29日付のレキップ紙によると、現在リーグ・アンで首位を行くマルセイユのエリック・ゲレツ監督がシーズン終了後に辞任することが正式な事実となった。監督はすでに数週間前からマルセイユを去る決意を固めていた模様だが、去就をめぐる騒ぎが大きくなり、優勝争いを前に事態を沈静化させるため、発表に踏み切ったと見られる。

 監督は年末から年明けにかけてクラブと契約延長の話し合いを行なったが、その際、主要株主であるロベール・ルイ=ドレフュス氏が「2位以内に入ること」を延長の条件と考えていることを知らされた。その間、チームは3位から5位にあった。また同じころマルセイユの結果に疑問を抱く同氏のインタビューがレキップ紙に掲載された。ゲレツ監督は、その時点で「信頼を得られていない」と思ったという。

 マルセイユはそれから快進撃をつづけ、4月12 日にはついに首位を奪取するに至ったが、「シーズン終了時点での結果」にこだわるルイ=ドレフュス氏からは何の申し出もなく、ゲレツ氏は「これ以上、待てない」と判断し、クラブを去ることを決めたという。「5分も話し合えばカタがつく問題だったのに残念だ。私にも誇りがある」とこれまでチームを見事に再建させたにもかかわらず、自分を信頼しない相手に対してプライドを見せつけた結果となった。

 16年ぶりのタイトル目前でその最大の功労者が辞意を表明したことにより、サポーターからルイ=ドレフュス氏への批判が高まるのは必至だ。南仏のプロヴァンス紙は、ディウフ会長も今回の顛末で嫌気がさし、辞任する可能性が高いと報じている。また一説によると、ディウフ会長の辞意を知ったゲレツ監督が残留の意思を捨てたとも言われる。

 ゲレツ監督は選手からも敬愛されている。ゴールした選手が監督に抱きつくシーンもたびたび見られたほどで、父と子のような関係が想像できる。選手たちのショックは計り知れないが、優勝をめざすモチベーションが下がるとは考えにくく、むしろ「親分を男にする」との意気込みで結束が高まることすらあり得る。ただし心理的な動揺を受けていないはずはなく、ちょっとしたことでプレーに影響がでないとも限らない。クラブに対する信頼が崩れたのも大きなマイナスだ。