「悪縁を断絶」という(朝鮮人民軍の指揮所を訪れた北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記=朝鮮中央通信=共同)

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「他国であり、明確な敵国だ」──。

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 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は17日、視察に訪れた朝鮮人民軍第2団の指揮所で韓国のことを「敵国」と名指しし、「(韓国が主権を侵害すれば)物理的力をためらいなく使用する」と警告を発した。

 この言葉が示すように今年に入ってからの北朝鮮は、さまざまな面で韓国との決別を意味するかのような動きを続けてきた。

「今年1月。金正恩が韓国を“第1の敵国”と位置づけてから、対韓国の姿勢は顕著です。2月には南北統一の象徴でもあった『統一駅』の名をタダの『駅』に変更していたことが判明。そのほか、国歌からは、朝鮮半島全体を意味する『三千里』という歌詞を『この世に』などと変更しています」(外信部担当記者)

 それらの動きに合わせるかのように、北朝鮮は今月開かれた最高人民会議で、ある重大な決定を下している。半島問題に詳しいジャーナリストの高英起氏が解説する。

「7、8の両日に開かれた最高人民会議の場で憲法で韓国のことを『敵対国家』と明確に規定。15日には、敵対国家に対する措置として韓国と北朝鮮をつなぐ鉄道と道路を爆破。このことについて金正恩は『ソウルとの悪縁を絶ち、同族意識と統一という非現実的な認識を払いのけた』と発言するなど、韓国との決別の意志を改めて強調しています」

 韓国との決別──。こうした金正恩の発言の真意について高氏は「彼は元々統一をする気はなかったんです」とこう続ける。

「両国は事実上の別国家として歩んできましたが、統一に引っ張られてしまうと核・ミサイル問題、人権問題で妥協しなければならない。それは金正恩体制の弱体化、崩壊につながりかねない。米朝会談の失敗で韓国や西側との関係改善は難しいと悟った。ならば、完全に決別し、ロシア、中国との関係を深め、政治経済ブロックとして生き残る道を選んだのでしょう」

 今回、北朝鮮が憲法において韓国を「敵国」と明確化したことによって、両国の関係は「もう後戻りすることはできない」と高氏は指摘する。

 両国間の緊張状態の悪化は決して日本にとっても無関係ではない……。