「最大震度3」で「死ぬかと思った」…東京を襲った「2004年の地震」の意外な恐怖

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高層オフィスで「死ぬかと思った」

04年新潟県中越地震(M6.8)の時、震源から約200km離れ、最大震度3程度の東京都心で、周期2〜8秒ほどの長周期地震動が到達し、その揺れは約3分間継続した。その時、六本木ヒルズ森タワー(238m・地上54階)では、ビルの制震装置効果で建物はさほど揺れなかったが、エレベーター6基が緊急停止。うち2基で乗客の一時閉じ込めが発生。原因は長周期地震動によるエレベーター・ワイヤーの共振といわれ、1基は、8本あるワイヤーのうち1本がエレベーター坑の側壁の金具に接触して切れていたという(現在は対策済)。

東日本大震災(M9.0)時には、広い範囲で周期4〜8秒の長周期地震動が観測され、新宿センタービル(216m・地上54階)などの超高層ビルが最長約13分間揺れ、揺れ幅は最大2mに達したといわれる。その時、新宿区にある東京都庁舎(243m・地上48階)のエレベーター83基すべてが緊急停止。これは地震時管制運転装置によるもので、安全装置が正常に働き、閉じ込めもなかった。しかし、その後も大きな余震が断続的に起き、すぐに点検作業ができず、エレベーターの運転再開まで約6時間かかり、第1本庁舎45階の展望台にいた観光客ら143人は、展望台から非常階段で45階から地上まで徒歩で避難する羽目になった。あの時は東京だけでもエレベーター閉じ込め事故が84件発生、救出までに最長9時間を要している。

南海トラフ巨大地震が発生すれば、全国で約1万件以上のエレベーターで閉じ込め事故が起き、最大約2万3000人がその被害を受けると推定されている。その場合、道路・橋梁・建物・電柱・住宅などの損壊、火災、土砂災害などで、点検要員がすぐに駆け付けることができない可能性がある。長時間の閉じ込め対策として、非常用トイレや飲料水を収納した「エレベーター防災BOX」の設置が不可欠となっている。

また、気象庁が発表した「東北地方太平洋沖地震時における長周期地震動による揺れの実態調査について」という長いタイトルの報告では、東京都内の最大計測震度は震度5弱(港区南青山)〜震度5強(千代田区大手町)だったが、高層オフィスビル(60m以上)のアンケート結果をみると、長周期地震動で建物が倒壊しなくても、中いた人たちは大変な思いをしていたことが分かる。

◆その時の状況について

・「船酔いのような状態になり、気分が悪くなった」

・「目が回って座り込んだ」

・「防災センターに、酔い止めの薬がないかという問い合わせがあった」

・「死ぬほど怖かった」

・「女性の悲鳴が聞こえた」などの証言があった。

ギギーギギーという音

◆揺れの継続時間が長かったことに対しても

・「いつまで経っても止まらず、とにかく、長かった」

・「いつ終わるとも知れなかった」

・「10分以上揺れていた」

・「窓から外を見ると、隣のビルがぶつかりそうになるくらい揺れていて怖かった」

・「スライド式書架が左右に大きく移動し、ぶつかり合う音が大きく響いていたことが怖かった」

・「何かがきしむような、ギギーギギーという音が聞こえ、ビルが壊れるのではないかと思い怖かった」

・「非常階段に出たら、壁にひびが入っていて、ビルが壊れるのではないかと思い、怖かった」

・「何回も大きな揺れが来るので、二次災害みたいなことになるのを恐れて、部下職員を見回りに行かせるのを躊躇した」

・「正直、ビルは大丈夫なんだろうか、と思った」などの恐怖を訴える人が多かった。

東日本大震災時の高層オフィスビル34棟の聞き取り調査では、ビルの構造躯体に損傷・破損の報告はなかったものの、約半数のビルで天井材に何らかの変形・損傷(ずれ、一部落下など)が生じ、多くのビルで非常階段の内装材にひび割れ・塗装剥離などが発生している。そして、34棟のビル全てでエレベーターが全台緊急停止し、エレベータロープの絡まりや破損は4棟で認められ、閉じ込めがあった1棟では30分後にメンテナンス会社によって救出されている。

一番多かった被害は、什器(背の高いキャビネット等)・備品の移動・転倒で、全体の76%で発生。とくにキャスター付き什器の多くが激しい勢いで移動し、固定していなかったコピー機が移動(76%)、大きく左右に動いたスライド式書架が破損している。反対に、作り込みの什器や家具はほとんど転倒しておらず、壁に固定されていたテレビも落下しなかったという。

こうした経験から、キャビネットなどの什器は作り付けにするか、複数個所での固定が重要。また、前述アンケート調査で

◆揺れていた時の状況の設問に

・「立っていられなかった」が29%

・「這いつくばった」が23%

・「歩けなかった」20%

全体の72%が歩行困難だったと回答している。ということは、長周期地震動の揺れが始まってから、安全な場所への移動などは困難(危険)ということになる。

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「東日本大震災の倍の大揺れ」が東京を襲う…じつは他人事ではない「南海トラフ巨大地震」の衝撃的な様相