「気にくわない上司」「言うことを聞かない部下」…精神の健康を害する要素に満ち溢れた「現代の職場」に対処する方法

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日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。

『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。

本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。

職場のメンタルヘルス

職業は人生の重大事なので、職場で精神の健康を損ねると、人生の危機を迎えることになります。当人だけでなく、雇っている側にも不利益が生じるので、最近では企業や会社も従業員のメンタルヘルスを重視するようになっています。

働く人のストレスは、時代の変化によって大きく左右されます。「終身雇用」や「年功序列」という日本特有の社会制度が残っている状況で仕事をはじめた人は、バブル崩壊以後の社会の変化、グローバル化やリストラ、アウトソーシング(外注)、雇用の非正規化などに戸惑うことも少なくないでしょう。

さらにコロナ禍以降は、テレワークやリモート会議、政府主導の働き方改革などで時代が移り、AIの活用、DX(デジタルトランスフォーメーション)やソリューションアーキテクトなど、情報システムの変化にもついていかねばならず、現代のサラリーマンは大きなストレスにさらされることになります。

そればかりでなく、職場では時代の流れとは別に普遍的な圧力もあります。

過重な業務、困難な目標、人間関係、ミスや事故の対応、想定外の問題や不祥事、クレーム対応、契約の期限内履行、会社や上司の急な方針変更、望まない部署への異動、出世争い等々です。

特に人間関係では、気にくわない上司、言うことを聞かない部下、意地悪でうっとうしい同僚、身勝手でわがままで礼儀知らずで要求の多い高慢な顧客などに対応しなければならず、ストレスはいっそう重大です。パワハラやセクハラだけでなく、悪口や陰口、無視や嫉妬、嘲笑や仲間はずれなど、子どものイジメのような状況も発生して、精神の健康を害する要素に満ちています。

そういう状況にどう対処すればいいのか。

新聞の悩みの相談コーナーで、美輪明宏氏は会社のさまざまな理不尽に悩む相談者に次のように答えていました。この世に楽な仕事はない、無茶な客に耐えるのも、無能な上司に従うふりをするのも、全部ひっくるめて仕事で、給料はその「我慢料」であると。

つらい思いや腹立たしいことがあるのは当たり前で、それに耐える代価として報酬を得ているということです。

私も講義で学生によくこのような話をしました。就職したら楽しいことがあるなんて思っていたらおおまちがい。苦しいこと、いやなことが当たり前と思っておいたほうがいいと。そのほうが心の準備ができると思って言うのですが、たいていはイヤな顔をされました。

さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6〜7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。

じつは「65歳以上高齢者」の「6〜7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」