ではキープするし、フィニッシュまで行けそうなら迷わずトライする。そのあたりはスイッチャーの宮沢の手綱さばきによるものが大きいが、判断に間違いが少ない。ディフェンスでも同じく、不利な場面では無理に奪いにいかず、きっちり遅らせる。そうした使い分けが上手いため、23試合で無失点試合が半分以上の14試合となっている要因だ。

■新たなエネルギー

これは指揮官の指導の賜物だろう。田坂監督は、サッカーを理論的に考え、チームの規律も徹底している。緻密なトレーニングのなかで、今の大分の姿を作っていった。J1昇格を狙うチームはと成長したのは、「全員攻撃・全員守備」のコンセプトが、チーム全体に浸透しているからだ。これにはいつ誰が出場してもおかしくない競争原理が働いていることで、チームが活性化している。

レギュラーが固定せず、今もなお「毎日がセレクションのつもりで練習しなさい」と叱咤し、新たなスターが生まれやすい環境をつくっている点も評価できる。序盤戦は木島悠、キム・チャンフン、その後は為田大貴といった新戦力の台頭が顕著だった。後半戦もこれまで出場機会に恵まれなかった選手にチャンスを与え、コンバートなどで新たな能力を引き出し、チームを活性化することを考えている。チームの総合力が問われる終盤戦において、必ずモノを言うはずだ。

23節時点で首位は出来過ぎだが、これまでのように5試合をひと区切りとして、3勝1分1敗のペースで勝点10を獲得していけば、自動昇格の2位以内は十分射程圏内だ。

■著者プロフィール

柚野真也

1974年、大分県大分市生まれ。大学卒業後、専門紙の記者として活動、その後、フリーランスのライターとして活動を開始。九州のスポーツをメインに「週刊サッカーダイジェスト」「J’sGOAL」などサッカー専門媒体や、「フットサルナビ」「Fリーグモバイル」などフットサル専門媒体にも執筆。