『オクラ~迷宮入り事件捜査~』©︎フジテレビ

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 フジテレビ火9ドラマ『オクラ~迷宮入り事件捜査~』(以下、『オクラ』)が放送中だ。本作は、人情に厚いの昭和刑事・飛鷹千寿(反町隆史)と、クールでタイパ重視の令和刑事・不破利己(杉野遥亮)が、長期に渡って未解決となっている実質“オクラ(お蔵入り)”状態の事件に挑むヒューマンミステリー。

参考:反町隆史×杉野遥亮、“年の差バディ”への熱い意気込み 世代が違っても「見ている方向は一緒」

 完全オリジナルストーリーとなる本作を紡ぐのは、『電車男』(フジテレビ系)や『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系/以下、『3年A組』)などを手がけ、『若者たち2014』(フジテレビ系)以来、約10年ぶりの“フジテレビ制作連ドラ凱旋となった脚本家・武藤将吾と、フジテレビ連ドラ・映画制作部プロデューサーの中で最年少となる足立遼太朗だ。そんな2人に『オクラ』の誕生秘話や、反町隆史と杉野遥亮の起用理由、さらには第3話以降の見どころを語ってもらった。

●「反町さんと杉野さんの“見たことない一面”を脚本で出せたら」

――“火9”枠の復活作でもある本作に対して、どのような意識を持って脚本をご執筆されましたか?

武藤将吾(以下、武藤):最初に話をいただいた時、「10年ぶりにこの枠に戻ってくることができた」と運命的なものを感じました。月9枠や木10枠がそれぞれのカラーがあるのに対して、火9枠は比較的自由なんです。枠にとらわれない発想でドラマ作りができるため、自分に合っていると感じていました。

――足立さんが武藤さんを起用した経緯について教えてください。

足立遼太朗(以下、足立):当時、武藤さんと『電車男』でご一緒していた若松央樹プロデューサー(※現在はドラマ・映画制作局映画制作センター室長)に「武藤さんどう?」と提案していただき、引き合わせていただいたところから、オリジナル企画を一緒に考え始めました。僕も昔から武藤さんの『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系)や『3年A組』、『ジョーカー 許されざる捜査官』(フジテレビ系)など大好きな作品ばかりだったので、「ぜひご一緒したいです!」と伝えました。

武藤:若松さんが若いプロデューサーと組んでやってみた方が、自分自身も新しいきっかけになるんじゃないかと。僕よく考えたら、連ドラは20年ぐらいやってきていて、そういう意味では自分の引き出しを失っている状態だったので、若い人たちの力を得られたらいいなとも思っていました。最初は若松さんと一緒にプロデューサーをやると思っていたんですけど、足立さんの話を聞いているとすごく考えがしっかりしていて。連ドラの長丁場で頼りにできるプロデューサーだなと感じ、お引き受けしました。

――バディが未解決事件を解決していくという題材はどこから着想を得たのでしょうか?

武藤:当初は、定年退職間際の刑事との世代間の話をやりたいなと思っていました。バディだけど、どちらかというと師弟関係に近いイメージ。昭和の刑事がこれからの令和を生き抜く刑事に余波を教えていく……みたいなところからスタートしたのですが、『不適切にもほどがある!』(TBS系)をはじめ、いろいろなドラマがすでに“世代間”というキーワードに注目していたので、その二番煎じにならないようにバディものを活かした作品にしようと考えました。でも、1つのきっかけで解決するほど未解決って甘いもんじゃないんじゃないだろうというのは、自分でも思っていて(笑)。だから第2話で千寿がやっていた捏造のような、誰かが意図して未解決にして、それを意図して動かすことで真実が明るみになる、という構想を広げていきました。

――反町さん演じる千寿の“ダークヒーロー”的なキャラクター設定については、どのような意図があったのでしょうか?

武藤:反町さんはパブリックイメージとしても、『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)のような熱血だけど落ち着いた大人の演技を見せているイメージが強いなと。ニヒル的な、ダークヒーローな方に振り切ってる役柄を見てみたいと思ったのが最初の出発点でした。個人的にも、反町さんと杉野さんの“見たことない一面”を脚本で出せたらなというのが僕の考えとしてありました。視聴者の方たちをいい意味で裏切っていきたいなと。

足立:反町さんは台本に入り込んで読んでくださって、千寿として現場に入るにあたっていろんな準備をしてきてくれました。現場でも動きにアドリブをつけてくださっていたので、監督と練り合わせつつ、取り入れていました。

――杉野さん演じる利己の“クールさ”はどのように練り合わせていきましたか?

武藤:最初、杉野さんに「この作品を書いた脚本家の方に会いたい」と言われて、お会いする機会があったんです。ですが、「ただお会いしたかっただけです」と言われて、リアル利己だなと(笑)。元々が利己っぽいんです。僕は台本に“動き”を書き込まないのですが、杉野さんは最初に本読んだ時に利己のキャラにすごく共感してくれている感じがしました。対して、反町さんは「動き」の部分でアドリブを付けてくださるので、お2人とも違う形で台本を大事にしてくれているのだなと。

●刑事ドラマの醍醐味は“アクション”と“チーム感”

――実際に放送をご覧になって、2人のバディ感はいかがですか?

武藤:最初からバディ感がでていたら嫌だなと思っていたので、いい意味で合ってない感じというか……あの雰囲気が面白いなと(笑)。反町さんの元々持っている熱さと、杉野くんが持ってるクールなイメージとが、徐々に噛み合っていく感じが良いなと思ってます。ですが、第3話からは物語がどんどん変容していきます。10年前の「警察官連続殺人事件」にも繋がりますが、千寿がなぜ証拠捏造をしてまで真実を突き止めたいのかという思いが徐々に明らかになっていきます。今までは、最後のラスト5分で物語が動き出すというパターンで、1話完結のミステリーというところから、“警察内”の壮大な物語になっていきます。

――楽しみです。お2人は刑事ドラマの醍醐味をどういった部分に感じていますか?

武藤:僕の先生にあたる『あぶない刑事』シリーズの柏原(寛司)さんに教わっていたのもあり、刑事ドラマがやりたくて脚本家になったと言っても過言ではないです。刑事ドラマでは拳銃を使ったアクションシーンといった、非現実的な世界が描けるという魅力があるなと感じています。なので今回、足立Pと組んだ際に、彼から「拳銃を出すだけで、共感できなくなる」という意見を聞いてショックを受けました。僕が魅力だと思っていた要素が、若い人たちにとってはリアリティを損なうものとして受け取られていたという(笑)。でもこういうところで、どんどん若い世代のアイデアに乗ってみることが大切だなと感じました。

足立:「オクラ」という部署のチーム感がすごくカッコいいなと思っています。作品内でも撮影現場でもいろんなアイデアがセットの中で生まれていく感じが好きです。牧原役の青木さやかさんも事務所のオフィスに休みの日に行って、パソコンの打ち方を勉強しましたと話していたり、一人ひとりの熱量を空間に感じます。千寿の「千里眼」も反町さんとオクラのあの空間だからこそ成立するというか。武藤さんが書いてくださった台本をオクラのメンバーが形にしていく感じが良いなと、いちチームとして感じています。(文=佐藤アーシャマリア)