高井康行弁護士(資料写真)

東京地裁は16日、ライブドア(LD)元社長の堀江貴文被告に、懲役2年6月を言い渡した。これまで証券取引法違反では執行猶予が付くことが多く、実刑判決は極めて異例なため、ネット上はもちろん、各メディアでは様々な評価が飛び交っている。この判決を当事者はどう受け止めたのか。東京地検特捜部時代はリクルート事件などを担当し、現在は堀江被告の主任弁護人を務める高井康行弁護士に聞いた。


── 今回の判決をどう評価していますか。

 基本的にこの裁判の核心部分は、主に宮内証言の信用性をどう評価するかにかかっていたのですが、今回の判決が宮内証言の信用性の判断を誤っていると言わざるを得ない。判決においても、検察官の捜査が厳正公平さを欠いていることは認められています。我々の解釈としては、事実上の司法取引が宮内さんたちと検察の間で行われたことを判決は断定はしていないけれども、暗黙の内にしていると認めざるを得ない。そこまで認めておきながら、結果的に宮内証言の信用性を認める。しかも、それによって実刑にする。そういうことは、極めて遺憾である。

 裁判所も、事実上の司法取引が宮内さんたちの証言に影響を与えている可能性は否定しきれないと考えていると思うけれども、宮内証言の信用性をいう時に、必ず「信用性のある熊谷証言と一致している」「信用性のある丸山証言と一致している」、あるいは「メールの記載と一致している」と、いちいち宮内証言以外の証言、物証をひいて、宮内証言の信用性を論じている。そうすると結局は、熊谷証言とか丸山証言と一致する範囲で宮内証言は信用性があると言っていると思うのだけれど、どの範囲で一致しているのかは判決文を見ていないので、正確なことは分からない。(取材時点では、裁判所から弁護側に判決文が渡されていない)

 問題は、何を根拠に熊谷証言とか丸山証言に信用性があると裁判所が判断したのかになるのだけれども、その点はまだ判決文を見ていないので、詳しいことは分からない。今後、詳しい判決文が出るだろうから、それを見て、今言った問題点を検討する。控訴審では主張すべきところは主張し、さらに立証を尽くすところは尽くしていく。

 実刑の理由として、LD株を売って140億円の資金が被告人の手元に入ったことを挙げているが、それは極めて不当だ。裁判所も、140億円を得るために本件犯行をしたと認定していないですね。検察官はそういうふうに主張したけれども、「その検察官の主張は認められない」とわざわざ否定しているわけですから。しかし、140億円が入っていることは確かなので、量刑の事情としては考慮すると言っているのだけれど、裁判所が認定しているようにたまたま入っているわけだから、それを理由にして実刑にするというのは、極めて失当だと思います。

── 判決において「無罪を主張しており、反省の情がない」と指摘していましたね。

 反省の情がないから実刑だというなら、法廷で誰も「事実が違う」と言えなくなってしまいます。たとえば痴漢で間違って起訴された場合、無実だと言って、通れば無実だになるけれども、通らなければ実刑になってしまうと思えば、リスクが大きすぎて、本来無実の人が無実の主張ができなくなってしまいますよね。そしたら、もう裁判でなくなりますよね、そんなの。そこが一番の問題と思いますよ。

── もし逮捕されたら、やっていなくても罪を認めてしまったほうがいいというメッセージと受け取る人もいそうですね。

 そうですよね。そういうように受け止める人がいても、まったく不思議じゃないですよ。とにかく起訴されたら、(起訴事実が)真実かどうかは関係なく、認めなさいよというメッセージと受け止める人がいても、おかしくないですよね。