侍ジャパン「4番打者ばかり」を揃えた“歴代最強打線”の死角…元巨人4番が指摘する打撃と守備に不安が残る“2人のキーパーソン”の名前、「長嶋巨人」悪夢復活の懸念
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)日本代表の強化試合が終了した。3月2日のオリックス戦は3対4で敗れたものの、翌3日の阪神戦は5対4で勝利を収めた。侍ジャパンの“実力”を分析するため、この稿ではオリックス戦に注目してみたい。野球評論家の広澤克実氏は「井端弘和監督の“やりたい野球”が鮮明に見えてきた印象を持ちました」と振り返る。
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広澤氏が注目するのは打線だ。改めてオリックス戦のスタメンを振り返ってみよう。
1番:近藤健介、2番:大谷翔平、3番:鈴木誠也、4番:村上宗隆、5番:吉田正尚、6番:佐藤輝明、7番:牧秀悟、8番:源田壮亮、9番:坂本誠志郎──。

阪神戦では1番と2番が入れ替わって大谷、近藤の順になったほか、岡本和真が5番でスタメンに選ばれた。岡本は3月1日の夜に帰国したことから2日のオリックス戦は出場しなかったのだ。
「井端監督が長打力を重視したのは一目瞭然です。まさに『打ち勝って世界一を目指す』という姿勢を明確にしました。ただ気になるのは、WBCが短期決戦という点です。打者の場合、一度不調に陥ってしまうと、マイナス思考ばかりになって萎縮します。長いシーズンなら復調のきっかけを掴むこともありますが、WBCの場合は不調に苦しんでいるうちに終わっていたということが起こり得ます。そういう観点からスタメンを厳しくチェックすると、率直に申し上げて村上くんと牧くんの2人を“不安材料”として指摘せざるを得ません」(広澤氏)
ご記憶の方も多いだろうが、2023年のWBCで村上は不調に苦しんだ。1次ラウンドでは12打数2安打の打率1割6分7厘でホームランは0本だったのだ。
村上宗隆の打撃フォーム
準々決勝のイタリア戦は3打数で2塁打を2本放って復調の萌しを掴んだかに見えた。ところが準決勝のメキシコ戦では3打席連続三振を含む4打数無安打。5打席目の二塁打でチームは逆転サヨナラの劇的な勝利を収めたが、本調子でないのは誰の目にも明らかだった。
決勝戦ではホームランを放ったが、通算成績は26打数6安打の打率2割3分1厘。日本を代表する主砲の1人としては、期待に応えたとは言いがたい結果に終わってしまった。
「村上くんは2024年10月に骨折が判明し、昨年の3月には上半身のコンディション不良でリハビリを余儀なくされました。その後も苦しい状況が続き、終盤の56試合で22本のホームランを放って存在感を発揮したとはいえ、全盛期の成績とは相当な開きのあるシーズンで終わったわけです。私にとって打撃フォームが完璧だと思う強打者はバリー・ボンズ、金本知憲、前田智徳の3氏です。もしよかったら、この3氏と村上くんのフォームを両足のスタンスに注目して比べてみてください。村上くんが三冠王を獲り、シーズン56本塁打を放った2022年のフォームは素晴らしく、3氏と同じようにスタンスが狭いはずです。ところが今の村上くんはスタンスが広くなっています」(同・広澤氏)
牧秀悟の守備力
広澤氏も現役の時は「気がつくとスタンスが広くなるタイプだったので修正には苦労しました」と振り返る。
村上が2022年のフォームを取り戻せば一安心だ。しかし修正できずにWBCの本戦を迎えたとなると、23年のWBCのように不調で苦しむかもしれない。
一方、広澤氏は牧秀悟の場合、守備に注目する。スポーツメディアが大きく報じた通り、牧は守備でミスを犯してしまった。
日本代表の先発だった菊池雄星は初回に2点を取られ、さらに1アウトで一、二塁のピンチが続いていた。
しかし菊地は西野真弘を内野ゴロに打ち取り、三塁の佐藤輝明が捕球して二塁に投げたが、二塁の牧秀悟が一塁に悪送球し、3点目を献上してしまった。
牧は“井端ジャパン”の常連組として知られている。しかし打撃ほど守備は評価されていないため、DHでの出場も少なくなかった。
「牧くんは、やはり守備力が卓越しているとは言えません。日本代表は東京ドームの予選ならプレッシャーもなく勝ち進むことができるでしょう。しかし準々決勝になると1点を争う厳しい試合になる可能性も充分にあります。その時、痛恨のエラーで点を与えてしまうと、精神的なショックで打撃にも悪影響が及ぶことがあるのです」(同・広澤氏)
野村監督の戦術
今回の日本代表を見ていると、広澤氏は野村克也氏の言葉を思い出すという。
「ヤクルトでプレーしていた時、野村監督が『外国人ピッチャーとどう戦うか』と戦術を教えてくれたことがあります。ポイントは2つあり、1つはランナーが盗塁の構えをチラチラと見せるなど、なるべく投手が打者以外に意識を向けざるを得ないよう、細かな動きを繰り返すこと。もう1つは選球眼を発揮してボール球に手を出さないこと。こうすると相当な数の外国人投手はイライラするようになり、投球に集中できなくなります。甘い球が来たところを狙い撃ちにするというわけです」(同・広澤氏)
野村監督が外国人投手に効果的だと考えていた戦術は、まさに「精神的に揺さぶる」ということだった。
「果たして今回のスタメンで、投手を精神的に揺さぶれる選手が何人いるだろうかと思います。大谷くんなら盗塁で揺さぶれますが、井端監督もケガが怖くて盗塁のサインは出せないでしょう。私は周東佑京くんを先発起用したり、もっと守備力の高い選手を抜擢したりするなど、投打のバランスも考慮すべきではないかと思います。要するに1番から9番まで、それぞれの打順における基本的な役割をしっかりこなせる選手でスタメンを組んだほうが、かえって日本代表の底力は発揮されるのではないでしょうか?」(同・広澤氏)
長嶋巨人との類似点
1994年のオフにヤクルトから移籍した広澤氏は、95年から99年まで巨人に在籍した。当時の長嶋茂雄監督は30億円の大補強を敢行し、以下のようなスタメンを組んだ。
3番:松井秀喜、4番:落合博満、5番:ジャック・ハウエル、6番:広澤克実、7番:シェーン・マック──。
4番打者を5人並べるという“ドリーム・チーム”。ところが、これが機能しなかったのは50代以上のプロ野球ファンならよくご存知だろう。
日本代表が同じ轍を踏まないか──WBCの要チェックポイントだと言えそうだ。
デイリー新潮編集部
