次回 8月5日(水)よる10時から第5話を放送 日本テレビ系水曜ドラマ(毎週水曜よる10時放送)「ファーストクライ 母子救命救急班」。

数々の名作ドラマレビュー記事を手掛ける「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平氏は、7月29日(水)に放送した第4話をどう見たのか?第4話の場面写真とともに紹介する。

(※以下、第4話のネタバレを含みます)

本作は、富裕層向け“セレブ病院”の秘密裏に設立された「母子救命救急班」を舞台に、行き場をなくした妊婦たちを救い、新たな命の産声=ファーストクライを守るために奔走する、産科医療の最前線を描いたドラマだ。

今回のテーマは、医療、そして出産の現場で“奇跡”をどう描くか――ではなかっただろうか。

医療ドラマ、ましてや出産を題材にした作品において、“奇跡”を描くことは非常に難しい。ドラマチックな奇跡を描かなければ物語に抑揚は生まれないし、一方で奇跡ばかりが起これば、「現実の医療現場はそんなに甘くない」というリアリティーを損なってしまう。その絶妙なバランスこそ、医療ドラマが最も向き合わなければならない課題なのである。

その点において、第4話が迎えた結末は衝撃的だった。

取りこぼされそうになっていた若いカップルと、セレブ側で5人目の子を身ごもった妊婦。その双方が母子ともに大きなリスクを抱えていたにもかかわらず、一方は高度な術式“EXIT”によって一度は命をつなぐものの、赤ちゃんは数時間後に亡くなってしまう。もう一方は、“多産DV”という過酷な現実の中で、中絶という選択を下した。

通常のストーリーテリングであれば、どちらも“奇跡”とは到底呼び難い結末である。

それは、これまで本作が掲げてきた“見やすさ”や“わかりやすさ”を覆すような痛切な展開であり、視聴者の間でも賛否が巻き起こるに違いないラストだった。

しかし、だからこそ作品の真摯さが浮き彫りになったと言えよう。出産の現場において、すべてのリスクがゼロになるような都合の良いドラマチックは描かない。その覚悟を作品自らが示した回であり、ただ奇跡が起きて感動に浸るだけではない、このドラマの奥深さを改めて提示した回でもあった。

そして、作品が提示した“奇跡”とは、命が助かることだけではなかった。

優れているのは、どんなリスクを抱えた母体でも、母子ともに健康に生まれることだけを“奇跡”とするのではなく、命を宿したその現実と真正面から向き合うこと、そして、その機会を与えられること自体が決して当たり前ではなく、“奇跡”なのだという新たな視点を提示した点である。

本作は、それぞれの妊婦が自身の胎内に宿った命と真正面から向き合い、限られた時間ではあっても、その命に実際に触れることができたこと、そして、その経験がこれからの人生を生きる力になったことにこそ、“奇跡”を見いだしたのである。

タイトルは『ファーストクライ』。新たな命の産声を意味する。

しかし、このドラマが描こうとしているのは、産声そのものだけではない。子どもと向き合い、命と向き合い、その経験が残された人の未来を支えていく。その営みそのものこそが、『ファーストクライ』というタイトルに込められた意味なのではないだろうか。

また今回、個人的に最も感心したのが、新生児科医・富永(濱正悟)の存在である。

徹底したリアリストである彼は、「出産の現場で奇跡は起こらない」と断言し、患者に対して残酷なまでにリスクを突きつける。しかし、その冷徹さが結果的に双方の妊婦を救うことになった。

重い病を抱えた子を授かった若いカップルには、現実と向き合う覚悟を与え、“多産DV”に苦しむ妊婦には、「産まなければならない」という呪縛から解放されるきっかけを与えたのである。彼のブレない言動が、二つのケースで全く異なる“救い”として作用した。そのコントラストが実に見事で美しかった。

そして最大の美しさは、このエピソードが「母子救命救急班」という、利益度外視の仕組みを持つ病院だからこそ成立した“奇跡”だったということだ。

通常の産科であれば、若いカップルは子どもを抱くことすらかなわず、中絶という道を選ばざるを得なかったかもしれない。けれど、同じ傷を抱えた二人をこれ以上追い込まず、絶望させず、たとえ短い時間であっても我が子を抱くことができた。その時間を与えられたことこそ、このドラマだからこそ描くことのできた“奇跡”だったのである。

最後に余談だが、やはり脚本を手掛ける浜田秀哉氏の筆致は今回も見事だ。

重い病を抱えた子を救うための高度な術式“EXIT”を、単なる医療説明で終わらせることなく、具体的なシミュレーションや準備・練習の過程そのものを物語へ自然に組み込んでみせた。高度な医療を視聴者へ分かりやすく伝えながら、それ自体をドラマとして成立させ、さらに今回のテーマである“奇跡”を際立たせる装置にまで昇華していたのである。

また、前回ラストで提示された、光井(比嘉愛未)の母親が倉田(山村紅葉)なのではないかという謎の扱い方もうまかった。単なる肩透かしで終わらせるのではなく、光井自身のアイデンティティーを巡る物語として、新たな興味を持続させる展開へとつなげてみせた。

次回はどんな命と向き合うことになるのか。エンターテインメントとして楽しみながら、同時に命について考えさせられる。そんな作品であり続けてくれることを期待したい。

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▼次回の第5話 あらすじはこちら
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<番組概要>

脚本:浜田秀哉
音楽:菅野祐悟
演出:大谷太郎 上田迅(ザ・ワークス)
チーフプロデューサー:松本京子
シニアプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:森有紗 
        山田勇人 遠藤光貴 大垣一穂(ザ・ワークス)
主題歌:JUJU「夏蝉」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作協力: ザ・ワークス
製作著作: 日本テレビ

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