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国の「介護保険制度」を活用して入れる介護施設には、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老人保健施設)のほかに、医療依存度が高い方のための「介護療養型医療施設(療養病床)」が存在していました。ただし、“とある理由”から、同施設は2024年3月で廃止に……。その背景には、高齢社会における「お金」とケアの不均衡がありました。高島亜沙美氏著、西智弘氏監修の書籍『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』(KADOKAWA)より、同施設が廃止となった理由と変わりゆく高齢者施設のシビアな現状についてみていきましょう。

医療ケア前提の介護保険施設「介護療養型医療施設(療養病床)」

漢字ばかりで、わかるようなわからないような名前ですね。介護療養型医療施設は、医療度の高い人が入る場所となっています。専門的にいうと、医療区分2・3に該当する人ってやつです。

[図表]医療区分 出典:厚生労働省 療養用病棟入院基本料 医療区分(*)

* https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001e933-att/2r9852000001e9i6.pdf(2025年5月参照)

なんだかよくわかりませんが、なんとなく1日のほとんどをベッド上で過ごしていて、回復の見込みはなさそうで、看護師の配置が24時間確実に必要そうなイメージでよいかと思います。同じ寝たきりでも、特養の利用者とは介護ではなく医療への依存度が違います。24時間持続の点滴や気管切開に伴うチューブの管理、人工呼吸器管理、頻回な痰の吸引など、です。その管理や機器の使い方を誤ると、最悪の場合には患者が死に至るものと言うと伝わりやすいかもしれません。

ひどい話になりますが、おむつ交換を1日しなくても患者さんは死にません。陰部やおしりがただれるかもしれませんが。けれども、24時間の持続点滴や人工呼吸器を1日のあいだに誰も操作しないなんてことは、どの医療機関、施設でもあり得ません。資格を有するものが必ず管理、操作をしているはずです。医療機器を管理し操作できる人がそばにいないと、それだけ患者さんにつながっていても意味がないんです。機器のアラームの取り扱いをはじめ、最終的な判断は人間になりますからね。

そして、ここにいる人の多くはリハビリとかレクリエーションとか、人間の社会的なつながりを維持するための関わりがそんなに大事ではありません。なぜなら、そういう状態じゃないからです。それよりも、いのちのほうが大事というスタンスなんです。

介護療養型医療施設は2024年3月で廃止に

ここで、残念なお知らせです。こちらの介護療養型医療施設は2024年3月で廃止されました。実は、わたしの勤める病院にもこの病床があったんですが、2023年に廃止となり、他の病棟単位の扱いになりました。

高齢社会においては、医療依存度の高い高齢者はそのケアに大変お金がかかります。非情な言い方になりますが、そういう高齢者が回復して家で生活できるようになることは、まずありません。そこを問題視した国の方針なのでしょう。

「介護医療院」となったことで、自己負担額が増額

かわりに、介護医療院という施設の運用をはじめています。療養病床と比べて、自己負担額が増額していることに気づかれた方もいるかと思います。ケアはタダではなく、お金がかかるものでサービスの一種であるという価値観の変容のただ中に、わたしたちはいるのかもしれません

高齢社会を迎え数十年が経ち、積極的な治療が本人の人生や生活のために必ずしもならないことを実感しはじめた人たちが、積極的な治療を選択しなくなったことも理由に挙げられると思います。

医療処置であれば、(75歳以上の高齢者なら)国が8〜9割払ってくれますが、日々の食事やケアとなると、これは医療の範疇外になります。生活ですから。生活にかかるお金は、自分で払ってねというスタンスなのでしょう。国が声を大にして叫ぶことはまずないでしょうが、介護を受けるような状態になったのは、自助が足りなかったせいなんじゃない?というメッセージが、自己負担額の増加に結びついているのではないかと考えてしまいます。栄養管理、運動、睡眠など、若いうちからできること、実はたくさんあります。

実際に患者さんを見ていると、介護を受けないために自分で自分を律している人は、いらっしゃいます。自助ばかり言われると、国は何もしてくれないのか?とお怒りになる人もいそうですが、自分の心地いい状態をキープするには、自分を役立てるのが一番効率的でストレスが少ないです。自分好みの目玉焼きの焼き加減は、自分で作るのが一番早くて安上がり、そうじゃありませんか? 

高齢者の受け皿は「公的施設」だけでは足りない

ここまでが、介護保険で利用できる福祉施設になります。運用元は、国です。しかしながら、これだけじゃ高齢者の受け皿としては全然足りません。

介護保険という公的サービス以外にも、

●介護付き有料老人ホーム

●サービス付き高齢者向け住宅(高齢者向けの賃貸住宅)

●グループホーム(認知症の診断&要支援2以上の介護認定が必須、自立した生活を送れる人向け)

●小規模多機能型居宅介護施設(居宅サービス)

このあたりがお泊まりタイプの施設になります。ただ、こちらは福祉施設ではなく民間施設。当然、ボランティアで運営しているわけではなく営利目的ですので、何十万〜無限に費用がかかります。わたしが知っている事例では、入居金が3000万円、プラス月々40万円を死ぬまで払うという施設に入所した方もいました。生きるって本当にお金がかかりますね。

入居する本人の意向や資産、家族との関係性と関わりの濃度、どういうサービスを受けたいのか&受けたくないのか、医師や看護師がどの時間帯にどれくらいの人数いるのか、このあたりをキーパーソンとクリアにしながら候補先を絞っていけると良いのではないかと思います。

高島 亜沙美

看護師/保健師