「働かないおじさん」か、エリート管理職か…多くの50代会社員が直面する「深刻な危機」

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年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。

10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。

どうする? 「働かないおじさん」問題

いま改めて「働かないおじさん」問題が注目を集めている。日本企業が直面しているのは、中高年社員をどうするかという難題だ。

『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』では、定年制度や日本型雇用の課題を指摘し、「定年前」の50代が直面する苦悩についても論じられている。

〈日本企業が厳格な年齢管理を手放さないその理屈を追っていったとき、まず直面するのは、日本社会が少子高齢化に直面するなか、企業においても社内の年齢構成のバランスが崩れているという事実である〉

〈年齢構成のひずみの拡大に応じて、企業としても役職適齢期を迎えている中堅層を十分に処遇しきれなくなっている。これまで企業のために尽くしてくれた従業員に対して職位で報いることができないということになれば、中堅層のモチベーション維持に困難が生じる〉(『ほんとうの定年後』より)

定年前後の管理職の割合

中高年のキャリアといえば、管理職に就く人も出てくる。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、〈部長職の構成比率は、50代前半で26.6%、50代後半で26.9%と50代でピークを打った後は急速に減少し、60代前半には8.8%、60代後半には2.7%までその数を減らす(中略)課長職の年齢構成をみると、60代前半でその職に就く人の比率は2.9%、60代後半は0.5%となる。50代後半以降、多くの人は役職定年や定年を経験して役職をはく奪される〉(『ほんとうの定年後』より)。

50代で部長になる人は増え、60歳を過ぎると管理職はほとんどいないというのが、多くの日本企業の実態といえる。管理職になる人がいる一方で、冒頭に述べたような「働かないおじさん」問題やモチベーションの低下も深刻化する。

50代で「キャリア迷子」になる

たとえば、『ほんとうの定年後』の「事実13 50代で就労観は一変する」というパートでは、〈キャリアの中で人は仕事に対する意義を見失うタイミングがあり、多くの人は50代でその転機を経験する〉という現実を明らかにしている。

「他者への貢献」「生活との調和」「仕事からの体験」「能力の発揮」「体を動かすこと」「高い収入や栄誉」といった、日本人が働く上で感じる価値観を分析してみると見えてくることがあるという。

〈多くの人が仕事に対する希望に満ち溢れていた20代から、人は徐々に仕事に対して積極的に意義を見出さなくなっていく。そして、落ち込みの谷が最も深いのが50代前半である。この年齢になるとこれまで価値の源泉であった「高い収入や栄誉」の因子得点もマイナスとなり、自分がなぜいまの仕事をしているのか、その価値を見失ってしまう。

定年が迫り、役職定年を迎える頃、これからの職業人生において何を目標にしていけばいいのか迷う経験をする人は少なくない。そうした現実がデータからうかがえるのである〉(『ほんとうの定年後』より

50代で仕事に対する価値観が揺らぐ人が多い。一方で、60代・定年後になると、多くの就業者は、「小さな仕事」に前向きな意義を見出すようになるという。「競争」を重視してきたキャリアからいかに変化をしていくか、50代会社員の方々はこの難題に向き合うタイミングが来ている。

つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。

多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体