(※写真はイメージです/PIXTA)

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子どもや孫のためなら、お金を使うことを惜しまないという人もいるでしょう。ただ、誕生日や進学祝い、外食代などが重なれば、年金生活の家計への影響も大きくなります。家族との時間を大切にしたいという気持ちから、いつの間にか援助を続けること自体が習慣になっている場合もあります。

「今度はランドセルをお願い」増えていった息子一家への支出

「お母さん、来週の日曜日って空いてる?」

長男の健太さん(仮名・45歳)から連絡が来ると、由美子さん(仮名・73歳)はいつも予定を空けていました。

由美子さんは夫を5年前に亡くし、一人暮らし。年金は月約23万円、預貯金は約1,900万円あります。住宅ローンを完済したマンションに住んでおり、日々の生活に大きな不安はありませんでした。

健太さんは妻と、小学生の息子、幼稚園に通う娘との4人暮らし。車で40分ほどの距離に住んでいます。孫が生まれてから、由美子さんは誕生日やクリスマスのプレゼントを欠かさず贈ってきました。

外食へ行けば会計を済ませ、帰り際には孫にお小遣いを渡します。入学時には学習机を買い、家族旅行へ一緒に出かけた際には宿泊費の大半を負担しました。

「孫に使うお金ですから、もったいないとは思いませんでした。喜んでいる顔を見るのがうれしかったんです」

ただ、次第に健太さん側から具体的な希望を伝えられることが増えていきました。

「入学祝い、ランドセルをお願いしてもいい?」

「習い事を始めるから、最初の道具だけ出してもらえないかな」

ランドセルには約7万円、習い事の道具には約5万円を支払いました。

由美子さんが家計簿を見返すと、息子一家のための支出が年間40万〜50万円に達した年もありました。

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、60歳以上の人が「優先的にお金を使いたいもの」として、「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げた割合は25.8%でした。子や孫への支出を大切に考える高齢者は一定数います。

転機になったのは、由美子さんが自宅のリフォームを検討したことでした。浴室と洗面所を改修すると、約150万円かかる見積もりです。さらに、数年以内にはエアコンや給湯器の交換も必要になりそうでした。

そんな時、健太さんから連絡がありました。

「今度、家族で北海道に行こうと思ってるんだ。お母さんも一緒にどう? 孫も喜ぶよ」

由美子さんが参加すると答えると、健太さんは続けました。

「ホテル代、今回も少しお願いしていい?」

由美子さんは、その場で返事をしませんでした。

「今回は自分たちで払って」援助をやめて気づいたこと

数日後、由美子さんは健太さんに電話をしました。

「旅行には行かないことにする。それと、これからは大きなお金は出せないから」

健太さんは驚きました。

「何かあったの?」

「何もないよ。でも、これから自分に必要なお金も残しておきたいの」

由美子さんは、それまでの支出を責めるつもりはありませんでした。ただ、孫のためならと使い続けてきた結果、自分の住まいや将来に使うお金まで後回しにしかけていたことが気になったのです。

その後、息子一家からの連絡は少し減りました。以前なら月に2、3回は食事に誘われていましたが、数ヵ月に一度になることもあります。

由美子さん自身も、最初は気になりました。

「お金を出さなくなったから、誘われなくなったのかなと思ったこともあります」

ただ、孫が成長して休日に習い事や友達との予定が増えたこともあり、援助をやめたことだけが原因なのかは分かりません。由美子さんは、息子一家から連絡が来るのを待つこともやめました。

以前から興味があった市民講座に申し込み、そこで知り合った友人と月に一度、日帰りで出かけています。浴室のリフォームも予定どおり行いました。

「孫に使っていたお金を全部自分に使おうと思ったわけではありません。ただ、自分が何をしたいかを先に考えるようになりました」

孫の誕生日には今もプレゼントを贈ります。ただし予算を決め、高額なものを頼まれた場合は、息子夫婦にも負担してもらいます。外食でも、毎回由美子さんが支払うことはなくなりました。

内閣府の同調査では、「自分や配偶者あるいはパートナーの医療・介護の費用」を優先的にお金を使いたい項目として挙げた人は47.5%、「趣味やレジャー(旅行等)の費用」は32.4%でした。高齢期のお金には、家族への支援だけでなく、自分自身の健康や暮らしに備える役割もあります。

家族への支出を減らすことが、そのまま家族との関係を遠ざけるとは限りません。一方、会う機会を失いたくないという気持ちから、無理な援助を続ける必要もありません。

由美子さんは、孫との関係を断ったわけではなく、お金を介さずに付き合える形へ少しずつ変えています。自分の暮らしを優先する時間が増えたことで、家族と会う日も、以前より気負わず楽しめるようになりました。