6種類以上の薬を飲んでいる高齢者は要注意! 薬の副作用を「認知症」と間違えられ人生急変の危険も…!

写真拡大 (全5枚)

東大病院の調査で高齢者の飲む薬の数が6種類以上になると、副作用の発生が急に高まるという結果が出ました。でも高コレステロールや高血圧、膝痛などで薬を処方してもらったら5〜6種類はあっという間。めったにないと思いたいですが、副作用で意識が飛んで転倒し、骨折したり交通事故を引き起こしたりしたら自分も周りも辛すぎます。

残りの人生を楽しんで生きる高齢者が一人でも多くなってほしい、という目的で書かれたのが『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』です。

今回は本書から、よかれと思って飲んだ薬で酷い目にあわないために、高齢者に多い薬の副作用を解説します。

老化で起きることはまるで未知との遭遇

92歳になってもお元気な評論家・樋口恵子さんは、90歳になったばかりのころ、玄関の上がり框で転倒された経験があるそうです。それは、何かにつまずいて転倒するというようなそれまでのものとはまるで違い、フワーッと力が抜けて崩れ落ち、背中とほほ骨をぶつけたとか。

そのとき思い出したのが、若いころ90歳の方から聞かされた「年をとるとフワーッと倒れることがある」という話。そのころはまだ理解できなかったそうですが、自分の身に起きて、ああ、これかと得心されたそうです。

「年をとるというのは未知との遭遇ですね。新しい体験が次々と起こります」と、転倒した経験さえもユーモアに変えてしまうところは、老いとのつきあい方で大いに真似したいところです。

この話をお聞きして、私は意識障害が転倒の原因ではないかと思いました。意識障害の原因の多くは、低血糖や低ナトリウム血症などによるもので、高齢になるとよく見られます。だから、高齢者は血糖値や塩分などをあまり気にせず、しっかり食べて、糖質や塩分が不足しないようにしてもらいたいのです。

特に注意したいのは、飲んでいる薬の影響でも意識障害が起こることです。ずっと前から同じ薬を飲んできて今まで何もなかったとしても、その日の体調の変化などによって、突然起こることがあるのです。

薬の副作用で転倒が40%を超す

東大病院老年病科入院データベースによると(図)、飲んでいる薬の数が6種類以上になると、薬の副作用による薬物有害事象の頻度が5種類までと比べて明らかに多くなるとされています。

また別の調査ではふらついたり、一瞬意識が飛んだりなどして転倒する事例は、飲んでいる薬の数が増えるほど多く発生しており、特に、その数が5種類以上になると、転倒の発生頻度が40%を超すというデータもあるのです。

けれど、高齢者が転倒しても、薬の副作用だという発想にはならず、たいていは「年のせい」ですまされてしまいます。本人も「転んだ」という事実にショックを受けたり、落ちこんで自信を失ったりします。本当は、薬が原因で起こっているかもしれないのに、です。

薬の副作用の影響が歩いているときに起これば、転倒して骨折する可能性があります。足の付け根の部分にあたる大腿骨頸部などを骨折すると、寝たきりになるリスクが高くなります。また、自動車を運転中に、意識がぼんやりする状態になれば、重大な事故につながりかねません。

薬が増えることを多剤併用と言います。「ポリファーマシー」(「Poly」=「多くの」と「Pharmacy」=「調剤」を合わせた造語)とも言い、厚労省は、ポリファーマシーについて、「単に服用する薬剤数が多いのみならず、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」と定義しています。

簡単に言うと、薬の数が多くなることにともなって、薬の副作用が現れやすくなり、薬の飲み間違えも増え、患者さん自身が治療方法を理解、納得して積極的に治療に参加しようという意志も低下していってしまう、これがポリファーマシーの問題です。

高齢者に出やすい薬の副作用とは

高齢者に多い薬の副作用には「ふらつき・転倒」以外にも、「もの忘れ」「うつ」「せん妄」(意識が混乱した状態)「食欲低下」「便秘」「排尿障害」などがあります。

「もの忘れ」「うつ」「せん妄」などの精神的な症状は、認知症と間違えられ、本来なら不要な薬を処方されたり、周囲から不本意な扱い方をされたりするおそれもあります。

「食欲低下」は、低栄養の状態につながりやすく、体に必要な栄養が不足するために老化が一気に進みます。

「便秘」「排尿障害」は不快な症状なのでQOLの低下を招きます。人によっては、精神的な不安や不穏行動の原因になることも。便秘はトイレでいきむときに血圧の急激な上昇を招くので、トイレで脳卒中を起こす人も少なくありません。

いずれもこれらの副作用は、日常的にありがちな症状であるため、薬のせいで起こっているとは気づかれない場合もあります。

まず自分の薬についてよく知ること

高齢になると病気の数が増えるのがふつうで、それにともなって薬の数も増加していきます。多くの人は特に疑問ももたず、医者に言われるままその薬を飲んでいますが、その従順さが自分をヨボヨボにしてしまうポリファーマシーにつながりかねません。

ポリファーマシーの問題を解決するには、患者さんを全身的に診る総合診療医のような医者が必要であったり、医者と薬剤師などの連携が必要だったりするのですが、すぐに実現できるようには思えません。

まずは患者さん側も自衛手段として、自分の飲んでいる薬についてよく知ることが大事です。調剤薬局で薬と一緒にもらう説明書やおくすり手帳に貼られた調剤内容などには、薬の作用や注意点などが書かれています。わからないことがあれば、医者や薬剤師に質問しましょう。

続きは<長期入院の寝たきりの高齢者が点滴や薬を減らしたら、起きて歩き出した⁉ キケンすぎる高齢者の“薬漬け”>にて公開中。

長期入院の寝たきりの高齢者が点滴や薬を減らしたら、起きて歩き出した⁉ キケンすぎる高齢者の“薬漬け”