AMDからAM5プラットフォームの「Ryzen 7 7700X3D」とAM4プラットフォームの「Ryzen 7 5800X3D 10th Anniversary Edition」が登場した。どちらもアーキテクチャーとしては旧世代の「X3D」を採用するモデルになる。最新世代のRyzen 7 9800X3DやRyzen 7 7700、Ryzen 7 5800Xを交えて、その実力をチェックしていこう。

Ryzen 7 7700X3DとRyzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionの性能をテストする

7800X3Dからクロックダウンした7700X3D

Ryzen 7 7700X3Dは、AMDの前世代のZen 4アーキテクチャと3D V-Cacheを搭載する「X3D」シリーズの新モデルとして登場した。2023年4月発売のRyzen 7 7800X3Dから動作クロックをダウンしたもの。おさらい的に紹介しておくと、3D V-Cacheは大容量3次キャッシュのことで、これが多くのゲームのフレームレート向上に効くことから、ゲーマーに超人気のCPUになっている。

7700X3Dは、7800X3Dと同じく1世代3D V-Cacheだ。CPUダイの上に3D V-Cacheをかぶせるように搭載するため熱がこもりやすく、高クロック化が難しいという弱点を持っている。その点、Ryzen 9000シリーズの第2世代3D V-Cacheでは、CPUダイの下に搭載することで冷却効率が高まり、クロックを高めやすくなった。Ryzen 7 9800X3Dがゲーミング最強と言われたのは、この改良が大きい。

ただ、7700X3Dは低クロックゆえに低消費電力、低発熱が期待できるところ。検証ではゲームでの性能に加えて、電力や温度にも注目していく。近いモデルと合わせ、スペックは以下の表にまとめた。

Ryzen 7 7700X3Dのパッケージ。CPUクーラーは付属しない



Ryzen 7 7700X3Dの表と裏。ソケットAM5対応だ

Ryzen 7 7700X3DのCPU-Z。7800X3Dと同じく96MBの大容量3次キャッシュを搭載

Ryzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionについては、AM4プラットフォーム10周年を記念して2022年発売のRyzen 7 5800X3Dが復活した形だ。再生産にあたって現在の製造環境に合わせた再設計が行われているというが、スペック上はオリジナルの5800X3Dと変わらない。なお、10周年記念ロゴ入りの専用パッケージが採用され、Carbice製カーボンナノチューブを利用した熱伝導シート「Ice Pad」が付属するのは、オリジナル版とは異なるところだ。

Ryzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionのパッケージ。CPUクーラーは付属しない



Ryzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionの表と裏。ソケットAM4対応

Carbiceの熱伝導シート「Ice Pad」が付属する

Ryzen 7 5800X3D 10th Anniversary EditionのCPU-Z。こちらも96MBの3次キャッシュを備える

7700X3Dと5800X3Dは9800X3Dにどこまで迫れるか

ここからは、ベンチマークを実行していこう。CPUの設定や検証環境は以下の通りだ。

まずは、CGレンダリングでシンプルにCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」、「Cinebench 2026」とPCの基本的な性能を測定する「PCMark 10」を見ていこう。

Cinebench 2024

Cinebench 2026

PCMark 10

CinebenchのマルチコアやMultiple Threadsを見ると、7700X3Dは最大クロックが4.5GHzと低いこともあって、最大5.3GHzの7700よりもスコアが低くなっている。5800X3Dは5800Xに比べて最大クロックが200MHz低いだけなので、スコアの差は小さい。PCMark 10でもクロックの低さから、7700X3Dは7700よりも低いスコアとなった。5800X3Dは、Office系のProductivityのスコアが高かったことで、かろうじて5800Xを上回っている。

続いて、最重要と言える実ゲームを試そう。まずは軽めのゲームから「オーバーウォッチ」と「マーベル・ライバルズ」を実行する。オーバーウォッチは、botマッチを実行した際のフレームレート、マーベル・ライバルズはゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれCapFrameXで計測。GPU負荷が低くCPUの性能差が出やすい低画質設定と、GPU負荷が高くCPUの差が比較的出にくい最高画質設定の2種類でテストしている。解像度はフルHDに統一した。

オーバーウォッチ

マーベル・ライバルズ

ここではX3Dが圧倒的な強さを見せた。オーバーウォッチの低画質を見ると7700X3Dは、7700の約1.45倍ものフレームレートを出している。5800X3Dは、5800Xの1.25倍のフレームレートだ。ただ、ここで注目したいのは7700と5800X3Dのフレームレートが近いこと。5800X3DがAM4プラットフォームでゲームに強いCPUなのは確かだが、アーキテクチャーは古く、メモリもDDR4なのでDDR5より帯域は狭くなる。その現実が見える結果だ。マーベル・ライバルズもほぼ同じ傾向となった。

続いて重量級ゲームとして「モンスターハンターワイルズ」、「サイバーパンク2077」、「Forza Horizon 6」を試そう。モンスターハンターワイルズはベースキャンプの一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077とForza Horizon 6はゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれCapFrameXで計測した。

モンスターハンターワイルズ

サイバーパンク2077

Forza Horizon 6

似たような傾向になったが、モンスターハンターワイルズやサイバーパンク2077はCPU負荷も比較的高いゲームなのもあって5800X3Dを7700が上回った。ここでも世代差が見える部分だ。その7700を7700X3Dが大きく上回っており、3D V-Cacheの強さがよく分かる。ただ、それを9800X3Dがさらに上回った。ゲームにおける9800X3Dの強さが改めて証明された形だ。

クリエイティブ系のテストも実行する。まずは実際にAdobeのPhotoshopとLightroom Classicでさまざまな画像処理を行う「Procyon Photo Editing Benchmark」から。

Procyon Photo Editing Benchmark

Lightroom Classicを使用し、主にCPUで処理される「Batch Processing」は、3D V-Cacheが効くようでX3Dのスコアが良好だ。その一方でPhotoshopを使用し、CPUとGPUの両方を使う「Image Retouching」では、7700X3Dと7700、5800X3Dと5800Xはほとんど同じスコアとなった。

続いて、エンコードアプリの「HandBrake」を使って、約3分の4K動画ファイルをH.264とH.265のフルHDにエンコードするのにかかった時間を計測した。

HandBrake エンコード

CPUをフルに使う処理なので、動作クロックが効きやすい。そのため、7700X3Dよりも7700のほうが短時間でエンコードが完了。5800X3Dよりも5800Xのほうがわずかに短い時間で処理を終えた。3D V-Cacheが活きない処理では、クロックが低い1世代3D V-Cacheの弱点が出てしまう。それを克服した9800X3Dの汎用性の高さがここでも見える結果となった。

最後に温度や消費電力、動作クロックをチェックしておこう。まずは、システム全体の消費電力から。アイドル時は起動10分後、そのほかはベンチマーク実行時の最大値だ。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用した。

消費電力

7700X3Dは動作クロックが低いので7700よりも低消費電力となった。5800X3Dも低クロックなので5800Xよりもわずかに消費電力は少ない。

続いて、Cinebench 2024のマルチコアを10分間動作させたときのCPU温度、動作クロック、消費電力の推移を確認しよう。「HWiNFO Pro」を使用し、CPU温度は「CPU (Tctl/Tdie)」の値、動作クロックは「Average Effective Clock」、CPU単体の消費電力は「CPU Package Power」の値だ。室温は25℃。

CPU温度の推移

CPU動作クロックの推移

CPU消費電力の推移

温度は9800X3Dが平均80.6℃、7700X3Dが平均74.7℃、7700が平均66.3℃、5800X3Dが平均86.7℃、5800Xが平均75.5℃だ。7700X3D、5800X3Dは熱がこもりやすい1世代3D V-Cacheなので7700や5800Xよりも平均温度は高くなった。しかし、7700X3Dは今回のX3D内ではもっとも温度が低く、扱いやすいCPUなのは確か。

動作クロックについては、9800X3Dが5.08GHz前後、7700X3Dが4.4GHz前後、7700が4.91GHz前後、5800X3Dが4.21GHz前後、5800Xが4.6GHzでの推移となった。それぞれのクロック差がそのまま出ている形だ。

消費電力については、9800X3Dと7700X3Dは電力リミットのPPTは162Wだが、前者は141W前後、後者は72W前後で推移、7700はPPTが88Wでほぼその上限で推移、5800X3Dと5800Xの電力リミットは142Wだが、前者は101W前後、後者は121W前後での推移となった。

7700X3Dは価格が重要、5800X3DはAM4の強化にアリ

Ryzen 7 7700X3Dは、7700に比べて明確にゲーミング性能は高いので重要なのは価格だろう。発売時は6万3,980円前後だったが、それから何度か4万5,800円前後まで下がる時期があった。2026年8月上旬で格上の9800X3Dが6万円前後、7700が5万3,800円前後なので、4万5,800円前後で手に入るチャンスがあれば7700X3Dはかなりお得感がある。今後の価格推移を見守りたい。

Ryzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionは、6万7,000円前後だ。AM4向けのCPUとしては高価であり、同じ8コアの5800Xが3万6,000円前後、5700Xが3万5,000円前後なのでコスパはあまりよくない。ただし、DDR5メモリが高騰している現在、すでにAM4プラットフォームを使っていて、旧世代のCPUからゲーム性能向上を狙ったアップグレードを行いたいならアリだろう。

新たにゲーミングPCを組みたい場合は、AM4プラットフォームは微妙なところだ。安価なDDR4メモリを使えるのはよいが、AM5プラットフォームは2029年まで製品供給を行うと発表しており、将来性が高い。それだけにRyzen 7 7700X3Dの価格が下がることを期待したいところだ。