早熟の天才から大器晩成へ。いよいよ100パーセントのブランドン・ベラが見られるか

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21日(日・現地時間)、コロラド州ブルームフィールドの1stバンク・センターで開催されるUFC LIVE「Vera vs Jones」は、UFCにとって始めてVersusで中継されるイベントとなる。Versusといえば、07年よりズッファのセカンド・ブランド=WEC の中継を行なってきたTV局だが、今年は2度のUFC中継が予定されている。

メインはブランドン・ベラ×ジョン・ジョンズの対戦。05年10月にUFCデビューを飾ったベラは、06年11月までに4連勝を果たし、通算8戦のキャリアでヘビー級のタイトルコンテンダーの地位を手にした。

しかし、直後に当時のマネージャーとズッファの間で、マネー闘争に入り、11ヶ月間実戦の場から離れてしまう。実戦の場に戻ったベラは、ティム・シルビア、ファブリシオ・ベルドゥムに連敗を喫し、ライトヘビー級転向を決意した。

UFCデビュー同時から、ヘビー級としては小柄だが、ライトヘビー級に落とせば、ロブ・カーマン譲りの打撃、ロイド・アービン系の柔術を武器に、すぐにもトップの一角を占めるようになる――という評価を得ていたベラ。MMAアライアンスという自らのチームを率いるようになった彼は、この決定により即、真のトップファイターに肩を並べる存在になるものと思われていた。

しかし、キース・ジャーディンにスプリットで判定負け、さらにランディ・クートゥアーにも微妙な判定ながら敗北を喫し、ライトヘビー級通算戦績は3勝2 敗。期待されたような成果は挙げられていない。

「ジャーディン戦は勉強になった。ランディとの試合はフィニッシュに行かなかったから負けた。テイクダウンを防ぐ時間が多すぎて(印象が悪く)判定負けになった。本来、僕はスタンドの打撃が中心でも、ガードワークを恐れず一本を狙うスタイルだった。次の試合では、自分がどこまで能力を持っているか、全てを使いきるファイトにしたい」と、早熟の天才はポテンシャルの全てをジョンズ戦で発揮しようとしている。

一方、昨年12月のTUF10フィナーレでマット・ハミルに垂直に落とすエルボーを繰り出し、反則負けが宣言されたジョンズ。キャリア10戦目で初黒星を経験したが、反則負けの要因となったエルボーも勢い余って打ち落ろした印象が強く、試合内容では終始ハミルを圧倒していた。

グレコローマン系の豪快なスローイングとテイクダウン、さらにはジャンピングニーやバックフィストという見栄えのある打撃、常に観客を沸かせてきた22歳のジョンズを、グレッグ・ジャクソンMMAのチームメイトであるラシャド・エヴァンズは「才能の塊」と評価する。

前回の反則負けに関しも、本人は「リラックスして戦うことを覚えた」と強くなる糧とし、消化している。そのジョンズに対し、「ワールドクラスのファイターと戦った経験がない。この試合が初めて。そういう目に見えないプレッシャーの下で戦うことになる」と指摘するベラ。

確かにジョンズは序盤の勢いで押し切ってきた試合が多いことは否めないが、デビュー戦→キャリアの浅い者同士の対戦→経験豊かなファイターとの対戦という順を踏まなければ、誰もステップアップは図れない。よって、トップになるために通過しないといけない初めての壁が、今回のベラとの対戦ということになる。

最近のUFCでは、ローカルファイトで連勝し、そのままオクタゴン・デビューというファイターが増えつつあるが、ベラがUFCデビューを果たした頃は、米国やその他の国にも国際戦を行なう中堅プロモーションが存在し、経験を積んだ者同士の対戦がビッグステージ以外でも頻繁に行なわれていた。

そんな中堅プロのトップ対決を制して、ようやくUFCに辿りつくというパターンが主流だった時代に、UFC参戦を果たしたベラ。彼の経験のなかに、UFC でキャリアの浅い者同士が対戦する構図は存在しない。