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テキスト系妄想メディア「ワラパッパ (WARAPAPPA )」より

ドラマのラブストーリーは必ずエンディングを迎える。ハッピーエンドだろうがバッドエンドだろうが、「Fin」マークを最後に出せば、そのドラマはそこで終わりなのだ。でも、どうだろう? 毎週楽しみにしていたドラマが「Fin」マーク1つで片付けられてしまうなんて…、あまりにも淋しい。数学における「Q.E.D」マークのように、大好きなラブストーリーを「Fin」マークなんかで終わらせて欲しくない。もっと見たい、もっと知りたい、そして、もっと夢中になりたい。大好きなドラマほど、そんな気持ちになって当然だろう。

終わりそうで終わらない珠玉のラブストーリー。
僕たちはそういうドラマを待っているのだ。

例えば、こんなドラマがあったとする。



「抱きしめられたい!」。若い男女5人が織りなす恋愛群像劇である。ゆう子とあつ子、2人の女性の間で揺れるケンスケ。会社の後輩で生意気な新人類、純。アメリカ帰りの自由人、鉄平。コンクリートジャングルでアーバンライフを送る5人の、それぞれの事情と感情が錯綜する中、色々あって最終的にあつ子とケンスケが結ばれる。

というストーリーだったとすると、最終回のラストシーンはきっとこんなシーンだろう。



紆余曲折あった上での結婚。一見ハッピーエンド風だが、果たして本当にそれで良かったのだろうか? 

終わりそうで終わらない、ネバーエンディングなラブストーリーの場合「Fin」マークはこうなる。

■「からの?」



結婚からの、新たな展開を予感させる。

ケンスケとの結婚を決めたものの、実は自由人鉄平に心を惹かれていたあつ子。アメリカに旅立つ鉄平を追ってウエディングドレスのまま空港へ向かってしまう。そんなあつ子を応援する純。バイクの後ろにあつ子を乗せて空港まで走る。ハイウエイを疾走する純のバイク、風を受けてはためくウエディングドレス。

「抱きしめられたい!」第2章、アメリカ編の始まりである。


■「というのは嘘で?」



全部嘘だった、という衝撃の展開。

今までのストーリーを一旦ゼロベースに戻して、もう1度最初から始めてみたい。そんな制作サイドの気持ちが見え隠れする。僕たち視聴者はそういう嘘も受け入れて、再び「抱きしめられたい!」の世界に浸れることを喜ばないといけない。


■「by the way」



2人の結婚はとりあえず分かった。ところで、あの件はどうなった? というアナザーストーリーへの橋渡しである。

第3話「愛は拳で決める」で、あつ子を巡りカフェバーで殴り合ったケンスケと鉄平。派手にやりあった結果、店は滅茶苦茶に。その後、2人は和解して前のような関係に戻るが、忘れかけていた頃にカフェバーの店長から訴えられてしまう。ケンスケとあつ子の結婚というハッピーエンドの後、突如浮上する損害賠償問題。「抱きしめられたい」はまさかの法廷劇へと展開していく。

■「実はボブが…」



第7話「愛が動くその時」で、ケンスケが勤める会社のニューヨーク支社から出張で来日したボブさん。ケンスケたちはいつものカフェバーで歓迎会を開くが、その夜、ボブとあつ子は深酒の勢いでベッドを共にしてしまう。軽い過ちと思っていたあつ子だったが、2人の結婚を知ったボブがニューヨークから戻って来て…。

■「第1話へ」



最終回まで来て振り出しに戻る形式である。

再び第1話から始まる男女5人の恋愛群像劇。同じ出来事を反復し最終的にケンスケとあつ子は結ばれる。結ばれたら第1話に戻って男女5人の恋愛群像劇が繰り広げられて。最終的に「抱きしめられたい!」は無限ループに突入。


■「Hola!」



今までのストーリーと全く関係のないスペイン語の挨拶。なぜ「抱きしめられたい!」は最終回にスペイン語で「こんにちは!」と言ったのか? 視聴者が混乱していると翌週からキャスト全員がスペイン人のスペイン版「抱きしめられたい!」が始まってしまう。それはとても情熱的な内容で…。


■「タカさ〜ん、チェック!」



ねるとん紅鯨団※1恒例のタカさんチェックを最終回の段階でかけられてしまう。一旦、男女に振り分けられてから、タカさんが「タカさ〜ん、チェック!」と言って女性陣をチェック。その後、男性陣と女性陣がご対面。アピールタイム、フリータイムを経て運命の告白タイムへ。ケンスケはあつ子に「よろしくお願いします」と頭を下げるが、そこに純の「ちょっと待った!」コールがかかってしまい…。

※1「ねるとん紅鯨団」
1980年代後半から90年代にかけて人気を博したテレビ番組。とんねるずが司会する集団お見合い企画である。
当時はねるとん紅鯨団を真似た集団お見合いのバスツアーが多く開催された。僕も1回だけ友人(鎌田君)と2人でねるとんバスツアーに参加した経験がある。富士急ハイランドでご対面、アピールタイム、フリータイムなどを楽しんだ後、僕と友人(鎌田君)は同じ人に告白。結果、2人とも「ごめんなさい」されてしまった。


■「フリーダイヤル」



ここからはコールセンターでオペレーターたちが対応。フリーダイヤルに電話をかければ、ケンスケたちのその後を教えてくれるシステムだ。


■「6人目はあなた!?」



ラストシーンで新たなメンバー募集のお知らせが。最終回でアメリカに旅立ってしまった鉄平の代役を一般オーディションで決めるのだ。「抱きしめられたい!」のセカンドシーズンは、2代目鉄平を決めるオーディション番組へと変貌を遂げる。


■「BACK TO THE FUTURE」



最後に「BACK TO THE FUTURE」のロゴが表示されて、タイムスリップ・ラブストーリーとして新たな展開を見せる。あの有名人のまさかのカメオ出演も?


■「シンボルマーク」



プリンスの改名後の名前を番組のラストで発表。しかし、新しい名前はシンボルマークだけ。どう発音したらいいのか分からないので、結局「元プリンス(The Artist Formerly Known As Prince)」と呼ぶことになって…。




僕たちは現実を生きている。好きな女性を巡ってカフェバーで殴り合ったり、旅立つ相手を追って空港まで急いだり、トラックに突っ込んで「僕は死にません」と言ってみたり、そんな劇的な出来事はほとんどない。そして、日常生活にはドラマのような「Fin」マークもない。あるとしたら人生の最後を迎える時かもしれないが、その時が来たら、「からの?」と言ってもらえたら本望だ。

という訳で、最後はW浅野の決め台詞で締めさせていただきます。



ありがとうございました。

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この記事の元ブログ: 終わらないラブストーリーを考える 〜Never ending love story〜


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